生物多様性条約と先住民族 / 先住民とは?
前回更新したnoteの記事では、生物多様性条約という条約が先住民の参加をどう定めているか、といったことに触れました。
ではここで「先住民ってどういう人たち?」ということについても、短く考えたいと思います。
こんなとても重要なことを、覚書のようなメモにすることにためらいがあり、考え込んでいるうちにあっというまに時間がたってしまいましたが、とはいえ、この場所はあくまで筆者の頭の整理のため。
本来であれば、国連機関や研究者の方もたくさんの情報を出されているし、当事者の方による説明もなされていますので、読んでくださる方はそちらを確認いただくことが重要かと思います。
さて、前回のnoteでも触れた、国連先住民族の権利宣言には、以下のような文言があります。
つまり、先住民族は、大航海時代・近代以降に、各国の植民地政策や同化政策によって、自らの社会や土地、固有の言葉や文化などが否定され、奪われてきた歴史をもつ集団に属する人びとである、ということが、非常に重要な点になります。
また、同宣言の前文には
という文言も記されており、集団ごとに違う歴史をもつ全世界の先住民族を「一言で定義する」ようなことは、とてもできない、とても重たいことだともわかります。
同時に、先住民族の権利宣言以外にも、LO169号条約などでは、先住民族とは、自らの伝統的な土地や暮らしを引き継ぎ、社会の多数派とは異なる自分たちの社会や文化を次世代に伝えようとしている人びとである、という説明がされているのも見かけます。
「先住民族」といわれる人々に抱くイメージとして、なんとなく、精神的な儀式や自然と共生する生き方をしている人たちといったイメージをもつ人はとても多いかと思いますが(私はそうだった)、そのイメージの背景には、大きな歴史の中、奪われてきた自分たちの歴史を奪われたままにしないために、自身の伝統的な儀式や生活習慣、知恵や知識を次世代に受け継いでいこうという意識も強いのかな、なんて想像しています。
生物多様性条約COPの政策決定の場においては、最終的には、各国政府による合意を目指して議論が進んでいくことになるので、各国政府が国内の先住民族に対する歴史をどう考えているかとか、各国の国内先住民族政策の方針といった要因にも影響されることがあります。
また、歴史研究が発展していく中で、国がある集団を先住民として確認した、というような過程を経て認められた集団の人々もいれば、自国に(もう)先住民はいないという態度を崩さない政権が交渉に来ていることもあります。
では、そんな国の中に先住民がいないのかというと、必ずしもそうではありません。歴史研究が発展したりして社会の歴史認識が変化したり、政権が変わって政策が変わった時、国内の先住民族との関係性や、国際会議の中での関係議題に関する国の方針も変わることは大いにあります。(*1)
なので、生物多様性条約に参加するときの先住民の人たちは、各参加者が、どの国から来ていて、どんな歴史背景をもった集団の人かといったことを意識しつつ、自身は、自らの伝統的な土地や暮らしを引き継ぎ、社会の多数派とは異なる自分たちの社会や文化を次世代に伝えようとしている のは私たちだということを、意思決定の際に大きなメッセージとして伝えるべく活動しています。
そして同時に、彼らは歴史の中で一方的に支配/侵略されてきた集団であることから「自己決定権」「Full and effective participation」といったことを常に獲得目標とした交渉をするのです。
*1:例えば、カナダ政府の場合は、国内の先住民族の存在を否定しているわけではありませんが、現トルドー政権に変わった直後に開かれたCBD作業部会の中で「我が国の先住民族政策については前の政権の方針を引き継がないことを公約とした政権がついたばかりなので、(準備時間が足りない)今回は、国としての発言を控えめにする」といった発言をわざわざしたことがありました。
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