
センゴをていねいに走る。
OTTを開催を続けていくにあたって、毎回、なにかひとつ新しいことをいれてみることにしています。同じタイムテーブル、同じ段取りですすめたほうが運営する側としては楽なのですが、あえて、いつもと違うことをひとつかふたついれてみるのです。その一方でいつもやっていたことをあえて辞めてみたりもする。その理由は運営する側の自分たちがOTTに飽きないようにするため。飽きないこと。持続的に開催していくために一番大事なのはそういうことだと考えているからです。
先日のOTTセンゴではスタート前にそれぞれの組で「センゴ講座」というのを時間をとってやってみることにしました。フルマラソンやハーフマラソンは終盤になるときつさを感じますが、中盤までは楽しさのほうがうわまわっているのに比べ、センゴと呼ばれる1500m競争には学生時代のスポーツテストでの「終始きつい」という印象が強く残ってます。センゴは観ている側は楽しいのですが、実際にセンゴを走る市民ランナーは多くないのは「終始きつい」イメージが根深いのではないか?と常々思っていました。OTTは着順を争うレースではなく、自己ベスト更新を狙うタイムレース。目標タイムにあわせたペースメーカーもいるはずなのに、目標から大きく遅れる選手の姿を見るたびに「センゴキツそうだなあ」と。一方でガッツポーズで意気揚々とフィニッシュを迎える選手もいる。この差はなんだ?と。
OTTのペースメーカーディレクターである荒井輔さんに「センゴってもっとうまく走れないもんですかね?」と聞くと「センゴって最初突っ込んで、中盤は頑張って、ラストはあげる」そういう競技なんですよ。といいます。「なんですか、それ、きついばっかりじゃないですか?」と突っ込むと荒井さんは日本選手権1500m3位に入った実力者。しばし考えてこう言語化したのです。
「センゴは途中で失速もせず、ゴールしたときに、余力を残さず、フィニッシュ地点で全部を使いきるというのが理想なんですよ」
どうやら、センゴのトップ選手たちが普通にやっているけど、市民ランナーが知らないことがありそうなのです。そこから「スタート前にやってる流しは意味あるの?」とか、「ラストの鐘がなったら、そこからヨーイドンなの?」とか素人考えを荒井さんにぶつけてみると、これまで自分がもっていたセンゴ観が全く間違っていたことに気付かされたのです。荒井さんにしつこく聞きながら出来上がったOTTセンゴメソッドはこんな感じです。
●流しはスタートのイメージで
流しというのは心拍数をあげたり、大きく身体を動かして身体に刺激をいれるという効果もありますが、センゴにおける流しとはスタートの入り方の予行演習。2コーナーのスタート地点から3コーナーに向かうバックストレートでスタートからの100mのスピードと動きを確認します。OTTではさらに、設定タイムで走ってくれるペースメーカーの後ろについてスタート前に流しを行い、スタート前に一度ペースメーカーのリズムを味わっておくことで、スタートからトップスピードまでの移行をスムーズにします。
●中間走は集団で
スタートで設定タイムのスピードにのってからはペースメーカーを風よけにつかい集団で走っていきます。外レーンを走って余計な距離を走ることなく、前を走る走者との間を詰め集団でスピードとリズムを維持します。集団に間ができた場合はその間に入って集団を詰めて間をあけないようにしながら一団となってラスト1周まで余裕をもって走ります。OTTでは間ができた場所にさらにペースメーカーが入り、細かく集団をコントロールします。
●ラストの鐘では行かない
ラスト400mの鐘を聴くと前に飛び出したくなりますが、ここでスパートをかけるとラスト100mで失速してしまいます。なので、ラスト300mまでは自分の余裕度を確かめる区間。一気にペースアップするのではなく、ラスト300mから200m、そして100mとギアチェンジするイメージをもちます。
●ラスト100mで全力疾走へ
300m、200mとギアチェンジしながら100mでトップスピードにもっていけるように加速していきます。ラスト100mは腕を大きくふって全力で。そうすれば、失速することも余力を残すことなくフィニッシュまで身体がもつ力すべてを出し切ることができます。
これを毎レースごとにきっちりレクチャーしながらやってみたら、大きく出遅れる選手がほとんどいなかっただけでなく、目標タイムをクリアする選手が続出。そしてフィニッシュエリアでは全力を出し切れた選手たちが嬉しそうにぶっ倒れる姿。
このOTTセンゴメソッド。効果バツグンみたいです。5月16日のOTTセンゴでみなさんも味わってみてください。エントリーはこちらから。
写真は2013年の日本選手権1500m決勝。確かに荒井さん(右端のゼッケン108番)はラスト300mから上げてます。
これがラスト400m。
そして、これがラスト300mです。108が荒井さんで416が油布さん。どちらもOTTのペースメーカーです。
ここから先は

月刊 EKIDEN NEWS
月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
サポートと激励や感想メッセージありがとうございます!いただいたサポートは国内外での取材移動費や機材補強などにありがたく使わせていただきます。サポートしてくださるときにメッセージを添えていただけると励みになります!