鉄紺競歩のススメ
万人にすすめるわけではないけれども、箱根駅伝ファン。とりわけ東洋大学の鉄紺駅伝ファンのひとたちには、競歩をおすすめしておきたい。日本中あらゆるレースで見かける熱烈な鉄紺駅伝ファンが競歩に手を伸ばさないのは、少々もったいないような気がするからだ。
同じ大学の陸上部とはいえ、ブロックによってその色合いはことなる。日体大や順天堂大のような体育系学部がある大学は一体感があるが、通常、短距離と長距離、そして投擲や跳躍とブロックにわかれていて、指導者もカラーそのものもブロックによって異なる。んが、んが、だ。東洋大の駅伝と競歩は全く同じカラーをもつ。指導するのは酒井監督夫妻。そして他校と一線を画す、「黒髪でビッとした」空気もおんなじだ。
そういうことに気づいたのも、つい最近のことなので、にわか競歩ファンのたわごとだとして許してもらいたいのだが、「にわか競歩ファン」になってしまう魅力が鉄紺競歩にはある。東京オリンピック開催を間近に控えた2021年の夏。千歳で行われていた競歩代表合宿の撮影に行くことになった。ホクレンディスタンスチャレンジでちょうど北海道にいたから、ついでに写真が撮れるということで話がきたのだ。地元の新聞社の方々と川沿いで撮影していると、「こんなところまで来るんですね」と頭上から声がした。ふと見上げると、ニヤッとえくぼを出して笑っている東洋大酒井監督がたっていた。卒業後も拠点を東洋大において練習する池田、川野両選手に帯同していたのだ。
その年の夏はずっと旭川を起点にホクレンディスタンスの各地をまわったが、空き日にどうしてもしておきたいことがあった。東京オリンピック札幌ラウンドのマラソンと競歩のコースをチェックしておきたかったのだ。空き日の昼過ぎに札幌に行くことにした。50km競歩のスタート前の気候や光の角度を知っておきたかったからだ。大通り公園のスタート地点付近について、うろうろ路面のチェックなどをしていると「また会いましたね」と声がした。ふと見上げると、酒井監督夫妻がマネージャーを伴って現れたのだ。「もしや。。。」と思って聞くと目的は同じだった。スタート前の日差しや湿度や温度をチェックしに来てたのだ。こっちはただの取材者ではあるけれども、勝手に同志となったような気分になった。そうして私は「にわか鉄紺競歩ファン」になった。
鉄紺競歩が面白いのは、競歩で見たこと感じたことが、そのまま東洋大の駅伝やマラソンに活かされていくことだ。2021年の東京オリンピック競歩に酒井監督夫妻は帯同することによって、真夏の札幌での暑熱対策とコースを知った。それは翌年の北海道マラソンにすぐに活かされる。
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月刊 EKIDEN NEWS
月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
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