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スタノ×山西:ライバルを超えた“共闘関係”の先に

2月16日に開催される第108回日本選手権20km神戸競歩(神戸・六甲アイランド)は、2025年に東京で行われる世界陸上の代表選考レースを兼ねています。ここ数年、日本競歩界をけん引してきたのが山西利和(愛知製鋼)選手。2019年ドーハ、2022年オレゴンと世界陸上で2大会連続優勝を達成した実績を持ち、エース格として注目される存在です。しかし、2023年ブダペスト世界陸上では3連覇ならず24位にとどまり、パリ五輪選考レースであった昨年の神戸競歩ではキャリア初の失格を喫し、など、苦境を迎えました。

そんな山西選手が今大会で目指すのは東京世界陸上2025「4大会連続の世界選手権代表入り」と「4大会ぶりの日本選手権優勝」。かつての王者がどのように復活への道を歩みつつあるのか。その過程に現れたのはイタリアの競歩選手、マッシモ・スタノ選手の存在。数々の世界大会で日本人選手たちの壁として立ちはだかったその人と山西選手がイタリア・日本と双方の拠点を行き来しながら、トレーニングをしている姿がSNSを通じて伝わりました。本来はライバル関係であるはずの「2人の共闘」はとても興味深いものです。背景を知っておくだけで東京世界陸上そのものが違ってみえるはず。

マッシモ・スタノ:イタリアが産んだ“日本勢にとっての壁”

まずは、近年の世界大会で日本勢を苦しめているライバル、マッシモ・スタノ(Massimo Stano)選手についておさらいしておきます。
東京オリンピック(2021年開催)20km競歩 金メダル
世界選手権2022(オレゴン)35km競歩 金メダル(大会新記録)
イタリア国内記録保持者(20km競歩 1時間17分45秒)

ちなみにパリ五輪では
20km競歩(男子)4位入賞。タイムは1時間19分12秒。
 わずか1秒差で表彰台を逃し、メダルには届かず。

混合マラソン競歩リレー(男女混合)アントネッラ・パルミサーノとのペアで出場し、6位。チームの合計タイムは2時間53分52秒。健闘したものの入賞圏内にとどまる。

スタノ選手は警察官として働きながら競技を続ける“遅咲き”のアスリート。14歳で競歩に転向し、地道な努力で世界の頂点にまで駆け上がりました。ダイナミックなフォームとレース後半の勝負強さが持ち味で、2019年ドーハ大会では警告ペナルティを受けて苦杯をなめましたが、その反省を踏まえてフォームを修正。東京五輪では日本勢を抑え金メダルを獲得し、翌年のオレゴン世界陸上では新種目35kmで再び世界王者に輝くなど、いまや競歩界のトップ選手のひとりです。

東京五輪男子20km競歩

山西利和の再出発:厚底対応と「Neo山西」への進化

ブダペスト世界陸上では20km3連覇の期待を背負いながら、24位に沈み、パリ代表選考がかかった昨年の神戸大会で初の失格を喫した山西選手。レース直後のコメントでは「レースペースへの余裕がなかった」と振り返りましたが、日本のエースが一時的に力を発揮できなかった要因の一つには、ブダペストから神戸競歩までの短期間の中で欧米勢が積極的に取り入れる“厚底シューズ”への対応に苦労したことも挙げられています。

海外遠征とスタノとの合同合宿

パリ五輪を逃したことで、山西選手は腰を据えて厚底シューズへの対策に乗り出しました。他の日本人選手たちと違ったのは、国内でじっくり厚底シューズ対策に取り組むのではなく、厚底競歩の本場、ヨーロッパを転戦しながら、肌感覚でつかんでいくものでした。欧米の選手が数年かけて作り上げた厚底競歩の歩形は見様見真似だけでは本質にたどり着けないもの。実際のレースの動きの中で「使える歩形」を身につける必要がありました。

そうしているうちに、スタノ選手のInstagramのストーリーズにスタノ選手とトレーニングをする山西選手の映像がアップロードされるようになりました。山西選手からの発信ではなく、スタノ選手からの発信(リーク)というあたりが面白い。

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