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うち向きと、そと向きの話。

先日、ブリュッセルDL5000mスタート前にことを書いたツイートがある。

スタート前の田中希実の表情をみて「これは行く!」と思った。振り返ると父がいた。「今日出ますね。」と声をかけると、「ここまで来るのに時間かかりましたねえ」と笑った5000mスタート前。

このツイートに対して「よくわかりますね?」とEKIDEN NEWSのLINE宛にメッセージが届いたのだけど、これはもう「わかる」。逆に言うと「出ないのもわかる」。同じ田中希実選手でも昨年から今年の春先くらいまでは「うーん」という感じ。国内ではなかなか匹敵する選手がいないだけに、
レースそのものには勝つだろうけど、自分が思い描く、理想とするレースにはならないだろう。ということが「わかる」。

田中選手の場合はレース数が多いだけに、こちらのバックアップデータも豊富だ。ホクレンのとき、日本選手権のとき、世界陸上のとき、兵庫リレーカーニバルのとき、数をあげればキリがない。

これはどこでわかるかというと「目」だ。
嘘みたいな話だけど、これは田中選手に限らず
どんな選手も目でわかる。

先日、為末大さんに熟達論の話を聞くなかで、
「残念ながら走る前から結果がわかってしまいますよね」
という話になった。陸上競技というのは持ちタイムなどで走る前から
結果はわかってるところがある。大きな番狂わせが起きにくいのだ。
(マラソンは距離や天候などといった変数が加わるので、たまに番狂わせがある)ここでとりあげるのは、持ちタイムとは違った部分のこと。

「目をみたらだいたいわかるんですよね。
 ダメなときは目がぼーっとしている
 いいときはグッと目の焦点があってるのがわかるんです」

そんな話をしたら
「ぼーっとしてるとき、それは内省してるんですよ」
スタート前のような「走るしかない」という状況では
前を向くしかない。そんなときに、自分のフォームや状態、
そして周囲といった、いろんなことが気になって、意識が内向きになる。
そういうときはうまくいかないものなんですよ。
為末さんは競技者の視点をそのように説明してくれた。

意識が外を向くか、内に向くか。
内に向くことは決して悪くはないのだけど、
試合で「やるしかない」というときには、それはいらないのだと。

新谷選手のスタート前は超内向きに意識が行く。
ネガティブの境地のような状況だ。しかし、スタート直前に
「カッ!」と切り替わる瞬間がある。
その瞬間を見届けたら、ぼくは安心してスタート地点を離れることができる。「今日はやるな」と。

「今日はやるな」という選手を目で追っていき
シャッターを押していくだけで、満足がいく写真が撮れるようになった。
ぼくはフォトグラファーとは自分では思っていないけど、
いい瞬間を見逃さない自信がちょっとある。
まあ、だいたい観ちゃってシャッター押してないんだけど笑

競馬のことはよく知らないけれど、
パドックがあるのは、そういう理由なんだと思う。
データや血統だけが勝敗のすべてではないのだろう。

と、ここまで書いてきてわかったことがある。
走る前の「目」。を見るためにはスタート地点まで足を運ぶ必要がある。
1500mなら2コーナー。5000mなら3コーナー。
招集所から出てくるところで、その日のレースはだいたいわかる。
ようになってくると思います。

これらの写真はブリュッセルDLでの田中選手のスタート前のもの。こんな強い目スタートラインに現れたら「ああ、今日はやるな」と誰でもわかるでしょう?

と、ここまでがツイッターでの話。もう少し書きすすめてみる。

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