「陸上旅」のススメ
いつのまにか「陸上旅」
人に会うたびに「今は日本にいるんですね」とか、「こんなところにまで来ているんですか」と驚かれることが多いのですが、実は私は決して「旅好き」ではありません。むしろ家でゴロゴロしていたいタイプなのです。とくに海外での入国審査(特にアメリカの)のトラブルや税関での撮影機材が入ってるがゆえのX線を通過したあとの執拗なまでの「機材チェック」。乗り継ぎの度に気になる荷物のロストバゲージ(エアタグもつけてますが)。とにかく移動そのものがストレスでたまらない。できれば仕事の打ち合わせややりとりも、オンラインかLINEのやりとりだけですませたいタイプ。気づけば、自宅と近所のスーパー、そして試合会場の3か所を行ったり来たりするだけで日々が過ぎていました。
本来は出不精なはずなのに、結果的に月間移動距離はとんでもないことになっている。とはいえ、ビジネスの出張のような感覚でもなく、ただお城好きが日本中のお城を巡るように、私は世界中の陸上競技場や大会を訪れているだけなのです。そう、陸上競技を観戦しに行くことにかこつけて各地を移動する――私はこれを「陸上旅」と呼ぶことにしました。今年を振り返ってみると、どうやら年の半分くらいは東京の自宅にいなかったようです。
先日、久しぶりに夜の渋谷を歩いていたら、カバンを前がけにしながら壁沿いをそろそろと移動している自分に気づきました。海外で「人が多い=スリがいる」という警戒心が染みついているのでしょう。ゴルゴ13の「俺の後ろに立つな」というセリフが、ちょっとだけ理解できた瞬間でもあります(笑)。
都大路を観に京都へ
週末は「都大路」こと全国高校駅伝を見に、京都へ行ってきました。ご存じのとおり、京都は世界的に有名な観光地。かくいう私も修学旅行や社員旅行でしか行ったことがないくらい、観光にはあまり興味がありませんでした。自分のお金を出してまで行く気はさらさら起こらなかったのですが、「陸上旅」というフィルターを通して見ると、京都は格別に素晴らしい場所なのです。
もともと京都は何もせずとも魅力的な街ですが、全国高校駅伝が行われる都大路の京都は、いつもの観光地とはひと味違います。選手や学校のことを詳しく知らなくても、高校駅伝の独特の盛り上がりが加わることで、京都の街に特別な空気が漂うのを感じました。もっと早くから観に来ておけばよかった、と少しだけ後悔しています。
都大路の魅力:1日に駅伝が2本
都大路のいいところは何といっても、1日のうちに女子駅伝(ハーフマラソンディスタンス)と男子駅伝(フルマラソンディスタンス)の2本を楽しめることにあります。ハーフマラソンディスタンスの女子駅伝が1時間そこらで、あっという間にゴールしたと思ったら、間をあけずに、すぐにフルマラソン距離の男子駅伝が始まる――まるで甲子園の全日程を半日に詰め込んだような、いわゆる“コスパの良さ”があるわけです。
さらにこの日は、京都の街中や細い路地を歩いていても、ずっと「駅伝の風情」が漂っているのが面白いところ。コース脇の狭い路地にはいると各高校の選手たちが動き作りやアップを続けます。古い町並みに派手な色合いの陸上ジャージはアンバランスでもありますが、同じランナーでも市民マラソン大会のそれとは一味違う緊張感もあって、普段はインバウンド観光客向けの街並みが、まったく別の表情を見せます。
スタジアム観戦のススメと“おっかけ”スタイル
都大路の楽しみ方はさまざまです。一番ラクなのは、西京極のたけびしスタジアム京都でスタート&フィニッシュを待つ方法。スタジアムのビジョンではNHKの実況中継が映し出されていて、戦況をしっかりと追えます。スタート前にはサブトラックでアップする選手を眺めたり、各中継所へ向かうバスに乗り込む選手を見送ったり。競技場周辺に設営される各校のテントまわりで行われる報告会を後ろからOB気取りでのぞいたりと、いろいろな楽しみ方があるのです。
一方で、(こちらがメインの楽しみ方ですが)選手を追いかけながら1区からフィニッシュまで走り回る“おっかけ”スタイルは、なかなかスリリングです。女子駅伝は距離が短く終わるのも早いので、全区間を観ることは物理的に不可能。どの区間、どの選手をチェックするか。つまり、自分は何が一番みたいのか?ということを事前にしっかり決めておく必要があります。ぼんやりしてると、あっというまに終わってしまいますから。
今年もしっかり失敗をしちゃいました。「久保凛選手の駅伝とフィニッシュはじっくり観たい」と思っていたのですが、紫明通りから地下鉄に乗り継ぐ際に手間取り、西京極駅に到着したころには長野東高校がゴールしてしまった後でした(涙)。これが新聞社や雑誌社の記者やカメラマンであれば、大目玉を食らうところでしょうが、ただの観戦者であれば、だれからも怒られません。ちょっとだけ反省すればすむのです笑 というよりも、この失敗は男子駅伝では繰り返さないぞ!と、より慎重になることでしょう。それでも紫明通りでイン側をギリギリに攻める久保凛選手のスパートを間近で見られたのは「フィニッシュを見逃したかい」もありました笑
サポートと激励や感想メッセージありがとうございます!いただいたサポートは国内外での取材移動費や機材補強などにありがたく使わせていただきます。サポートしてくださるときにメッセージを添えていただけると励みになります!