2024年10月27日今日の一枚
箱根駅伝予選会を見終えて、筑波大記録会に向かう。横田コーチから「新谷が10000m走るんですよ。ペーランですが」と聞いて「いよいよ始動だな」と。これは行かねばならない記録会。世田谷から筑波まで行く車にのっけてもらって現地に向かった。筑波につく頃にはあたりは真っ暗となった。10月下旬。本来なら気温が下がって10000m日和になるはずであったが、箱根駅伝予選会と同じく、筑波も蒸し暑さが残ったままだった。
控えとなっている体育館前に行くと新谷さんの姿を見つけた。目があうと伏し目がちに「こんにちは」と挨拶して消えていった。「もう、はいってるな」スタートまであと2時間近くある。はいっている。とは戦闘モードである。ということだ。取材者と選手との距離は「選手側が決めるもの」と思っている。基本的にこちらから話かけることはなく、向こうがオッケーで目があえば自然と会話が生まれるものだと思っているからだ。ということで、この日の距離は決まった。
新谷さんというのは常々、駅伝というものをうまく使う選手だと思っている。陸上、とくに長距離選手は年がら年中、気合をいれっぱなしで走っていると疲れてしまう。しっかり走る時期としっかり休む時期のメリハリがとても大事であるスポーツ。
今年の3月に東京マラソンを走ってから、彼女は「しっかり休んだ」。そして次のマラソンを来年1月のヒューストンと決めた。目標は日本記録の更新だ。通常のマラソンランナーだと夏も距離を踏みまくって1月に向けて仕上げていくのだろうが、彼女のマラソンはもっと短期集中型である。
彼女にとって実業団駅伝というのは、とても大事な「仕事」でもあり、「駅伝」は彼女に戦うスイッチを入れる大事な「ツール」でもある。駅伝へ準備していく過程でスピードを取り戻していき、そのスピードをマラソンへと移行していく。だから、彼女はトラック・駅伝・マラソンと切り離しては考えていない。そのあたりの考え方は省エネというかとても陸上脳が発達しているのだと思う。だから、この筑波大記録会も駅伝に必要なスピードを確認するためにはとても重要なレースである。
「こんなときでも、日本選手権と同じくらいの緊張感で望むのね。」隣に座った第一生命の山下佐知子さんが、この日、筑波大にいた、どの選手よりもハイスピードでアップを続ける新谷選手をみてつぶやいた。この日はクイーンズ駅伝にむけ、積水化学と第一生命の選手たちが5000mを走るために集まっていた。第一生命からは鈴木、小海。積水からは山本。とオリンピックを走ったばかりの選手たちも筑波を走る。
ただし、10000mを走るのは新谷選手だけだ。横田さんからは「日本選手権10000mの参加標準を切っておきたいんですよね」と聞いていた。10000mのスタート地点には山本有真選手が新谷さんのとなりについた。3000mまでペースを作ってひっぱるらしい。
この日、スタート前には小雨が振り始め、グラウンドには陽が落ちても蒸し暑さだけが残った。積水の野口監督も「今日は条件が悪すぎるな」と首をふった。タイムは31分48秒。この日の設定は1キロ3分10秒ペース。日本選手権の参加標準は楽にきれているが、新谷さんにとっては納得いくものではなかった。10000mを走りおえると、10分後に行われた5000mも3000mまで走った。9分29秒。彼女にとって暑さは関係ない。なぜなら、レース当日の気温が上下することはよくあること。3分10秒と決めたのだから、どんな条件でもそれはクリアする。というのが彼女が目指すところであるからだ。
その悔しがる姿をみて、1月のヒューストン行きの飛行機を予約した。
これで3度目のヒューストンとなる。
今日の一枚はひとり筑波大で10000mを走る新谷選手である。2019年ドーハ世界陸上で10000mを走ったときよりも腰回りや背中が明らかに太く、大きくなった。東京世界陸上で10000m走ったらどうなんだろうなあと思うことがある。
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