2019年4月1日 今朝の一枚
「ニューイヤー駅伝はどうして視聴率が良くないの?
だって、出ている選手も箱根駅伝よりも速いんだろう?」
と、聞いてきたのは、日本テレビの土屋敏男さん。
「電波少年」や「ウリナリ」などで
視聴率30%の高視聴率を叩き出し続けてきたテレビマン。
「土屋さん。日本テレビの放送技術がずば抜けてるからですよ」
「いや、オレが日本テレビだからって気を使わなくていいよ。
だって、TBSもさ、バカじゃないんだから
いろいろ手を打つでしょう。それでも勝てないのはなぜ?」
「土屋さん。ニューイヤー駅伝はスポーツ報道だけど、
箱根駅伝はドキュメンタリードラマなんです。
だから、10時間以上、捨てカットがひとつもない。
同じ駅伝でも両者は比べようがないんですって」
「あっ。そういうことなのか。だったら思い当たる人がいる。
そいつは巨人戦を劇空間プロ野球に変えた男で同期なんだ。
そのうち紹介するよ」
ということで土屋さんに紹介してもらったのが
田中晃さん。箱根駅伝の初代総合ディレクター。そして世界陸上東京大会ではホスト放送局のチーフディレクターで国際映像を配信した人であり、
スカパーを経て、現在はWOWOWの社長です。
3月31日に「世界クロカンの配信映像がすごい」という話を書いたのですが、
徹底的にコースを研究された国際映像をみて真っ先に思い浮かんだのは田中さんのこと。「海外にも田中さんみたいな人がいた!」とうれしくなったのです。田中さんがだされたばかりの著作「準備せよ。スポーツ中継のフィロソフィー」には世界陸上東京大会の国際映像を制作するにあたり、2年前から準備をはじめたときの話がでてきます。
私は覚えていないのですが、走り幅跳びの担当ディレクターに
「この競技場の砂はどういう成分で、
どこからとってきた砂か。そこまで言えるようになれ。」
と言ったそうです。極端な話に聞こえますが、
ディレクターたちはそこまで徹底的にこだわって追求しました。
どうです?狂気の域に入ってるでしょう?
この「しつこさ」で箱根駅伝を中継していたのですから、
箱根駅伝が面白くないわけがないのです。
この「準備せよ。」という本。
1章の目次だけでもすごいから紹介しておきます。
「そこにフィロソフィーはあるか?〜放送責任と制作者の役割」
・プロフェッショナルとは準備する姿勢である
・あるがままに
・視聴者は制作者を選べない
・スポーツ中継は制作者によってまるで違うものになる
・CASE1:箱根駅伝初の生中継秘話
・箱根を走る選手にとって大切なものは何か?
・箱根駅伝の”宝”と”傷”
・テレビが箱根を変えてはいけない
・徹底的に”個人のドラマ”を描き出す
・第95回箱根駅伝中継 総合ディレクターのメッセージ
・CASE2:世界陸上東京大会 国際映像制作のルール
・オリジナルカメラの設置
・敗者を美しく、選手は正面から
・担当種目で世界一のディレクターになれ
・CASE3:「劇空間プロ野球」はいかにして生まれたか?
・プロ野球を面白く伝えるための五箇条
・伊藤智仁の痛恨シーン
・伊藤の映像に込めたディレクターの意思
この本、Track Town SHIBUYAの課題図書にもなっているので、
これからの放送はみんなこの本を読んでるの前提で話をすることになるでしょう(笑)
さて、今朝の一枚は2018年11月4日全日本大学駅伝3区東海大学館澤亨次選手。3年連続3区で区間賞なんだねー。今年は駅伝だけじゃなく、世陸でもみたい。それでは今日もよい一日を。
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