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3分42秒

「今日は3分42秒だ」

PUMAエリートヘッドコーチのクレッグ・アリステアは青山学院大最後のレースとなる小原響の目をじっとみつめて、こう言った。

2024年のTHE TENは10000mでパリ五輪参加標準を狙うため全米から猛者が集まり、そこに日本トップクラスの選手も合流。注目が集まった。THE TEN が開催されるサンファンカピストラーノの高校は夜になって気温が下がりはじめると風がピタリとやみ好記録が出る。メインイベントの10000mの前には高校生らによる800mやマイルに加えて1500mのレースが組まれていた。

この1500mのエントリーにはリオ五輪1500m金メダリスト、マシュー・セントロヴィッツやアメリカ3000mSCのレジェンド、イヴァン・ジャガーらも名を連ねる。小原の1500mの持ちタイムは3分59秒61。3分40秒台を切る選手が集う、このレースでは圧倒的に遅い。青山学院大は箱根駅伝を中心に年間スケジュールが回る大学。3000mSCや1500mを走る小原のような選手はもともと異色だ。圧倒的に劣る持ちタイムながらも、代理人が主催者にかけあい、このレースにねじ込んでくれた。小原は青山学院大卒業後はGMOに進む。年末年始は駅伝を走ることもあるだろうが、彼が目指す世界はトラック3000mSCだ。代理人は小原に3000mSCのレジェンド、イヴァンと走らせることも経験として積ませようと考えた。陸上競技における代理人のメインの仕事は選手のライフプランを考えたブッキングも含まれる。小原より持ちタイムが良い日本人選手はたくさんいる。しかし、ここは代理人のネゴシエーション力がものをいった。

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