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心を動かす調味料

職場の年下の女の子に、サカキさんって推しとかいないんですか?と聞かれ、うまく答えることができなかった。

「昔はPerfumeのファンクラブ入ってたりしたね。最近は日向坂に薄っすらハマってたりするけど推しってほどハマれてないかな。」と、なんとも歯切れの悪い回答をしてしまった。


なぜこんなに歯切れが悪くなってしまったのか。
これが好きでハマってますと言い切ることができないのか。


理由は、"心が動かない”からだ。


齢32歳。10代20代の頃と比べて心の動きが鈍くなった。

例えば音楽。10代の頃は心に響く曲が多かった。好きになる曲が沢山あった。

だが30代の今は最新のヒット曲を聴いても中々良いと思える曲に出会えない。

10代の頃、熱烈に推していたPerfumeの新アルバムを聴いて、全然良いと思えなくなったのには、なかなかショックだった。

この原因はPerfumeの曲にあるのではないかと一瞬思ったが、きっとそれは違う。
原因は、私が変わってしまったからなのだ。


大人になると1年があっという間過ぎると言う人が多いが、かく言う私もそう思い始めている。
この原因も、心が動かないからだろう。


私は学生時代の甘酸っぱかったり、ただ酸っぱかったりする思い出をありありと覚えている。

高3の時、政治経済の授業の前、クラスのマドンナと二人で廊下に立って教室が開くのを待っていて、受験の話題になり、マドンナが早稲田を受験すると言い出したので、反射的に「それは記念受験?」と聞いてしまい、変な空気が流れて気まずくなったこと。


これまた高3の時、文化祭マジックにやられ放課後、片思いの相手を校買の前に呼び出し、人生初の生告白を試みるも、全然声が出ず「っき…ぁっ…て」みたいな蚊の鳴くような声を出したこと。

ありありと思いだける。

これはその当時、めちゃめちゃ心が動いていたからだ。

心が動いたことは記憶に残るのだ。


年齢を重ねる内に心の動きが鈍くなる。すると記憶に残る出来事も少ない。記憶に残る出来事が少ないと、1年を振り返ってみたときにボリューム感がなく、あっという間に感じてしまう。
一年あっという間説はきっと、こういった仕組みなのだろう。


さて、このままでは私の人生、薄味のものになってしまうわけだが、どうしたら良いか。

こってりと濃い人生とまでは行かないが、少しでも濃い味にして行きたい。


そもそも、何故若い頃は心が動くのだろうか。

それは、初めての出来事に触れる事が多いからではないだろうか。

女の子と喋ること、女の子と気まずい空気なること、自分の気持ちを直接相手に伝えること、思えばそれらは私の初体験の記憶達だ。


つまり、心を動かすのは初体験だ。

薄味の人生を濃い味にしてくれる調味料は初体験だったのだ。


まだまだ30代、人生折り返してもいないのに、世の中知った風になって、心が動かないなどと甘ったれるな!
まだまだお前の知らないことは山ほどある。
動いて、学んで、まだ知らぬ初体験に飛びこんでゆけ!

と私は私に喝を入れてこの独り言を終わりにしよう。

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