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摩訶不思議

小学校の時に兄が週間少年ジャンプを読んでいて、巻頭カラーの新連載ドラゴンボールという漫画を初めて見た時、何故か解らないくらい絵に惹かれた。

それから何十年と経ち、ドラゴンボールの作者:鳥山明は2024年に亡くなられた。

私は幼稚園の頃から絵描きになるのが夢で、いろんな漫画や絵を真似して自由帳に描いてたけど、小学生の私にはどうしても鳥山明の躍動感のある漫画のシーンが描けなかった。

簡単な悟空の似顔絵はしょっちゅう描いていたけど、週間少年ジャンプの漫画から今にも飛び出てきそうな龍の絵なんかは特に真似出来ないと思って描けなかった。

今はもうとっくに大人になって、見たものは何でも描けるようにはなった。(絵描きなので)
自分の確定申告の書類の作成の為に、地獄の書類整理をしていてストレスで頭がおかしくなりそうな時ふと休憩したら、いきなりドラゴンボールのアニメの歌が流れて来て
『ああ、子供の悟空が可愛かったなぁ…』
と思ったらいてもたってもいられなくなり、漫画ドラゴンボールの第1巻の表紙の絵を、確定申告整理ノートの空きのページに描き写していた。

久しぶりに描き進めると、いろんな所に要点があり見せ所があり、パースの正確さ、などなど盛りだくさんでした。

デッサンが半端なく上手いけど、独特なクセのある描き方が面白い。

描いている途中から、江戸時代の絵師:伊藤若冲を思い浮かべたり、葛飾北斎を思い出した。

伊藤若冲の絵はとにかく個性的で尚且つとても正確精密。
葛飾北斎の躍動感ある人間の動きを捉えたデッサンは秀逸。
それを彷彿とさせる鳥山明の漫画。

擬音が多い漫画やったけど、絵ヅラ1つ1つ、とりわけ漫画の表紙の絵をじっくり見ると、コーヒーの老舗で、老夫婦のご主人が手際良く無駄な動きなく淹れてくれたコーヒーを飲んでいるような味わい深いものがジワジワ伝わって来て、漫画を見ているより、絵画を見ているような気持ちになって来る。

特に龍の予測不可能な動きや威圧感は、建仁寺の天井画の龍よりも迫力があり圧倒されます。
ペラい紙の上に表された漫画なのに…?!

でも想像上の生き物であり鳥山明が生み出した龍という世界観があって、どこかファンタジックで純粋なものを感じてキュンと来るのです。

そして底抜けに明るくて邪気のない悟空の存在感が更に絵の幅を広くしてくれてのめり込んでしまうのです。

あの世に旅立たれた鳥山明は、絵描きの先人達に
『よう頑張ったなぁ!』
と迎え入れられた事でしょう。
ま、本人さんはもっと生きていたかったとは思いますが…

絵描きはあまり自分以外の絵を好きにならないものなのですが、鳥山明の漫画というか絵は大好きです。

死ぬ程絵を描くのが好き過ぎて狂ってしまう寸前でやっとの思いで生きている絵描きは、同じ絵描きのファンが出来るのだと思います。
言葉は悪いので申し訳ないですが
『自分より悲惨な重荷を背負わされてる絵描きがいてるんや…』
と思ってしまい純粋に尊敬してしまうのです。

突き詰めるという事は喜びでもあり苦しみだからです。
ゴールのない荒野をただひたすら歩くという過酷な偉業です。

まだまだペーペーな私が言うのも変ですが…



とにかく鳥山明の漫画は魅力的で素晴らしくて癒されます。
事務仕事のストレスを解消させてくれる悟空と龍に乾杯!という感じです。

摩訶不思議な世界を絵で表す為に生まれて来た鳥山明。
面白い漫画を残してくれてありがとう!

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