《メンバー限定》【第57回】Dr.ヒロの学び直し!心電図塾~X/Tiwtterまとめ~
ご機嫌よう。Dr.ヒロ(X/Twitter: @ekagemaster)です。
週刊日本医事新報にて好評連載中の
『Dr.ヒロの学び直し!心電図塾』
https://www.jmedj.co.jp/premium/rlec/
を楽しく読んでいただき感謝します。
本質的な目線で心電図をレクチャーするこの企画ですが,ですが,今回は【第57回】で,テーマは左脚前枝ブロック【前編】です。
■実際のX/Twitter投稿内容【無料】
SNS(とくにX/Twitter)に投稿した内容や図表というのは,非常に価値のあるものも(もちろん“そうでない”ものも...)一定期間流れて,そして消え去ってゆきます。以上の切り抜きだけ見直してもらうのでも,十分かもしれません(それくらい気合いを入れて作り込んでいるつもりです)。
心電図塾の“宣伝”活動も兼ねて(批評その他はさほど求めてません)ですが,本文を読む上で前提となる知識や重要ポイントなどをnote記事にまとめておくことは有用と考えています。
なるべく毎回行いたい(!)のですが,多忙なため(自分で言うなというツッコミ歓迎ですが真実だから仕方ない...),ややペースが遅れることもあります。今回も“夏バテ”の結果,遅めにはなりましたが,なんとかなりました(笑)
何卒温かい心で見守っていただいて,以下のコンテンツをお楽しみ下さいませ。
《解説付き記事》
■左脚前枝ブロックにまつわる知識問題
今週のレクチャーに関する問題です。スパッと答えられるアナタは前途有望・・・かも。もちろん,いつも通り“本質”をつくような良問となっている...かな?
正解:(a),(c)
キレイな写真やお盆の雑学は置いといて(笑),この問題の正解は選べましたか?
【一言解説】
(a):QRS電気軸の目安として「-45゜」を超える左軸偏位とされる。
(b):左脚前枝の行き着く先は(左室)前乳頭筋です。
(c):次回(第48回【後編】)に説明します。
(d):(d)と(e)はアベコベ。QRS波が「rS型」になるのは“ニ・サン・エフ”。
(e):QRS波が「rS型」になるのは“イチ・エル”の方。
■左脚3分枝説の有名な図
今となっては,心電図を学ぶすべての人が「脚3分枝説」を知っています。
これは代表的なイメージ図ですね。左脚後枝と袂を分かつ“第3の分枝”(中隔枝)に関してもどこかで取り上げたいですね。
房室結節以下,ヒス束で心室の世界に入りますね。
右脚の方が“一本道”で枝分かれも当面しないのに対し,“滝”のように流れ出た左脚は,前枝・後枝の2本の枝に早々に分岐していきます。
この分枝レベルで伝導障害を生じるのが「左脚分枝ブロック」です。まずは頭の中に簡単なイメージを入れておくのに,この図は適していると思います。
■よりリアルな左脚分枝
左脚の解剖・枝分かれを美しく表した代表的な図や写真を貼ってみました。
【問題】どこが左脚前枝でしょう?
ともにだいぶ古い論文から引用した写真になります。
左図では,Bが左脚本幹になり,Cの方が(左脚)前枝になります。Dが(左脚)後枝なわけですが,太さ・長さがだいぶ違うように見えますね(A:aortaつまり大動脈という表示があります)。
右図では,それぞれ左脚前枝→(左室)前乳頭筋〈APM〉,そして,左脚後枝→(左室)後乳頭筋〈PPM〉に向かって走行する様子がメチャクチャ・リアルに見てとれますよね。
もう一つ類似の写真は以下ポストをご参照下さい。これもリアルで良い画像です。
〈URL〉https://x.com/ekagemaster/status/1824219168041996347
■ローゼンバウム――“偉人”ここにあり
終戦記念日の2024/8/15に人物写真とともに投稿したクイズは少し難しかったでしょうか・・・。
【問題】心電図を愛する人々なら知っておくべき“偉人”の一人。新しい心室内伝導障害の概念を提唱したアルゼンチン出身の人物(写真)とは誰?
a) Borys Surawicz
b) Marcelo V. Elizari
c) Jerónimo Farré
d) Mauricio B. Rosenbaum
正解:(d) Mauricio B. Rosenbaum (1921-2003)
も,もちろん今もその業績は生きています・・・循環器専門医にとっては“常識”レベルの人物です。
写真は,Rev Esp Cardiol 2002;56(10):1029-32. に追悼文(In Memoriam)として掲載されたものを引用しています。
もう一つ Circulation 2003;108:780-781. の方の写真も載せておきますが,こちらも良い感じです。
今では誰もが知っている左脚分枝ブロックを“ヘミブロック”(hemiblock)という概念を提唱しました。b)とc)の人物が追悼文を寄稿しています。
■ローゼンバウムのひらめき~コンサルトから~
前問で問うた人物に関して,ようやく核心をつく1問です。
【問題】Rosenbaum MBがコンサルテーションを受け,画期的なアイディアにつながったとされる心電図を。AもBも同一人物の心電図。Cは・・・の意味するところ?
どんなNEUESと関連する?
a) 心筋梗塞と異常Q波
b) 左脚分枝ブロック
c) 左脚ブロック
d) 完全右脚ブロック
e) いずれでもない
詳細は本文(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=24893)に譲りたいと思いますが,重症の冠動脈病変を指摘されている方の心電図のようです。
現代のわれわれにとっては常識ですが,「完全右脚ブロック」で前壁中隔領域(V1~4)に「異常Q波」(pathological Q waves)が確認できます。おそらくはLAD(左前下行枝)が近位部で閉塞したことによる心筋梗塞です。
胸部誘導はほぼ同一ですが,AとBとで異なるのは肢誘導のQRS波形ですね。
一見するとBなんかは,「(上肢)電極の左右つけ間違い」を疑いたくなりますが,否。P波はきれいな洞性を刻んでおり,QRS波の華々しい変化を説明しなくてはなりません。右脚が切れた状態(完全右脚ブロック)で顕著な「左軸偏位⇔右軸偏位」をどう説明するか・・・?あるいは上方軸(A)か下方軸(B)と言っても良いかもしれません。
ここでRosenbaumは,左脚が分かれて各々“anterior division”と“posterior division”に向かうと考えたのです。そして,これらの一方の伝導が障害される病態を“ヘミブロック”と呼んだわけです。
さて,実際の心電図の解説ですが,今風ですと,A:左脚前枝ブロック(LAFB),B:左脚前枝ブロック(LPFB)となります。また,Cが前枝ブロックから後枝ブロックに切れ替わる“瞬間”です!
このように心電図のパラダイムシフトが起きたタイミングを復習するのは非常にエキサイティングかと思い,今回のレクチャーに取り入れています。
■左脚前枝ブロック(LAFB)と読むべき心電図例
はじめに「左脚前枝ブロック」(LAFB)の診断基準を示します。
①はQRS電気軸,②と③はそれぞれ,側壁誘導(イチ・エル)および下壁誘導(ニ・サン・エフ)の波形誘導についてです。
④は次回に説明しますが,QRS波のはじまり~R波の頂点(ピーク)までの時間と考えて下さい。人によっては“VAT”(ventricular activation time)と言ったりする人もいるかも!? いわば心室興奮の立ち上がりから絶頂(ピーク)に到達するまでの時間で,ふつうはQRS波の前半から真ん中くらいまでにはくることが多いです。
この知識を生かして,レクチャーの冒頭に掲げたサンプル心電図で確認してみましょう。
88歳,男性の心電図ですが,
心拍数75bpmの洞調律(わずかに洞不整あり)で,
高度な左軸偏位(QRS電気軸:-70°)に加えて,I・aVLもII・III・aVFそれぞれのQRSパターン波形も典型的で,これぞ「左脚前枝ブロック」(LAFB)と診断できるサンプルかと思います。
QRS幅がwideじゃないけど“なんか広め”な点も,R-wave peak time in aVL ≥45msになっている点,そして「時計方向回転」(clockwise rotaion)を伴うことも指摘したいですね。
■レクチャーのまとめ~星の王子さま?
#日本医事新報 のWeb版で本文をチェックして欲しいです。
会員登録【無料】をするだけで,最新号の記事は読めると聞いています(少なくともボクのレクチャーは読めるはずです)。なんていう太っ腹な出版社なんだ!
このX/Twitterまとめでは,特別にまとめスライドも公開しています。なかなか大変なんですよね,シンプルそうに見えて,こういう作業って・・・
これで“副音声”的な解説を終わります。
次回の『Dr.ヒロの学び直し!心電図塾』【第58回】は「左脚前枝ブロック」の【後編】になります。ぜひお楽しみにして下さい。では,皆さま。まだまだ暑い日が続きますが,お身体ご自愛下さいませ。
ボクも夏にやりたいことが残っているので,全力で頑張ります!! 以上,えかげますたぁ|Dr.ヒロ こと 杉山裕章でした~
(2024年8月28日)
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