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■ 其の136 ■ 入試問題が人生を豊かにしてくれる‥‥と思う話。

🔣2011年、もう十年以上前の入試問題です。
広島修道大学の国語〔Ⅲ〕に出ていた、岡田暁生『音楽の聴き方』の文章を読んで、セロニアス・モンクというジャズピアニストを知りました。
問題文には次のような内容が書かれています。

 大学の授業などで、いわゆる音楽の「様式美」と身体性の関係について説明するとき、必ず聴かせることにしている二枚のCDがある。一つは伝説的なジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの自作自演。もう一つは、同じ曲をジョアンナ・マクレガーというクラシックのピアニストが演奏している録音。曲は「モンクス・ポイント」で、前者は『ソロ・モンク』、後者は『American Piano Classics 』というアルバムに入っている。この「聴き比べ」で最初にかけるのは、いつもクラシック・ピアニストの録音の方と決めている。タッチは清潔で粒がそろっており、リズム感もシャープだが杓子定規ではなく、小股が切れ上がってお洒落そのもの。クレッシェンドやデクレッシェンドの陰影は完璧な滑らかさで、まるでガーシュインのようだ。何も悪いところはない。皆「ふーん」というような顔をして聴いている。
 ところが続いてモンクの録音を聴かせた途端、オーディエンスの空気がいつも一変する。突如としてそこには異次元空間が出現するのだ。ドタ足で行儀悪くベタベタと歩くような右手のタッチは、少なくともクラシックの常識からすれば、いかにもたどたどしく拙い。ジャズ・ファンにはおなじみの、モンクの好きな下降する全音音階のパッセージでは、何度弾いても指がもつれる。左手のブギウギ風のリズムは貧乏ゆすりしているみたいだし、おまけに突拍子もないところで急停止/急発進を繰り返すものだから、リズムは
奇妙にひきつって、まるで「どこかの少しいかれたおじさん」が弾いているようだ。にもかかわらず、この演奏がひとたび鳴り響き始めるやいなや、すべての音が強烈な生命力をもって聴く者の耳に焼きつけられるのである。

🔣二人の「モンクス・ポイント」の演奏と聴き比べて、岡田さんの言われる
  ことに同意されますか。 また、どちらが好みでしょうか。 

クラシック・・・ジョアンナ・マクレガー


ジャズ・・・セロニアス・モンク


🔣また、岡田さんはこうも書かれています。

 クラシック・ピアノにおいては「ムラのなさ」というものが身体訓練の金科玉条であり、逆にジャズ・ピアニストたちにとっては、ムラのない音楽など音楽ではない。つまり正反対の美学と価値体系と人生観を持つ二つの集団があるのである。

この入試文を読んで感化され、わたしはセロニアス・モンクのCDを2枚買っています。 ちなみに、気持ちが明るくなる好きな曲は ⇩ です。
ブラタモリでも耳にする曲です。




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