2022年の動画機X-H1①〜魅力編〜
後継機であるX-H2の足音が日に日に大きくなっていく中ですが、2022年のX-H1を「動画機」として評価してみようと思いました。動画機として足りないものだらけのこのX-H1を手放さずに使い続けてこれたのは、それだけの魅力がこのカメラにはあったからなのだと思います。今さらではあるけれど、長く使ってきたことで知ることが出来たこのカメラの魅力や欠点をまとめてみたいと思います。長くなるので2回に分けて投稿しようとおもいます。今回は主にカメラの魅力について語っていきます。
どのような環境と仕事で私がX-H1を使ってきたのか、自己紹介も含めて少しだけ説明させて下さい。
約13年前に自習映画から始まった私のカメラキャリアはニコンD90から始まりキヤノンEOS 5D mk2、SONY Fs100、 FS5iiを経てX-H1に辿り着きました。いただく仕事は撮影から編集までをワンオペですることが大半で、自分のカメラのみで仕事を完結できるという環境もあって、映像業界ではマイナーなX-H1をメインカメラとして使い続けてこられました。撮影部を外注したり、特殊効果などの大掛かりな編集作業が必要な作品に関してはSONYのカメラをレンタルして使うことが多くありますが、他メーカーのカメラに触れる機会が増すにつれ、X-H1は私のメインカメラとしての地位を確実にしてきたような気がします。タフで取り回しの良いこのカメラはスマホで撮影をするような気軽さを私に与えてくれました。偶然遭遇した他愛のない光景を手持ちでサッと撮る。撮影の合間に撮り溜めたそんな動画達は私の作品に味を与えてくれているのではないかなと感じています。
そんな愛機であるX-H1の魅力は、リストにすると数が少なく、欠点ばかりが目につきます。ちゃんとしたビデオカメラが必要な時はレンタルして、手元に置いておくのは手軽なカメラだけで良いかなと考えていたこともあり、足りない事が多いこのカメラを使い続けることにしました。当初は「このカメラでも撮れるからこれでいいかな」という考えでしたが、次第に「なんとかしてこのカメラで撮りたいな」という考えに変わっていきました。
X-H1の魅了は、①タフなボディ②手ぶれ補正③自由度の高いカスタムボタンや操作ダイヤル、そして唯一無二である④映像の色味です。
①タフなボディは使っていて安心感があります。この安心感は精神安定剤のように現場にいる私を落ち着かせてくれました。ワンオペで動く私にとって、カメラはいわば仲間や同僚のようなもので、信頼関係を築くことは大事です。長く連れ添うなかで簡単には弱音を吐かずに精一杯期待に応えようとしてくれるこのタフなボディは信頼のできる頼もしい仲間になりました。
②所謂プロ機と呼ばれるカメラの多くはNDフィルターを内蔵している物が多く手振れ補正機能は入っていません。現在の技術では機構上の都合でどちらか一方しか搭載することが出来ないためです。当初私も手振れ補正はいらないと考えていました。なぜなら手ブレをさせない撮影の場合は三脚やジンバルを使用するからです。手振れ補正機能のあるX-H1でも同様にこれらのシステムを組みます。ならば質の高いNDを内蔵していた方が使いやすいと感じていました。内蔵のNDフィルターはカメラのボタンやダイヤルから濃度を変えられるため、セッティンがとても楽です。また、NDフィルターによる色味の変化が起き難く、より安定した動画の撮影が出来ます。ではなぜ内蔵NDよりも手振れ補正に魅力を感じているのかというと、ふとした時に手持ちのまま安定した動画を撮影する事が出来るからです。もともと撮影する予定のなかったそのちょっとした動画は結局使わない事が多く、そんな不確かな動画のためにわざわざカメラにジンバルをつけたり三脚をセッティングしたりするのは時間のない現場では少し難儀です。なので本当に必要かどうかと自問自答している間にリスクを考えて諦めてしまいがちでした。ただ現場で感じたそのふとしたシーンを動画として持ち帰ることで、作品の味として活躍してくれる事も少なくありません。私にとって現場でのその感覚はとても大切で、そんな動画をX-H1の手振れ補正のおかげで気軽に撮れるようになり諦めることが随分と減りました。X-H1に出会ってからアンテナが敏感に働くようなった気がします。
③このカメラのカスタマイズ性の高さはボタンやダイヤルに収まらず、メニュー画面にまでおよびます。なんでも出来るわけではありませんが、カメラを自分好みにカスタムすることがとても楽しい事、それをする事で自分の所有するカメラにより愛着を持てるようになることをこのカメラが教えてくれました。自分のX-H1と他人のX-H1ではまるで別物に感じる。それがまた嬉しくて愛らしい。その愛着ゆえに使い続ける事が出来たのかもしれません。常に最新のカメラを追い続けることも大事ですが、一つのカメラを余すことなく使うために、使い続けるのも同じくらい大事なのだと気付かせてくれました。
④そしてこのカメラを購入するきっかけにもなり、今でも一番の魅力を感じるのは映像の色味です。使えば使うほどその色味のレベルの高さに感動します。カラーグレーディングが特殊で特別なものだったのは今や昔で、現在ではより一般的なものになりとても身近なものになりました。しかし富士フィルムのフィルムシュミレーションクラスのカラグレが出来る編集マンがどれほどいるのだろうかと思うほどX-H1から出てくる動画のカラーバランスのレベルは高いように思います。撮影のみならず、優秀なカラリストとしても私を助けてくれています。
以上の3点のみが私が感じるX-H1の魅力です。この3点にどれだけの価値を感じられるかで、このカメラの評価は大きく分かれるのだろうと感じています。購入した当初は色味以外は使い勝手が悪く、手放してしまおうと何度も考えましたが、使うたびに小さな魅力を常に発見し、長く使い続けたことで、このカメラを通して映像との向き合い方を改めることが出来ました。このカメラを使っていて思うことは、富士フィルムという会社は機能を売るのではなく、機械を売っている。そんな印象を感じました。物作りというのは奥床しいものですね。
次回はX-H1の欠点を書きたいと思います。もしこのブログを読んで動画機としてのX-H1に興味や魅力を感じて頂けたのなら、購入の前に必ず知っておいた方がいい欠点を紹介しようと思いますので、是非また足を運んでいただけたらと思います。