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【Wine ワイン】Book Road 葡蔵人 Blanc Blanc


■Producer (生産者)
⁃ Book Road (葡蔵人)

■Country / Region (生産国 / 地域)
⁃ Azumino/Nagano/Japan(安曇野/長野/日本)

■Variety (葡萄品種)
⁃ Niagala
⁃ Sauvignon Blanc

■Pairing (ペアリング) 
⁃ Sea Urchins(雲丹)

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長野県
■プロフィール
 長野県は、日本のワイン造りにおいて、もっとも活気のある県だ。2019年度分調査によるとワイナリーの数は55軒。14年以降は毎年ワイナリーの設立が続き、2000年以降設立されたワイナリー数は40軒を超えて、2019年度で55軒になった(2020年9月の時点で61軒に増えている)。県や市町村など行政の支援の動きとも相まって、この傾向はしばらく続いていくのは間違いない。
 近年顕著に見られるのが、将来のワイナリーの立ち上げを視野に入れたブドウ園の開園である。2003年以降、ヨーロッパのワイン産地のようにブドウ栽培からワイン造りまでを手掛ける小規模ワイナリーが増えており、この後を追うようにブドウを育て始めている人が集っている。新規就農者の多くは県外からの移住者で、またこうしたブドウ園は県内の各市町村に点在している。一連の動きを後押ししていることのひとつに、長野県が13年に発表した「信州ワインバレー構想」が挙げられる。

■歴史
1.明治〜第二次世界大戦終戦
 長野県のワイン造りは明治の初めに端を発する。明治政府の殖産興業政策の一貫として果樹栽培とワイン造りが奨励された。山梨県と大きく異なるのは、本格的なブドウ栽培がワイン造りを目的として始まったことだ。
 1872年、西洋各国でワインが愛飲されていることに着目した百瀬二郎が松本県を通して山ブドウによるワイン造りの免許の許可を大蔵省に願い出た。これが日本初のワイン醸造に関する願書になる(「明治前期勧農事蹟輯録上巻」、農林省農務局編)。結局許可は下りず、県初のワイン造りは5〜10年後になる。
 ブドウの栽培自体は、江戸時代から甲州ブドウが東筑摩郡山辺村地帯(現在の松本市山辺地区)に育てられていたらしい。1688〜1710年頃、甲州ブドウが移入されたという伝承があり、柿や栗などの立木にからめて栽培されていたようだ。1877年頃より本格的に栽培を試みるものもいたが、養蚕の好況と病害のために衰退した。一方、長野市周辺では、善光寺ブドウの名で竜眼が1900年前後(明治30年)頃から栽培されるようになった。
 欧米系ブドウについては1879年山辺村の豊島新三郎が県勤業課より苗木を得て自宅で栽培したのが、県初だと言われる。新三郎の養子の理喜司は試験栽培を経て90年には桔梗ヶ原の赤松林を開墾して、欧米系両品種、コンコード、ナイアガラなど25、26種の本格的な栽培に着手。桔梗ヶ原のブドウ栽培の始まりだ。その後、他の品種より寒さに強いコンコードが枯梗ヶ原の主カ品種になった。
 1902年に理喜司は「信濃殖産会社」を創立して本格的なワインの醸造を開始した。同時期、県内各地でブドウの栽培が始まり、上高井郡や小県郡ではワインの醸造も試みられた。
 桔梗ヶ原のブドウ栽培面積は25年には100ha以上あったが、昭和になってコンコード人気に陰りが見えると、ブドウ農家は活路を求めてジュースやワインの原料として売却し、自らも甘味果実酒(注:これ以前に造られていた酒がワインだったか、甘味果実酒だったかは現存する資料からは不明)を造りだした。ワイナリー数(醸造場数)は約10軒を数えた。
 31年、満州事変が勃発すると物資の輸出入が困難になった。そのため甘味混合果実酒を造っていた寿屋洋酒店(現サントリー・ワイン・インターナショナル)や大黒衛菊酒株式会社(後に三楽オーシャン・現メルシャン)が戦禍の拡大につれて、桔梗ヶ原に原料を求めて進出してきた(前者は36年、後者は38年に免許取得。大手2社はいずれも主たるワイナリーを山梨県に構え、塩尻に建てたのはブドウ酒工場のようなものだった)。35年には醸造場数は18軒に増え生産能力は2,050石に達する。山梨県(1,030石)を達かに上回る日本一のワイン産地だった。

2.戦後〜1990年代
 戦争中に横行した粗悪な酸っぱいワインも1949〜50年には減少したが、ワイン原料としての消費は生食用に比べてはるかに少なく、価格も上がらず、くずブドウや規格外品を原料にしたワイン造りが依然として続く。55年以降、桔梗ヶ原は、コンコードの天然果汁(ブドウジュース)で一躍注目を集める。貿易自由化で入ってきたアルゼンチン産の濃縮果汁の圧迫も受け、ブドウの価格は低下するものの栽培面積自体は増加した。
 一方、68年頃からマンズワインが上田市の気候と善光寺ブドウに注目して長野県に進出、69年には小諸にワイナリーを設立、県経済連、塩田町農協と契約を結び、73年までに計35haの善光寺ブドウのブドウ団地が塩田と大里に形成された。のちに塩田、小諸一帯は前者がカベルネ・ソーヴィニヨン、後者はシャルドネとメルロの重要な産地となった。
 73年、石油ショックによって日本の経済は混迷。県内の大手2社の工場、さらには他の県内のワイナリーも次々と操業を停止、全盛期には27軒もあったワイナリーは75年には7軒に減少する。しかし日本のワイン市場としては、のちにワイン元年と呼ばれる、この73年を契機に新たな時代を迎える。70年の大阪万博の影響もあり、国内でワインが急激に売れだし、75年にはワインの消費量が甘味果実酒のそれを抜く。この頃までの大手メーカーは、地方の小さなワイナリーから、デラウェアの原酒を買って、これに高品質の輸入ワインを多量にブレンドして高級ワインに変身させていた。しかしこれを機に欧・中東系品種を使ったワインが各地で少しずつ造られるようになった。
 そして、甘味果実酒の原料産地として続いていた桔根梗ヶ原も大きな転換期を迎えた。1970年台半ば、大手メーカー2社が桔梗ヶ原の農家とメルロの買い取りの契約を結ぶようになり、メルロの本格的な栽培がスタートする。その後、89、90年の「リュブリアーナ国際ワインコンクール」で桔梗ヶ原産メルロを使ったメルシャンのワインが大金賞を連続受賞すると、桔梗ヶ原はメルロ産地として注目されるようになり、メルロの栽培面積が増えていく。
 70年代には、千曲川流域の小諸や長野盆地右側の北信の上高井郡でもワイン造りが始まった。72年に上田に、73年に小諸に植えた善光寺を醸造する目的で、73年、マンズワイン小諸ワイナリーが小諸に設立されている(この年はワイン消費が一気に増加した年で「ワイン元年」と言われている)。ただし品種のついては、80年台後半の大雪で、善光寺から欧-中東系品種であるシャルドネ、メルロ、信濃リースリングへの切り替えが一気に進んだ。さらに80年代から90年にかけて、小布施町、高山村、須坂市一帯で、地元の小規模ワイナリー、大手メーカーと契約した地元の農家によってシャルドネなど欧・中東系品種の栽培や本格的なワイン造りの息吹が芽生えた。

3.2000年代〜
 2000年代に入ると長野県はさらに新しいステージを迎える。03年、04年と東御市と塩尻市にブドウ栽培に根ざした個人経営の小規模ワイナリーが相次いで立ち上げられたのだ。これを機にワイナリー設立を視野に畑を拓く人が増加を始めるのだ。04年以降の日本ワイン人気も追い風となり、実際にワイナリー数も増えていく。
 13年には、県が信州ワインバレー構想を発表し、ワイン産業の推進を始めた。08年東御市のワイン特区認定を皮切りに、高山村(2011年認定)、坂城町(2013年認定)、山形村(2014年認定)、塩尻市(2014年)、上田市(2014年)、小諸市(2015年)、松川町(2016年)、下篠村(2016年)が特区の認定を受けている。また、2015年には、千曲川ワインバレーの8市町村(上田市、小諸市、千曲市、東御市、立科町、青木村、長和町、坂城町)が広域で特区の認定を受けている(同時に市町村ごとの特区認定は取り消し)。
 長野県では高品質な農産物や農産加工品を提供しながら生産者情報を開示、消費者の信頼を得て、地域振興を図ろうと、「長野県原産地呼称管理制度」を2002年に創設、認定基準と官能審査を有する制度として、2003年度から運用を始めた。また、2016年4月に、長野県庁に「日本酒ワイン振興室」が設置された。

■気候風土
 長野県は本州の中央部に位置しており、面積は約13,562㎢で東京都の約6.2倍。南北は約212km、東西は約120kmで、南北に長い。周囲を北アルプスと呼ばれる飛騨山脈、中央アルプスと呼ばれる木曽山脈、南アルプスと呼ばれる赤石山脈で囲まれる、どこも海に接していない内陸になる。農地は、松本盆地、上田盆地、長野盆地、伊那盆地の4つの盆地に主に広がっている。これらの農地の80%以上が標高500m以上の高地になる。ブドウ園は主に前の3つの盆地の辺縁部に拓かれており、標高は350mから900mにわたる。
 4盆地の気候はいずれも盆地気候で、年降水量が少なく、昼夜、夏冬の気温差が大きく、果樹の栽培には有利な条件が揃う。とりわけ長野盆地から上田盆地、佐久盆地にかけての一帯は、北海道東部に次いで雨が少ない。長野の主なワイン用ブドウの栽培地近くのアメダスのデータを見ると、4〜10月(ブドウの生育期間)の平均気温は、15.6〜18.6℃と幅がある。東御市は15.6℃とブルゴーニュのディジョン(15.4℃)やアルザスのコールマール(15.6℃)とほぼ同じ。4から10月の降水量では長野が最低で683mm、次いで上田が711mmで、東御、松本と続く。ただし年間で見ると上田がもっと少ない。(2003年1月〜2012年12月間での平均値/気象庁ホームページ)。
 長野県におけるワイン用ブドウの栽培は、盆地の際の斜面で実施されている。そのため、前述のように県内、さらには一つの市町村内でさえ、ワイン用ブドウの畑の標高差が大きく、気象条件、土壌の多様性が生まれている。ひいてはそれが後述するような品種の多様性をもたらしている。

■ワイン生産量
 国税庁のデータによると日本ワインの年間生産量は3,599kℓ、750mℓ換算で約479.9万本。山梨県に次いで第2位で日本全体の20.2%を占める。日本ワインの原料としての醸造量で最多な品種はコンコードで1,530t、ナイアガラも995tと多いが減少傾向が続く。ー方メルロとシャルドネはそれぞれ847tと492tと増加。2017年の長野県産の国産生ブドウの生産数量は5,289t。そのうち長野県内で使用されたプドウの量で4,759tと県外流出率は低い。ワイン用プドウの生産では、長野県は山梨県に肉迫している。

■主要ブドウ品種
 長野県も山梨県、北海道等と同様に、ワイン用ブドウ品種、生食用ブドウ品種、そしてワイン用ブドウと生食用ブドウの交雑種からワインが造られている。今までワイン用ブドウの栽培の前例のなかった土地での取り組みも生まれており、収穫に至っていないブドウ園も多い。今後のワイン用ブドウの生産数量は増加傾向が続く。
 気候条件に恵まれており、日本で栽培されている欧・中東系品種のなかで、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランの生産数量はいずれも長野がトップ(メルロが847t、シャルドネが492t、ソーヴィニヨン・ブランが121t)。アメリカ系品種も含めると、コンコードと、ナイアガラの生産数量がいまだ多く、2品種で長野県の48%も占める。ただしこの2品種が占める割合は微減傾向が続いている。2019年の長野県のワイン用原料ブドウ生産量5,289tのうち、上位10種の内、白用品種が34.4%、赤用品種が56.8%で、赤用品種の占める割合がかなり高いことも特徴的。北海道、山梨県など他道県に比べて、赤用品種の栽培に適した条件が揃っているのを物語る。
 ほかに増加傾向なのがカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン。まだ栽培面積自体は微々たるものだが、適地を選んで増加していきそうだ。近年、ピノ・グリ、ゲヴュルツ・トラミネールも増えだしている。



■主なワイン産地
 長野県では、13年に県が発表した「信州ワインバレー構想」のもと産地化が進む。松本盆地、上田盆地(佐久盆地も含む)、長野盆地、伊那盆地の4つのエリアに区分けして、各エリアがワイン産地として発展すべく、生産者の育成、県産ワインのPRなど支援を行っている。これに伴い、ワイン特区を申請する市町村も増加、2020年1月時点で、「千曲川ワインバレー東地区」の8市町村(上田市、小諸市、千曲市、東御市、立科町、青木村、長和町、坂城町)、高山村、山形村、塩尻市、松川町、下篠村など12ヶ所がいわゆる「ワイン特区」に認定されている。2016年に長野県が発表した果樹振興計画によると、14年のワイン用ブドウも含めたブドウ栽培の面積は2,400haでそのうちワイン用ブドウの面積は200haになっており、25年には倍の400haに拡大する計画だ(2017年のブドウの結果樹面積では2,310ha)。

1.桔梗ヶ原ワインバレー
 松本盆地南端の塩尻市全域が含まれる。ここは明治の初期の殖産興業政策に刺激され、ワイン用原料(正確には甘味果実酒)としてブドウ栽培が開始。ワイン造りとブドウ栽培がほぼ同時期に始まった長野県のワイン造り発祥の地となる。歴史の長い中規模ワイナリーから個人の小規模ワイナリーまである。一帯は、約5万年前、奈良井川、鎖川、小曽部川により形成された広大な扇状地が河岸段丘化して出来上がった。川の流れに沿ったゆるやかな斜面が続き、桔梗ヶ原のみならず、「原」という言葉が付く地名が多い。「桔梗ヶ原」は、本来奈良井川の右岸の河岸段丘の上段を指すが、近年は下段、中段に加えて、左岸の段丘も含むこともある。背景にはこれらの地域にも、ワイン用のブドウ園が広がりつつあることがある。標高700〜800mの高地でブドウの生育期間の日照量は全国1位、2位を競い、栽培条件に恵まれる。桔梗ヶ原産メルロを使った地名を冠したワインが国際コンクールで金賞を受賞したこともあり、メルロの産地としても名高いが、ワイン原料としてもっとも多く使われているのがコンコード、次いでナイアガラで、メルロはこれら2品種に次ぐ。近年シラーが増えている。大半が棚栽培で、現地にはブドウ棚が連なる光景が広がる。農家の高齢化でブドウ畑の面積が減少の一途だったが地元のワイナリーが自社管理畑を増やす動きも活発化している。桔梗ヶ原の最上段は黒ボクでも粘土質を多く含み、中段、下段を川に近づくにつれて礫(れき)が増え、水はけも良好。また塩尻市は14年、ワイン特区に認定されるとともに、「塩尻ワイン大学」を開講している。さらに18年にメルシャンがワイナリーを設立し、同市でワイン造りを再開した。同市内の大手メーカーのワイナリー数は2軒になる。

2.千曲川ワインバレー
 千曲川ワインバレーは上流の佐久市から下流の中野市までの千曲川流域になる。県内でもっともワイナリー設立が活発な地域。長野県の55軒中およそ半数のワイナリーがこの地域にあり、その中で2000年以降設立されたワイナリーは20軒にもなるのだ。上流から下流に至るまで、生育期間の少雨という気候条件にも恵まれている。この地帯については、上流の上田盆地と佐久盆地とその周辺(佐久市、小諸市、東御市、上田市)と下流の長野盆地とその周辺に分けて記す(長野市、須坂市、高山村、小布施町、中野市、飯網町)。一つの市町村内の標高差が大きく、一つの市でもシラーのような温かい産地の品種から、ピノ・ノワールのような冷涼な産地の品種までもが栽培されている。

①上田盆地と佐久盆地周辺
 千曲川上流の佐久盆地と上田盆地は、浅間山およびそこから西に連なる南西斜面で、盆地の幅も狭く斜面の斜度も急で起伏に富む。ワイナリー設立の動きがもっとも活発なのが東御市で、2021年10月現在、ワイナリー数は12軒。巨峰が名産だったが、03年に誕生したワイナリーのシャルドネのワインが国内外から非常に高く評価を受けたこと、造り手を養成する「千曲ワインアカデミー」が開講されていることもあって、ブドウ畑が激増。東御市のワイン用ブドウの栽培面積は16年末現在で約60haを超えまだまだ増加しそうだ。栽培農家(ワイナリーを含む)数は25軒を超える。標高600〜900mの間にブドウ園は拓かれており、長野県の中でも冷涼。太陽の光を良く浴びる傾斜地で、ブドウの糖度は上がるが酸が保持される、シャルドネが特に高評価。ほかにはメルロ、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリなど。垣根仕立てのブドウ園が多い。
 上田市、坂城町は東御市に比べると気候も温暖。上田は日本国内でも雨量が少なく、水はけが良い土地になる。大手メーカー2社が両岸にそれぞれ自社管理畑を営むほか、近年個人の生産者も畑を拓き、JAもワイン用ブドウの栽培に関わりだした。19年にはメルシャンが上田市にワイナリーを設立。品種は、大手メーカーが1992年から取り組んでいたカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー系品種が主流だが、ソーヴィニヨン・ブランやシラーも高評価。小諸市は幾分冷涼でシャルドネに適しており、最近は標高900mの前後の土地でのワイン用ブドウ栽培が広がりつつある。13年ワイン特区に認定された坂城町では、町のワイナリー形成事業のもと、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロのなどの栽培が始め、18年にはワイナリーが初めて設立されている。
 東御一帯は左岸の八重原台地は粘土質が多いが、右岸は火山灰由来の黒ボクが多く、一部粘土質が混ざる。上田市の左岸は細粒褐色森林土と呼ばれる粘土質が多いが、塩田のあたりは、一部海底が隆起した区画もあり、今後さらに詳しい調査をする必要がある。

2 . 長野盆地とその周辺
 千曲川のさらに下流。長野市、中野市、小布施町・須坂市高山村にかけては千曲川に流れ込む鮎川や松川、夜問瀬川などの支流に形成された扇状地と千曲川によって造られた沖積地によって構成。右岸と左岸では扇状地の様相も異なる。
 高山村は千曲川の右岸、長野盆地(別名善光寺平)東端の扇状地に位置する。村が付加価値農産物としてワイン用ブドウに注目して、支援、東御市と並び、欧・中東系品種のブドウ園が激増。2015年以降、毎年ワイナリーが設立され、21年でワイナリー数は、6軒。村の欧中東系品種の栽培面積は、21(?)年春の時点で約60ha。ほぼ西向きの緩やかな斜面には垣根仕立てのブドウ園が広がり、標高差は400〜800mと一つの村内でも差は大きく、斜面の向きも複雑に入り組む。標高の低いところと高いところでは栽培されている品種も異なる。低いところではシャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランなどが、高いところではピノ・ノワールも栽培されている。中野市と須坂市では近年ワイナリーが設立。18年には委託醸造を主たる目的にしたワイナリーが設立された。高山村は11年、長野県2番目のワイン特区に認定。
 右岸は基本的には南西から西向きに開けた洪積扇状地。緩斜面の畑の土壌は、黒ボク土が多いが、礫を多く合み水はけが極めて良好な礫粒褐色低地土の場所もある。飯綱町から長野市北部にかけてもワイン用ブドウの栽培が取り組まれている。標高600m以上で気候は冷涼。土壌は黒ボクと粘土質。

3.日本アルプスワインバレー
 長野県西部に南北に延びる松本幹地は松本平とも呼ばれる。この松本盆地から南端の塩尻市のみを除いたエリア。盆地北部からは西側に美しい稜線(りょうせん)の北アルプスが望める。盆地中央には松本で奈良井川と梓川、高瀬川が合流し犀川となる。これらの河川に流れ込むさまざまな支流によって形成された扇状地と沖積地で構成。
 エリアの東部は長野県でブドウ栽培が始まった土地。エリア内の現在の松本市山辺地区だと伝わる。西向きの扇状地にある山辺地区のブドウは明治の頃より、「山辺のブドウ」として「塩尻のドウ」と並び称されていた。土壌は礫を含む低地土と粘土質。池田町、安曇野市明科など安曇野を見下ろす南西斜面でも畑が増加中。高瀬川による洪積扇状地で、標を多く含む森林土。大手メーカーも10haを超える自社管理農園を営む。
 東向きの扇状地に位置する大町市ではこのバレーの中では気候も冷涼、2015年にワイナリーが3軒設立されている。ワイナリーは松本市と安曇野市にそれぞれ3軒。山形村と池田町にもワイナリーが新設された。

4.天竜川ワインバレー
 伊那盆地は、東は南アルプス(赤石山脈)、西は中央アルプス(木曽山脈)に挟まれており、「伊那谷」とも呼ばれる。古くからのリンゴや梨の産地でまだワイン用ブドウのブドウ園は少ない。ワイナリー数も5軒。最近はシードル生産が活発化しており、シードルの醸造を目的とした醸造場が設立されている。中央を流れる天竜川に流れ込む支流によって扇状地が、天竜川によって河岸段丘が形成。松川町の東向き斜面(標高700m)と比較的平坦な宮田村(標高650m)でワイン用ブドウが栽培。品種は長野の他のエリアと異なり、山ブドウとヤマソービニオンが挙げられる。土壌は黒ボクと礫を含む低地土。


参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  

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