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【Wine ワイン】2017 Saint Joseph Blanc Deschants

【Wine ワイン】2017 Saint Joseph Blanc Deschants

シャプティエが醸すマルサンヌ種100%の濃蜜白

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■Producer (生産者)
⁃ M. Chapoutier

■Country / Region (生産国 / 地域)
⁃ A.O.C. Saint Joseph / France

■Variety (葡萄品種)
⁃ Marsanne

■Pairing (ペアリング) 
⁃ Daube Avignonnaise ドーブ・アヴィニョネーズ(アヴィニョン名物の煮込み料理。仔羊の肩肉を白ワインで煮込む)

■ Production area overview(生産地概要)
⁃ Vallée du Rhóne ローヌ渓谷地方

県名
⁃ Rhóne ローヌ
⁃ Loire ロワール
⁃ Ardèche アルデッシュ
⁃ Gard ガール
⁃ Dróme ドローム
⁃ Vaucluse ヴォクリューズ

■プロフィール
 スイスアルプスを発し、レマン湖を経由してフランスに入った後、さらに500kmを超える距離を流れ下り地中海へと注ぎ出るローヌ川。そのローヌ川の流域に広がる、北はヴィエンヌから南はニームまでの南北250kmにわたるワイン産地がローヌ渓谷である。ローヌ、ロワール、アルデッシュ、ドローム、ヴォクリューズ、ガールの6県をまたぐこの産地は一般に、ヴィエンヌからヴァランス周辺までを北部ローヌ、モンテリマール以南を南部ローヌと区分される。
 北部ローヌは急峻な斜面をもつまさに渓谷を形成し、南部ローヌはよりなだらかな平地や丘陵地。気候条件も土壌構成も両者で異なり、よってワインのタイプにも違いがある。北部ローヌはシラー100%、またはシラー主体の赤が中心となる一方、南部ローヌはグルナッシュを主として、シラーやムールヴェードルなど多くの品種をブレンドした赤が多い。
 比較的高めの気温を反映し、A.O.C.ワインに限っていえば生産量の75%が赤、16%がロゼで、白は9%ほどにすぎない。またA.O.C.ワインの栽培面積は66,572ha、生産量は2,710,072hℓで、ボルドーに次ぎフランス2位である(Inter Rhône 202020年実績、A.O.C.Châteauneuf-du-Papeを除く)。

■歴史
 ローヌ渓谷の北部までブドウ畑が広がったのは、紀元1世紀以降。モンテリマールの南15kmに位置するドンゼール村には、ガロ・ローマ時代のワイン造りを偲ばせるヴィラ・デュ・モラールの醸造所跡が見つかっている。ローマ帝国の瓦解によって打撃を受け、ローヌ渓谷のワインはその販路を失ったが、リヨンという消費地をもつ北部ローヌのブドウ畑は壊滅せずに済んだ。
 中世になるとカトリックの修道院により、ブドウ栽培が再開。1309年、いわゆる法皇のアヴィニョン捕囚により、法皇クレメンス5世がその座所をアヴィニョンに定め、次のヨハネス22世が法皇の夏の居城としてシャトーヌフ・デュ・パプを建造させた。カオール出身の法皇は、彼の地から栽培家たちを呼び寄せ、シャトーヌフの周囲にブドウを植えさせたという。
 1933年、シャトーヌフ・デュ・パプの生産者であるル・ロワ男爵がA.O.C.の原型を作り、2年後のI.N.A.O.設立に発展。シャトーヌフ・デュ・パプをはじめ、シャトー・グリエ、サン・ペレイ、タヴェルが1936年に最初のA.O.C.を取得し、翌年、エルミタージュ、クローズ・エルミタージュ、コート・デュ・ローヌと続いた。ガール県のコスティエール・ド・ニームは当初ラングドック地方のA.O.C.に組み込まれていたが、2004年以降、ローヌ渓谷のA.O.C.に編入。隣接するクレレット・ド・ベルガルドもこれに準じた。近年は2006年のヴァンソーブル、2010年のラストー、2016年のケランスなど、コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立するA.O.C.が増えている。

■文化
 ローヌ渓谷のワイン産地の大部分は、行政上、ローヌ・アルプ地方に属している(2016年に再編され、現在はオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏)。ヴォクリューズ県はプロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地方、ガール県はラングドック・ルーション地方(現オクシタニー地域圏)に属する。
 法皇宮殿をはじめとするアヴィニョンの歴史地区、オランジュのローマ劇場や凱旋門、古代ローマ時代の水道橋であるポン・デュ・ガールなど、ユネスコの世界文化遺産に登録されている遺構、遺跡は数多い。また11世紀に建てられたヴァランスのサンタポリネール大聖堂や1862年建造のペイネ野外音楽堂、ヴィエンヌのローマ劇場といった歴史的建造物もよく知られている。

■経済
 リヨンを首都にもつローヌ・アルプ地域圏は、パリを中心としたイル・ド・フランス地域圏に次ぎ、フランス第2位の経済力をもつ。ドイツのバーデン・ヴュルテンベルグ、スペインのカタルーニャ、イタリアのロンバルディアとともに、「ヨーロッパの4大原動力」を構成する地域の1つである。
 リヨンにはフランス3大金融グループの一翼を担うクレディ・リヨネや、ルノー・トラックの本社が置かれ、ヴァランスには航空宇宙、防衛、交通システムなどの事業をもつタレス社の工場もある。
 ローヌ・アルプ地域圏にはボージョレやサヴォワのワインも含まれてしまうが、それらを除いた純粋なローヌ渓谷のA.O.C.ワイン(ヴォクリューズ県、ガール県のワインも含む)は、2020年、 英国のEU離脱、米国の報復関税、それに新 型コロナウイルスにもかかわらず、総出荷量の35%に当たる870,380hℓのワインを輸出。金額にして4億8,860万ユーロに相当する。 最大の海外市場は米国で、2位英国、3位べ ルギー。金額ベースで980万ユーロを輸入した日本は12位にとどまっている。

■気候風土
 ヴィエンヌからヴァランスまでの北部ローヌは穏やかな半大陸性気候で、夏は暑く、冬は寒い。一方、モンテリマール以南の南部ローヌは地中海性気候の影響が強く、夏と冬は乾燥し、春と秋に雨が多い。夏の気温は高く、7月、8月の平均最高気温は30度に達する。
 この地方を象徴する風にミストラルがあり、ローヌ渓谷を北から南に吹き抜ける強風。風達は30m/秒を超えることもあり、1年のうち120〜160日間も吹くとされる。pppp
 北部のローヌ川右岸は多かれ少なかれ花崗岩質だが、最北端のコート・ロティでは片岩や片麻岩の土壌も見られる。左岸のエルミタージュやクローズ・エルミタージュでは石灰質や粘土質、石ころなど土壌は多様だ。南部の土壌も、粘土石灰質、泥灰土、砂質、ガレ・ルレと呼ばれる玉石に覆われた土地など、じつに多様である。

■ワイン生産量(出典:Douane Francaise、France Agrimer、Inter Rhone 2020)
ワイン生産量(A.O.C.ワインのみ)2,503,055hℓ(うち赤80%、ロゼ13%、白7%)
ブドウ栽培面積(A.O.C.ワインのみ)69.574ha 
*ローヌ川流域から東に外れたClairette de Dieなどディオアの4A.O.C.は、Inter Rhóneの管轄外のため上記の数字に含まれていない。

■主要ブドウ品種

[白ブドウ]
Viognier ヴィオニエ
北部ローヌのコンドリューおよびシャトー・グリエで香り高い白ワインを生むほか、コート・ロティではシラーに数パーセント加えることも認められている。

Marsanne マルサンヌ
北部ローヌのエルミタージュやクローズ・エルミタージュ、サン・ジョゼフなどの白ワインに用いられる。しばしばルーサンヌとブレンドされる。

Roussanne ルーサンヌ
北部ローヌのエルミタージュやクローズ・エルミタージュ、サン・ジョゼフなどの白ワインに用いられる。しばしばマルサンスとブレンドされる。

Clairette クレレット
クレレット・ド・ベルガルドなど、南部ローヌの白ワインに単独、またはブレンドの一部として用いられる。酸は低め。

Grenache Blanc グルナッシュ・ブラン
南部ローヌの白ワインにブレンドの主体として用いられる。アルコールが高く、酸は低め。

[黒ブドウ]
Syrah シラー
北部ローヌを代表する赤ワイン用品種であり、A.O.C.に応じて80〜100%の比率で用いられる。南部ローヌではブレンドの一部として用いられ、骨格と気品を形成する。

Grenache グルナッシュ
南部ローヌの赤ワインに、ブレンドの主要品種として用いられる。色は淡いがアルコールが高く、ワインにボディを与える。

Mourvèdre ムールヴェードル
南部ローヌの赤ワインにブレンドされ、色の濃さやタンニンをもたらすと同時に、ジビエや皮革など複雑な風味を与える。

Cinsault サンソー
南部ローヌの赤ワインに柔らかみを与えるためブレンドされることが多い。色は淡い。



■地方料理と食材
⁃ Nougat deMontélimar ヌガー・ド・モンテリマール(アーモンドと蜂蜜から作られた、モンテリマール特産のヌガー)
⁃ Agneau de Sisteron アニョー・ド・シストロン(アルプ・プロヴァンサルおよびドローム・プロヴァンサルで産される生後70〜150日の仔羊。EUのI.G.P.取得)
⁃ Chátaigne d'Ardèche シャテーニュ・ダルデッシュ(アルデッシュ特産の栗。2006年にA.O.C.取得)
⁃ Daube Avignonnaise ドーブ・アヴィニョネーズ(アヴィニョン名物の煮込み料理。仔羊の肩肉を白ワインで煮込む)
⁃ Terrine de Lapin du Luberon テリーヌ・ド・ラパン・デュ・リュベロン(リュベロン産ウサギのテリーヌ)
⁃ Regotte de Condrieu リゴット・ド・コンドリュー(A.O.P.チーズ、山羊乳、シェーヴル、メダル形)
⁃ Picodon ピコドン(A.O.P.チーズ、山羊乳、シェーヴル、メダル形)



■主要なA.O.C.

■ローヌ渓谷全域
Cótes du Rhóne コート・デュ・ローヌ(赤、ロゼ、白)
 アルデッシュ、ドローム、ヴォクリューズ、ガールの4県を中心に、ローヌ、ロワールの2県を含む、全171市町村に認められた広域A.O.C.。実質的には南部ローヌの123市町村で生産される。
 主としてグルナッシュ、シラー、ムールヴェードルをブレンドした赤やロゼ、グルナッシュ・ブラン、マルサンヌ、クレレットなどさまざまな品種がブレンドされる白が醸造される。赤はグルナッシュの作付け比率を30%以上と定めているが、モンテリマール以北ではこれが適用されない。認められているブドウ品種は多岐にわたる。2018年の生産量は1,280,240hℓで、ローヌ渓谷における全A.O.C.ワインの47%を占める。

Cótes du Rhóne Villages コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(赤、ロゼ、白)
 アルデッシュ、ドローム、ヴォクリューズ、ガールの4県95市町村に認められたA.O.C.。通常のコート・デュ・ローヌと比べて、最低果汁糖度や最大収量などの規定がより厳しい。最低果汁糖度はコート・デュローヌ赤の189g/ℓ(シラーは171g/ℓ)に対し、ヴィラージュは207g/ℓ。最大収量は51hℓ/haに対し、ヴィラージュは44hℓ/haである。

Cótes du Rhóne Villages +地理的名称
 特定の村で産出されるA.O.C.コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュのワインは、一定の条件を満たした場合、A.O.C.名の後に地理的名称を付記することができる。最大収量はさらに厳しくなり、41hlℓ/ha。品種規定はA.O.C.コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュに準じる。2018年4月8日の政令でSaint-Andéol サンタンデオルが加わり、現在、以下に挙げる22の地理的名称が存在する。

ヴォクリューズ県
1. Roaix ロエックス(赤、ロゼ、白)
2. Sablet サブレ(赤、ロゼ、白)
3.Séguret セギュレ(赤、ロゼ、白)
4.Valréas ヴァルレアス(赤、ロゼ、白)
5. Visan ヴィザン(赤、ロゼ、白)
6. Massif d'Uchaux マッシフ・デュシュー(赤)
7. Plan de Dieu プラン・ド・デュー(赤)
8.Gadagne ガダーニュ(赤)
9.Vaison-la-Romaine ヴェゾン・ラ・ロメーメ(赤)

ガール県
10.Chusclan シュスクラン(赤、ロゼ)
11.Laudun ローダン(赤、ロゼ、白)
12.Saint-Gervais サン・ジェルヴェ(赤、ロゼ、白)
13.Signargues シニャルダ(赤)

ドローム県
14.Rochegude ロシュギュード(赤、ロゼ、白)
15.Rousset-les-Vignes ルーセ・レ・ヴィーニュ(赤、ロゼ、白)
16.Saint-Maurice サン・モーリス(赤、ロゼ、自)
17.Saint-Pantaléon-les-Vignes サン・パンタレオン・レ・ヴィーニュ(赤、ロゼ、白)
18.Suze-la-Rousse スューズ・ラ・ルス(赤)
19.Nyons ニヨン(赤)

ヴォクリューズ県とドローム県にまたがる
20.Puyméras ピュイメラ(赤)
21.Sainte-Cécile サント・セシル(赤)

アルデッシュ県
22.Saint-Andéol サンタンデオル(赤)



■北部ローヌ

Cóte-Rótie コート・ロティ(赤)
 ローヌ渓谷のA.O.C.として最北端。ヴィエンヌの対岸に位置するサン・シール・シュール・ローヌ、アンピュイ、テュパン・エ・スモンの、ローヌ県に属する3カ村からなる。切り立った急峻な斜面にブドウは植えられ、現在の栽培面積は319ha。
 「焼け焦げた丘」の名にふさわしく、日当たりはすこぶるよい。主要品種はシラーだが、混植混醸に限り白ブドウのヴィオニエが20%まで認められている。
 一般に、南のコート・ブロンドと呼ばれる片麻岩の土壌からシルキーでエレガントなワインが、北のコート・ブリュンヌと呼ばれる片岩土壌の土地からはタニックでパワフルなワインが生み出される。

Condrieu コンドリュー(白)
 コート・ロティの南に続く、ヴィオニエのみから醸造された白ワインのA.O.C.。ローヌ県のコンドリュー、アルデッシュ県のリモニーに、ロワール県のシャヴァネ、マルヴァル、サンミシェル・シュール・ローヌ、サン・ピエール・ル・ブフ、ヴェランを加えた7カ村に認められている。
 栽培の難しさから一時絶滅の危機に瀕したヴィオニエだが、現在、コンドリューの栽培面積は200haまで回復。母岩は原則として花崗岩だが、その風化度合いやレス(黄土)の堆積具合などにより、ワインの風味に変化が見られる。一般に、白桃やアプリコットなど香り豊かで、リッチな味わいの白ワインを生む。

Cháteau Grillet シャトー・グリエ(白)
 サン・ミシェル・シュール・ローヌ村とヴェラン村にまたがる、円形劇場の形をした3haのブドウ畑で、1936年、ローヌ渓谷で最初に認定されたA.O.C.のひとつ。ネイレガシェ家の跡を継ぎ、2011年以降、ボルドーにシャトー・ラ・トゥールを有するピノー家が単独の所有者となっている。
 土壌は石英や雲母を含む花崗岩が風化した砂で、テラス状に植えられたヴィオニエから、フローラルなアロマとミネラルの風味が特徴の、一般的なコンドリューとは一線を画する白ワインが生み出される。

Saint-Joseph サン・ジョゼフ(赤、白)
 ローヌ川右岸、コンドリューの南に位置し、1,330haの栽培面積をもつ、北部ローヌではクローズ・エルミタージュと並んで大きなA.O.C.。北端の4ヶ村はコンドリューと重なっている。1956年にA.O.C.が成立した際はモーヴやトゥルノンなどアルデッシュ県の6カ村のみに認められていたが、69年に26カ村に拡大された。
 シラーに10%まで白ブドウのマルサンヌ、ルーサンスの混醸が許される赤と、マルサンヌとルーサンヌのどちらか単一、またはブレンドによる白が認められている。南北に60kmもの距離があるため、テロワールは一様ではないが、原則的に花崗岩の風化した砂質。

Hermitage エルミタージュ(赤、白、ヴァン・ド・パイユ白)
 ローヌ川の蛇行により左岸に生じた、急峻な南向き斜面がエルミタージュの丘。麓にはタン・レルミタージュの町を臨む。エルミタージュの名前はアルビジョワ十字軍に従軍した騎士ガスパール・ド・ステランベルグが、1224年に帰国後、この丘の上に小さな庵を作り、そこで隠通生活(隠者をフランス語でErmite エルミットという)を送ったことに因む。A.O.C.の綴りはHのないErmitageのほか、定冠詞をつけたL'Hermitage、L'Ermitageも可能。ドローム県のタン・レルミタージュを中心に、クローズ・エルミタージュとラルナージュの2カ村にもまたがり、栽培面積は136ha。シラーに15%まで白ブドウのマルサンヌ、ルーサンヌの混醸を認めた赤、マルサンスとルーサンヌのどちらか単一、またはブレンドによる白、同じくマルサンヌ、ルーサンヌを単一またはブレンドし、45日以上陰干しして造られるヴァン・ド・パイユも少量ながらある。
 南向き斜面はミストラルからブドウを守り、土壌は花崗岩、石灰、シリカ、肥沃な沖積土や粘土質など多様。ローヌを代表する銘酒がここから生まれる。

Crozes-Hermitage クローズ・エルミタージュ(赤、白)
 エルミタージュの丘を取り囲む、栽培面積1,768haの広大な産地。A.O.C。はもともとエルミタージュの北西に位置する同名の村のみに認められていたが、1952年に改められ、ドローム県の11カ村に広がった。エルミタージュ同様、HのないCrozes-Ermitageの表記も認められている。
 品種構成もエルミタージュに準じ、赤はシラーに、白ブドウのマルサンヌ、ルーサンヌを15%まで混醸可。白はマルサンヌ、ルーサンスのどちらか単一、またはブレンド。ヴァン・ド・パイユは認められていない。地勢的には平地が多く、土壌は多様。エルミタージュよりも軽やかな赤ワインを生む。

Cornas コルナス(赤)
 サン・ジョゼフの南、アルデッシュ県のコルナス村で造られる、シラー100%の赤ワインにのみ認められたA.O.C.。ブドウ畑は南向きから東向きの急峻な斜面をもつ円形劇場状で、550haの面積がA.O.C.に認定されているが、栽培の困難さから実際の栽培面積は150haに止まる。土壌は概ね花崗岩質。ミストラルの影響は抑えられ、日当たりはよく、シラー100%の品種構成から、北ローヌでも抜きん出てパワフルな赤ワインを生み出す一方、やや無骨な印象も否めない。

Saint-Péray サン・ペレイ(白、発泡白)
 コルナスの南に隣接する白ワインのA.O.C.。アルデッシュ県のサンペレイ、トゥーローの2カ村に認められている。マルサンヌとルーサンヌをどちらか単一、またはブレンドして造られる通常の白ワインのほか、瓶内二次発酵による発泡性の白ワインがある。後者は出荷まで最低12ヵ月間、澱との接触による瓶内熟成が課される。
 土壌は概ね花崗岩質だが、南東のクリュソル城の一帯には中生代の石灰質土壌が多くみられる。

Clairette de Die クレレット・ド・ディー(発泡白、アンセストラル方式による微発泡白、ロゼ)
Crémantde Die クレマン・ド・ディー(発泡白)
Coteaux de Die コトード・ディー(白)
 この3つのA.O.C.はいずれもヴァランスの南、ローヌ川流域から東に離れた地域にあり、ローヌ川支流のドローム川に沿って、西はアウストシュール・シから東はシャテイヨン・アンディオワまで30km。ドローム県の31カ村によって構成され、1,660haほどの栽培面積を誇。造られるワインのタイプによってA.O.C.が分けられる。
 クレレット・ド・ディーは発酵途中のワインを瓶に詰め、瓶の中で発酵を完了させるアンセストラル方式が伝統的に用いられ、この方式の微発泡ワインには「Méthode Ancestrale メトッド・アンセストラル」の表記を付することが認められている。紛らわしいことにアンセストラル方式のクレレット・ド・ディーの主要品種はクレレットではなく、ミュスカ・ア・プティ・グラン(75%以上)であり、クレレットは補助品種にすぎない。白だけでなく、ミュスカ・ア・プティ・グラン・ルージュやクレレット・ローズ、ガメイなどの品種を用いたロゼもある。残糖35g/ℓ以上の甘口。一方、瓶内2次発酵により造られた発泡性のクレレット・ディーはクレレットのみから造られる。クレマン・ド・ディーはクレレットを主体とした瓶内2次発酵による発泡性ワインで、アリゴテやミュスカ・ア・プティ・グランのブレンドも認められている。コトー・ド・ディーは同じエリアにおいて、クレレット100%から造られる非発泡性の白ワインに与えられたA.O.C.である。

Chátillon en Diois シャティヨン・アン・ディオワ(赤、白、ロゼ)
 上記A.O.C.のエリアの東部に重なる、ドローム県の12カ村に認められた非発泡性ワインのA.O.C.。ガメイを主体(作付け比率で75%以上、醸造において60%以上)にシラー、ピノ・ノワールをブレンドした赤とロゼ、アリゴテとシャルドネからなる白が造られる。



■南部ローヌ

Grignan-les-Adhémar グリニャン・レ・ザデマール(赤、ロゼ、白)
南部ローヌ北端のA.O.C.。ローヌ川左岸に位置し、ドローム県の21カ村に認められている。グルナッシュ(20〜70%)とシラー(30〜80%)を主体(2品種合わせて70%以上)に、マルスラン(10%以下)、サンソー、ムールヴェードル、カリニャンをブレンドした赤とロゼ(白ブドウのブールブーラン、クレレット、グルナッシュ・ブラン、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエも10%までブレンド可)、特にヴィオニエの比率を30%以上と定めた白が造られている。旧A.O.C.コトー・デュ・トリカスタンが、2010年に改称したもの。土壌は砂利の多い土地や石灰粘土質の土地、それに河岸段丘の沖積土など多様。

Cótes du Vivaraisコート・デュ・ヴィヴァレ(赤、ロゼ、白)
 グリニャン・レ・ザデマールの対岸、ローヌ川の右岸に位置し、アルデッシュ県の9カ村とガール県の5カ村に認められたA.O.C.。ブドウ畑の大部分が標高400mの台地にあり、地中海性気候ながら気温はやや低め。グルナッシュ(30%以上)とシラー(40%以上)を主体に、サンソーとマルスランを補助品種として認めた赤、グルナッシュ主体(60〜80%)のロゼ、グルナッシュ・ブラン(作付け面積で50%以上)にクレレットやマルサンスをブレンドした白が造られている。白の品種にはヴィオニエとルーサンヌも認められているが、作付け面積で10%以下、醸造においては20%以下と定められている。

Duché d'Uzès デュシェ・デュゼス(赤、白、ロゼ)
 ニーム市の北に位置し、西はセヴェンヌ山塊の最初の支脈で遣られた、ガール県の77市町村で構成されるA.O.C.。砂岩、泥灰土、砂利、沖積土、石灰岩など土壌は多岐にわたる。グルナッシュ(赤は20%以上、ロゼは50%以上)とシラー(赤は40%以上、ロゼは20%以上)を主体にカリニャン、サンソー、ムールヴェードルのブレンドが認められた赤とロゼ、ヴィオニエ(40%以上)とグルナッシュ・ブラン(30%以上)を主体に、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノを単独、または合わせて20%以上ブレンドし、クレレットとユニ・ブランの使用も認めた白が造られている。

Costières de Nimes コスティエール・ド・ニーム(赤、ロゼ、白)
 ローヌ渓谷のワイン産地において最南端。円形劇場で有名なニーム市を含む、ガール県の24市町村からなるA.O.C.で、その規模は3,948haと大きい。グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー主体(合わせて60%以上)の赤とロゼ、グルナッシュ・ブラン、マルサンヌ、ルーサンヌなどをブレンドした白が造られている。典型的な地中海性気候で夏は暑く乾燥し、ミストラルが1年中吹き付ける。

Clairette de Bellegardeクレレット・ド・ベルガルド(白)
 ガール県のベルガルド村のみに認められている、クレレット100%から造られた辛口白ワインのA.O.C.。1949年に認められた歴史の古いA.O.C.だが、2017年の統計によれば、現在の栽培面積は8haのみ。シャトーヌフ・デュ・パプと同じ、玉石が一面に転がる土壌。

Ventoux ヴァントゥー(赤、ロゼ、白)
 アヴィニョン市の東、ツール・ド・フランスの山岳ステージとして知られるモンヴァントゥの麓に広がるワイン産地。ヴォクリューズ県の51カ村で構成されたA.O.C.である。概ね地中海性気候だが、山岳気候の影響も多少みられる。土壌はヴァントゥー山塊由来の石灰岩を基礎に、その風化による赤土や、砂と粘土の混合、玉石や石灰岩の石片に覆われた土地など。グルナッシュ、シラー、カリニャンなど多様な品種が認められた赤とロゼ、クレレット、ブールブーラン、グルナッシュブランなどから造られる白がある。

Luberonリュベロン(ロゼ、赤、白)
 ヴァントゥーの南、プロヴァンス地方との境界にあるワイン産地で、それが証拠にロゼの比率が最も高い。ヴォクリューズ県の36カ村に認められたA.O.C.。年間日照時間が2,600時間にも及ぶ太陽に恵まれた産地で、地中海性気候の影響を受けつつも、200〜450mの比較的高い標高のおかげで日較差は大きい。グルナッシュとシラーが主体のロゼと赤、ブールブーラン、クレレット、グルナッシュ・ブランなどをブレンドした白が造られる。

Cháteauneuf du Pape シャトーヌフ・デュ・パプ(赤、白)
 南部ローヌを代表するA.O.C.。オランジュ市とアヴィニョン市を結ぶローヌ川左岸にブドウ畑が広がり、A.O.C.はヴォクリューズ県の5市町村、シャトーヌフ・デュ・パプ、クールテゾン、オランジュ、ソルグ、ベダリードに認められている。A.O.C.名は、ローマ法皇ヨハネス22世が築造させた夏の居城の廃場が今も残る村の名前に因む。以下の13品種(色まで分けると18種)が認められているが、とくに比率に関する定めはない。13品種をすべて使用したワインは稀で、通常、3〜4品種のブレンドからなり、単一品種の場合もある。

1. Grenache グルナッシュ(Noir、Gris、Blanc)
2. Mourvèdre ムールヴェードル
3. Syrah シラー
4. Cinsault サンソー
5. Brun Argenté ブラン・アルジャンテ (=Vaccarèse ヴァカレーズ)
6. Counoise クノワーズ
7. Muscardin ミュスカルダン
8. Terret Noir テレ・ノワール
9. Clairette クレレット(Blanc、Rose)
10. Piquepoul ピクプール(Noir、Gris、Blanc)
11. Bourboulenc ブールブーラン
12. Roussanne ルーサンヌ
13. Picardan ピカルダン
 土壌はおもに3つに分けられ、白亜紀の石灰質層を覆う、砂質の土壌、そして赤い粘土の土壌、さらにローヌ川が運んできた玉石の土壌である。テロワールや品種構成により、口当たり滑らかでしなやかなタイプから骨太で力強いタイプまで様々な赤ワインが生み出される。わずかながら白も造られている。

Gigondas ジゴンダス(赤、ロゼ)
 1971年にコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから最初に独立を果たしたA.O.C.。モンミライユ山系の麓に位置し、ヴォクリューズ県のジゴンダス村のみに認められている。
 河岸段丘に広がるブドウ畑は小石混じりの赤い粘土質土壌にあり、グルナッシュを中心(50%以上)にシラーとムールヴェードルをブレンド(合わせて15%以上)した、バランスのよい赤が造られる。規定ではこれら3品種の作付け比率が合計90%以上。カリニャンとマルスランを除く、A.O.C.コート・デュ・ローヌの付帯品種の栽培も認められている。醸造においてはグルナッシュを50%以上用い、シラーまたはムールヴェードルのうち、少なくともどちらか一方をブレンドしなくてはならない。ごくわずかながらロゼも造られている。

Vacqueyras ヴァケイラス(赤、ロゼ、白)
 ジゴンダスの南に位置し、ヴォクリューズ県のヴァケイラスとサリアンの2ヵ村に認められたA.O.C.。同じくモンミライユ山系の麓に位置し、テロワールは砂と粘土の混合士壌や、玉石の土壌。日照に恵まれている。
 グルナッシュを主体(50%以上)にシラーとムールヴェードルをブレンド(合わせて20%以上)した赤、サンソーやグルナッシュなどから造られるロゼ、ブールブーラン、クレレット、グルナッシュブランなどをプレンドした白も造られている。最大収量はジゴンダスと並び、36hℓ/haと厳しい。

Liracリラック(赤、白、ロゼ)
 ローヌ川を挟んでシャトーヌフ・デュ・パフの対岸に位置するガール県の4ヵ村、リラック、ロックモール、サン・ローラン・デ・アルブル、サンジェニエス・ド・コモラに認められたA.O.C.。
 典型的な地中海性気候をもち、赤土と小石で覆われた石灰岩台地や玉石が転がる河岸段丘など土壌はさまざま。グルナッシュを主体にムールヴェードル、シラー、サンソーなどの品種をブレンドした赤やロゼ、ブールブーラン、クレレット、グルナッシュ・ブラン、ルーサンスなどの品種をブレンドした白が造られる。

Tavel タヴェル(ロゼ)
 ガール県に属する2ヵ村、タヴェルとロックモールからなるA.O.C.。グルナッシュを中心にブレンドされた、力強いロゼのみ造られる。ローヌ川由来の沖積土、砂、泥灰土、石灰質など、土壌は多岐にわたる。

Vinsobres ヴァンソーブル(赤)
 ドローム県のヴァンソーブル村にのみ認められているA.O.C.。184〜509mの高さまでブドウ畑が広がり、標高ごとに土壌も異なる。
 グルナッシュを主体(50%以上)にシラーとムールヴェードルなどをブレンド(合計で20%以上)した赤ワインのみ。2006年にコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立した。

Rasteau ラストー(VDN、赤)
 元は1944年、ヴォクリューズ県のラストー村で造られるVDN(天然甘口ワイン)にのみ与えられたA.O.C.。2010年に通常の赤がコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立し、このA.O.C.を名乗ることになった。
 グルナッシュを主体にシラーやムールヴェードルなどの品種をブレンドした通常の赤、それにBlanc ブラン、Ambré アンブレ、Grenat グルナ、Rosé ロゼ、Tuilé テュイレなどの表記が付された天然甘ロワインがある。

Beaumes de Venise ボーム・ド・ヴニーズ(赤)
 ヴォクリューズ県にあるボーム・ド・ヴニーズ、ラファル、ラロック・アルリック、スュゼットの4カ村からなるA.O.C.。3つのテロワールがあり、三畳紀の土壌、白亜紀の粘土石灰と泥灰土、ジュラ期オックスフォーディアンの黒い泥灰土である。グルナッシュを主体にシラーなどの品種をブレンドした赤ワインのみ認められている。

Muscat de Beaumes de Venise ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ(VDN)
 ヴォクリューズ県に位置するボーム・ド・ヴニーズとオーヴィニャンの2ヵ村に認められた、天然甘ロワインのA.O.C.。品種はミュスカ・ア・プティ・グラン・ブランとミュスカ・ア・プティ・グラン・ルージュの2品種が認められており、砂がちの泥灰質土壌や粘土石灰質土壌から、白、赤、ロゼ、3種類の天然甘ロワインが造られる。

Cairanne ケランヌ  (赤、白)
 2016年にコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュから独立した、ローヌ渓谷で最新のA.O.C.。ヴォクリューズ県のケランヌ村のみ認められている。土壌は粘土石灰質、赤い粘土質、沖積土と、3種類に分かれ、粘土石灰質のワインが最も長期熟成型。グルナッシュを主体にムールヴェードルやシラーなどの品種をブレンドした赤と、クレレット、グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌなどをブレンドした白が造られている。



■主要なI.G.P.ワイン
Comtés Rhódaniens コンテ・ローダニアン(赤、ロゼ、白)
 サヴォワ地方やボージョレ地方も含み、ローヌ渓谷の北半分を包括する地方名I.G.P.。

Méditerranée メディテラネ(赤、ロゼ、白)
 ローヌ・アルプ地域圏、プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏、コルス地方公共団体を包括する地方名I.G.P.。南部ローヌの一部も含まれる。

Pays d'Oc ペイ・ドック(赤、ロゼ、グリ、白、発泡赤、発泡口ロゼ、発泡白)
 ガール県、エロー県、オード県、ピレネー・オリエンタル県を包括する地方名I.G.P.。南部ローヌの南西地域も含まれる。

Ardèche アルデッシュ(赤、ロゼ、白)
 アルデッシュ県全域とガール県の一部を包括する県名I.G.P.。特定の地域においては「Coteaux de l'Ardèche コトー・ド・ラルデッシュ」の地理的表示を付記することができる。

Dróme ドローム(赤、ロぜ、白、発泡赤、発泡ロゼ、発泡白)
 ドローム県全城を包括する県名I.G.P.。ただし発泡性ワインについては、A.O.C。クレレット・ド・ディと重なる市町村は除く。特定の地域において、「Comtéde Grignan コンテ・ド・グリニャン 」、および「Coteaux de Montélimar コトー・ド・モンテリマール」の地理的表示を付記することが可能。

Vaucluse ヴォクリューズ(赤、ロゼ、白)
 ヴォクリューズ県全域を包括する県名I.G.P.。特定の地域において、「Aigues エーグ」、および「Principauté d'Orange プランシポテ・ドランジュ」の地理的表示を付記することが可能。

Gard ガール(赤、ロゼ、白)
 ガール県全域を包括する県名I.G.P.。

Collines Rhódaniennes コリーヌ・ローダニエンヌ(赤、ロゼ、白、発泡赤、発泡ロゼ、発泡白)
 北部ローヌのワイン産地を包括する小地域名I.G.P.。


参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  

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