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【Wine ワイン】2019 Baccolo Rosso


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■Producer (生産者)
Ciero e Terra

■Country / Region (生産国 / 地域)
IGP Veneto / Veneto / Italy

■Variety (葡萄品種)
⁃ 85% Merlot
⁃ 15% Corvina

■Pairing (ペアリング) 



■Veneto ヴェネト州

■プロフィール
イタリアの北東部に位置するヴェネト州は、ヴェネツィアを州都とし、東はフリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州、北はオーストリア、トレンティーノ-アルト・アディジェ州、西はロンバルディア、南はエミリア・ロマーニャ州と接している。そして、南にはアドリア海が広がっている。北部はドロミーティ山岳地帯だが、イタリアにしては平野部が広いのもこの州の特徴である。アルプスの雪解け水を運ぶ豊かな河川(アディジェ、ブレンタ、ピアーヴェなど)により水には不自由せず、農業が盛んである。
 大ワイン産地で、イタリア州別ワイン生産量のトップの座を占めることが多い。ソアーヴェ、ヴァルポリチェッラ、バルドリーノなどの良く知られたワイン産地を抱え、シンプルなデイリーワインから、長期熟成能力を持つ複雑なワインまで、幅広いレンジのワインが揃うのがこの州の強みである。レチョート・ディ・ソアーヴェ、レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ、レチョート・ディ・ガンベッラーラ、ブレガンツェ・トルコラートなどの甘ロワインも充実している。力強い辛口赤ワインのアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラは世界中で人気を博している。
 国際ワイン見本市ヴィーニタリーが毎年開かれるヴェローナは「イタリアワインの首都」と考えられている。ブドウの搾りかすから造る蒸留酒グラッパで有名なバッサーノ・デル・グラッパもあり、蒸留も盛んである。

■歴史
 ヴェネト州は先史時代から人類が住んでいた痕跡がある。原始時代にはインド・ヨーロッパ語族のウェネティ族が居住し、「ヴェネト」の語源となる。ウェネティ族は古代ローマと同盟を結んでいたので、この地方のローマ化はスムーズに進んだ。その後、ランゴバルド族やフランク王国の支配を受ける。
 7世紀に小さな島が集まって誕生したヴェネツィアが徐々に勢力を拡大し、東方貿易の独占により大いに繁栄する。最盛期にはパドヴァやベルガモの内陸部から、キプロス島、クレタ島なども支配下に治める巨大な共和国となり、「ラ・セレニッシマ(La Serenissimaはイタリア語で非常に穏やかなという意味)」、「アドリア海の女王」と讃えられた。その後、ナポレオンの支配、オーストリア支配を経て、1866年にイタリア王国の一部となった。第一次世界大戦中はオーストリア=ハンガリー二重帝国とイタリア王国の激しい戦場となり、特にピアーヴェ川周辺では多くの血が流された。国土が荒廃したので、移民による国外流出に拍車がかかった。
 第二次世界大戦後半はドイツ軍の支配下に入ったために、連合軍による激しい爆撃を受けることとなった。第二次世界大戦後は高度成長期の波に乗り、中小企業が順調に成長し、今はイタリアでも最も豊かな州の一つとなっている。

■文化
 ヴェネト州の文化を考える時は、ヴェネッィアの影響下にあった海岸地帯と、農業地である内陸部を分けて考える必要がある。
 ヴェネツィアの影響を受けた地域では、ほとんど退廃的なまでに洗練された文化が花開いた。16〜17世紀のヴェネツィア楽派の音楽、ジョルジョーネ、ティチアーノから始まり、ティントレット、ヴェロネーゼへと続くヴェネツィア派の絵画、18世紀の劇作家カルロゴルドーニなど文化史上の巨人が数多く輩出した。
 一方、内陸部は非常に保守的な風土で、素朴な農民文化が色濃く残っている。酒を飲み交わすということが重要な社会的意味を持っているのもこの地域の特徴で、ワイン、グラッパなどをよく飲むし、人にもよく勧める。
 美しい自然に恵まれた州で、訪れる観光客の数はイタリアでもトップクラス。ヴェネツィア、ヴェローナ、パドヴァ、ヴィチェンツァなど由緒ある美しい町も多く、美術、建築にも見るべきものが多い。劇場も有名で、ヴィチェンツァにはアンドレア・パッラディオ設計による有名なオリンピコ劇場があるし、ヴェネツィアのラフェニーチェ劇場はオペラファンの憧れのまとである。

■経済
 農業を中心とした貧しい州だったので、19世紀末から20世紀前半にかけて多くのヴェネト人が外国に移民した。1870年から1970年の100年間で300万人以上が移民したとされていて、行き先としてはアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイなどの南米が特に多かった。
 第二次世界大戦後は高度経済成長の波に乗り、工業が発展したので、逆に人口が流入した。1970年代以降は中小企業が順調に成長し、イタリアでも最も豊かな州となった。皮加工品、金銀細工などが有名である。ポー河下流の平野部では農業、畜産も盛んである。

■気候風土
 総面積18,399k㎡はイタリアでも8香目に大きい。平野部が大きく56.4%で、山岳部が29.1%、丘陵地番が14.5%となっている。北部に東西に延びるドロミーティ山塊はアルプス山脈の一部であり、そこから南にあるアドリア海に向かって多くの川が流れ出している。
 北にあるベッルーノ県は寒冷な気候で、アドリア海周辺は地中海性の気候であるが、それ以外は基本的に亜大陸性気候である。アルプス山脈が北からの冷たい風を防ぎ、アドリア海が気候を和らげるので、基本的には温暖だ。ロンバルディア州との境にあるガルダ湖周辺は特に温暖で、レモン、オレンジなどの柑橘類やオリーブが栽培されている。

■ワイン生産量
 ワイン生産量10,292,502hℓ(2019年)、ブドウ栽培面積89,288ha(2019年)。生産量は近年20州で1位である。生産量のうちD.O.P.ワインは78%で、白ワインが81%と多い。

■主要ブドウ品種
[白ブドウ]
• Garganega ガルガネガ
ギリシャ系の白ブドウ。ヴェネト州を代表する品種で、上品な果実味を持つ。

• Trebbiano di Soaveトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ
ヴェルディッキオ、トレッビアーノ・ディ・ルガーナと同じグループに属する品種で、酸がしっかりしている。

• Glera グレーラ
以前はプロセッコと呼ばれていた白ブドウ。白桃、白い花のアロマがあり、ほのかな苦みを持つ。古代ローマで有名だったPulcinum プルチヌムが祖先ではないかと言われている。

[黒ブドウ]
• Corvina コルヴィーナ
ヴェネト州を代表する黒ブドウ。チェリーの香りと、適度の酸、タンニンを持つ。

• Rondinella ロンディネッラ
コルヴィーナとブレンドされることが多い黒ブドウ。ボディと酸を与える。

• Raboso ラボーソ
荒々しい魅力を持つ黒ブドウ。色が濃く、酸が強く、タンニンも攻撃的だ。

■地方料理と食材
[前菜]
• Sarde in Saor サルデ・イン・サオール(鰯の南蛮漬け)

[パスタ・リゾット]
• Bigoli in Salsa di Acciughe ビゴリ・イン・サルサ・ディ・アッチューゲ(うどんのような手打ち麺をアンチョビのソースで和えた料理)
• Risi e Bisi リージ・エ・ビージ(グリーンピースと米を煮込んだリゾット)

[魚介類]
• Baccalàalla Vicentina バッカラ・アッラ・ヴィチェンティーナ(干鱈をミルクで煮込んだ料理。ポレンタを添えることが多い)

[肉]
• Fegato alla Veneziana フェガト・アッラ・ヴェネツィアーナ(仔子牛のレバーを玉ねぎと妙めた料理)
• Pastissada de Caval パスティッサーダ・デ・カヴァル(馬肉を長時間煮込んだシチュー)

[チーズ]
• Asiago アジアーゴ(D.O.P.、牛乳、半加熱圧搾、ヴィツェンツァ産)
• Monte Veronese モンテ・ヴェロネーゼ(D.O.P.、牛乳、加熱圧搾、ヴェローナの山が産地)
• Piave ピアーヴェ(D.O.P.、牛乳、加熱圧搾、ベッルーノ産)

[食材]
• Radicchio Rosso di Treviso ラディッキオ・ロッソ・ディ・トレヴィーゾ(トレヴィーゾ名産のトレビス)
• Asparago Bianco di Bassano アスパラゴ・ビアンコ・ディ・バッサーノ(D.O.P.、バッサーノ・デルグラッパ名産のホワイトアスパラ)
• Riso Vialone Nano Veronese リーゾ・ヴィアローネ・ナーノ・ヴェロネーゼ(ヴェローナ近郊で栽培されている米の品種)




西部
Verona ヴェローナ県

■土壌
 ガルダ湖周辺は典型的氷堆石土壌。ヴァルポリチェエッラ地区は石灰質、凝灰岩土壌。ソアーヴェ地区は火山性土壌に石灰質土壌が混ざる。

■気候
 ガルダ湖周辺は非常に温暖で、その影響はヴァルポリチェッラ地区にも及ぶ。ガルダ湖からの暖かい風と、北にそびえるモンティ・レッシーニ山塊からの冷たい風により、昼夜の温度差が激しく、ブドウのアロマの形成に良い影響を及ぼす。

■主要ブドウ品種
[白ブドウ] 
• Garganega、ガルガネガ
• Trebbiano di Soave トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ

[黒ブドウ] 
• Corvina コルヴィーナ
• Rondinella ロンディネッラ
• Molinara モリナーラ

■主要なD.O.P.(D.O.C.G.)ワイン
⁃ Amarone della Valpolicella アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ
ヴァルポリチェッラに使われるブドウを陰干しして造られる。芳醇な香り、ビロードのようなロ当たり、深みのある味わいで、他にはない個性をもつ。世界的に大人気で、目覚ましく成長している。

⁃ Bardolino Superiore バルドリーノ・スペリオーレ
ヴァルポリチェッラと似たブドウ品種で造られるにも関わらず、バルドリーノは全く異なる個性を持つ。ワインはより軽めで、香しく優美な果実味があり、後口にほのかな苦みと塩っぱいトーンがある。スペリオーレはより重量感のあるバルドリーノである。

⁃ Recioto di Soave レチョート・ディ・ソアーヴェ
ソアーヴェ地区で、ブドウ(Garganega 70%以上、Trebbiano di Soave、Pinot Bianco、Chardonnay)を陰干しして造られる甘ロワイン。アプリコット、黄桃の喜ばしいアロマがあり、後口にアーモンドのトーンがある。

⁃ Soave Superiore ソアーヴェ・スペリオーレ
最低アルコール12%。最低瓶熟成3ヵ月を経て、収穫翌年の4月1日から市場にリリースできる。リゼルヴァはアルコール12.5%以上で、収穫翌年の11月1日から市場にリリースできる。D.O.C.G.に昇格したにも関わらず、Soave Superioreの呼称を使用する生産者が多くないのが現状である。

■主要なD.O.P.(D.O.C.)ワイン
⁃ Valpolicella ヴァルポリチェッラ
ヴェローナの北に広がる丘陵地帯ヴァルポリチェッラで造られる優美な赤ワイン。チェリーのアロマと心地よい飲み口、やさしいタンニンが特徴。イタリアを代表するフードフレンドリーなワイン。

⁃ Bardolino バルドリーノ
ガルダ湖東南に広がる氷堆石土壌のゆるやかな丘陵で造られる赤ワイン。軽やかでフレッシュな味わいが特徴。ロゼワインであるキアレットも大成功を収めている。

⁃ Soave ソアーヴェ
イタリアを代表する白ワイン。フレッシュな果実の香りと味わい、心地よいミネラルが特徴。非常に飲みやすいワインで、デイリーワインとしても幅広い人気を誇る。丘陵地帯で造られるソアーヴェ・クラッシコはより凝縮感があり、複雑。


中部
vicenza ヴィチェンツァ県
Padova パドヴァ県

■土壌
ブレガンツェは氷堆石土壌に火山性土壌が混ざる。コッリベリチ、コッリ・エウガネイは火山性土壌に石灰質土壌が混ざる。

■気候
アルプス山脈が冷たい風を妨げるので比較的温暖な気候である。

■主要ブドウ品種 
[白ブドウ] 
⁃ Tai タイ
⁃ Pinot Bianco ピノ・ビアンコ
⁃ Vespaiola ヴェスパイオーラ

[黒ブドウ] 
⁃ Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニョン
⁃ Merlot メルロ




東部
Treviso トレヴィーゾ県
Venezia ヴェネツィア県

■土壌
 コネリアーノ・ヴァルドッピ・アーデネ地区は粘土石灰質で砂が混ざる土壌。ピアーヴェの町からアドリア海にかけては沖積土壌で小石が多い。海に近づくにつれて泥灰土、粘土が増える。

■気候
 ここでもアルプスにより保護されて温暖な気候。比較的コネリアーノは温暖で、ヴァルドッピ・アーデネはやや涼しい。ピアーヴェの町からアドリア海にかけては地中海的気候。

■主要ブドウ品種
[白ブドウ] 
⁃ Glera グレーラ

[黒ブドウ]
⁃  Merlot メルロ
⁃ Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン
⁃ Raboso ラボーソ

[ヴェネト州の主要D.O.P.] 
⁃ Recioto di Soave D.O.C.G. レチョート・ディ・ソアーヴェ D.O.C.G. 
⁃ Bardolino Superiore D.O.C.G. バルドリーノ・スペリオーレ D.O.C.G
⁃ Bagnoli Friularo / Friularo Bagnoli D.O.C.G. バニヨーリ・フリウラーロ/フリウラーロ・バニョーリ D.O.C.G
⁃ Colli di Conegliano D.O.C.G. コッリー・ディ・コネリアーノ D.O.C.G.
⁃ Colli Euganei Fior d'Arancio / Fior d'Arancio Colli Euganei D.O.C.G.コッリ・エウガネイ・フィオル・ダランチョ/フィオル・ダランチョ・コッリ・エウガネイ D.O.C.G.
⁃ Recioto di Gambellara D.O.C.G. レチョート・ディ・ガンベッラーラ D.O.C.G.
⁃ Lison D.O.C.G. リソン D.O.C.G. 
⁃ Montello Rosso / Montello D.O.C.G. モンテッロ・ロッソ/モンテッロ D.O.C.G. 
⁃ Colli Asolani Prosecco / Asolo Prosecco D.O.C.G.コッリ・アゾラーニ・プロセッコ/アゾーロ・プロセッコ D.O.C.G. 
⁃ Conegliano Valdobbiadene-Prosecco / Conegliano-Prosecco / Valdobbiadene- Prosecco D.O.C.G.コネリアーノ・ヴァルドッピ・アデネ・プロセッコ / コネリアーノ・プロセッコ/ヴァルドッピアデネ・プロセッコ D.O.C.G. 
⁃ Amarone della Valpolicella D.O.C.G. アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ D.O.C.G.
⁃ Recioto della Valpolicella D.O.C.G. レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ D.O.C.G. 
⁃ Valpolicella Ripasso D.O.C. ヴァルポリチェッラ・リパッソ D.O.C. 
⁃ Piave Malanotte / Malanotte del Piave D.O.C.G. ピアーヴェ・マラノッテ / マラノッテ・デル・ピアーヴェ D.O.C.G. 
⁃ Soave Superiore D.O.C.G.ソアーヴェ・スペリオーレ D.O.C.G.


Venetoヴェネト州の食とワイン

「ヴェネトを象徴する食材は、米と豆である」。名著「イタリア郷土料理集」の文である。今回、米と豆の料理を選んだのは、この地でよく使われる食材というだけではなく、この二つの食材、豆はクチーナ・ポーヴェラ(庶民料理)、米はクチーナ・リッカ(貴族料理)を象徴するからだ。イタリアでは豆料理が各地にあるが、ヴェネト州で豆といえば、アメリカ大陸発見後に到着したインゲン豆をさす。栽培のしやすさと収穫量から、それまで栽培されていた黒目豆にとって代わり、ヴェネトからイタリア全土に広がっていった種類だ。一方米は1500年代以降に栽培されるようになったが、売れる確証がなければ農場が広大な田を作って栽培するはずはなく、そこには有力な消費者が不可欠である。つまりヴェローナとヴェネツィアの貴族のお抱えコックたちの存在だ。彼らが高級食材としてこぞって使い、やがて米はこの地の特産品となっていった。面積の半分以上の平野(56.8%)、山岳地帯(29%)・丘陵地帯(14.5%)、湖水地方、海岸線の地形からは、ほかの州と同じように土地の食材を使った郷土料理が生まれたが、ヴェネトではクチーナ・リッカの影響があるのを忘れてはならない。




■ヴェネトのブドウ品種

[ガルガーネガ]
ヴェネト州(ガンベッラーラ、ソアーヴェ、ガルダ湖周辺)、ロンバルディア州などで栽培される白ブドウで、古代ギリシャ由来と言われている。昔から、甘ロワインを造るブドウとして認められていた。多くの資料では、ガルガーネガはトレッビアーノ系の品種で、エトルリアに起源をもち、伝統的なペルゴラ仕立てで北東イタリアで栽培されていた、とされる。

[タイ]
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州、ヴェネト州などで栽培される白ブドウで、公式名はフリウラーノ。以前は、トカイ・フリウラーノ(トカイ)と呼ばれていた。世界的にはソーヴィニヨン・ブランと緑戚関係にあるとされる説が有力。

[コルヴィーナ]
ヴェネト州、ロンバルディア州(ガルダ湖周辺)で栽培される黒ブドウで、ヴァルポリチェッラ地域が起源と言われる。コルヴィーナに関する初めての資料は紀元前2世紀までさかのぼることができる。一方、コルヴィノーネは同系遺伝子型と考えられていたが、1993年のDNA鑑定により別品種であることが分かった。

[ロンディネッラ]
ヴェネト州で栽培されている黒ブドウで、ヴェローナ近郊が起源と言われている。現在は主にブレンド用として使われる。
参考文献:「土着品種で知るイタリアワイン」(中川原まゆみ著/ガイアブックス)



塩鱈と干し鱈の混乱
Baccalà mantecato alla venezianaヴェネチア風バッカラ・マンテカート
カトリックの国では金曜日は肉を食べない日とされ、保存魚はその日の重要な食材だった。干し踏は北欧から、塩はスペインからと、わざわざ遠くから運んでくるのもそのためであった。通常イタリアでは干し鱈をストッカフィッソ、塩鱈をバッカラと呼ぶが、ヴェネトでは干し鱈のことをバッカラと呼ぶ習慣がある。そのため、ストッカフィッソを使っているにもかかわらず、料理名はバッカラと紛らわしい。この料理は、乾燥という特質を生かし、鱈の繊維の魅力を引き出した独創的ものである。なお現在では、宗教的な食の制限はほとんどない。

作り方
前もって水で戻したストッカフィッソ(干し鱈)を水で覆い、火にかける。柔らかくなったら水を切り、皮と骨を取り除く。乳鉢に入れてすりつぶし、オリーヴ油を垂らしながら、力を込めてクリーミーになるまで泡立てるようにする。最後に適量の塩、コショウ、イタリアパセリとニンニクのみじん切りを混ぜ込む。通常ポレンタを添えてだす。



ルーツは南イタリアから
Pasta e fagioli パスタ・エ・ファジョーリ
ヴェネトを代表する赤インゲン豆とパスタを組み合わせたズッパである。この料理の源流は南イタリアにあるエジブト豆とパスタを合わせた「ラーガネ・エ・チェーチ」だろう。同じように豆とパスタを合わせたズッパは各地にあり、使う豆によってどこの郷土料理かが推察できる。前述のエジプト豆は南イタリア、レンズ豆は中部イタリア、トスカーナの「パスタ・エ・ファジョーリ」は、カンネッリーニと呼ばれる小型で筒状の白インゲン豆を使うのが特徴である。ヴェネトのものは、豚皮や生ハムの皮などを入れて、冬の寒さに対抗できるように工夫がなされている。作り方たっぷりの冷水に豆を浸して一晩つけておく。翌日、豆をたっぷりの水で覆い、玉ネギ、人参、セロリのみじん切りと、熱湯に通した豚皮を入れる。煮えたら豆半分を裏ごしして、鍋に戻す。パスタまたは米を入れる。スープ皿に盛り付けてから、豚皮を細く切って飾り、最後に挽きたてコショウとオリーヴ油で風味付けし、混ぜずに出す。


特産品最高のコンビ
Risotto alla trevigiana リゾット・アッラ・トレヴィジャーナ トレヴィーゾ風リゾット
ヴェネトの野菜ラディッキョ・ロッソのグループは、それぞれ生産地の名前が付けられ、特産品になっている。中でもトレヴィーゾの晩成種は、収穫後にプールで軟白栽培をするという手間のため、最も高価な野菜といわれる。一方ヴェローナ近郊はピエモンテのヴェルチェッリと並ぶ米の産地であり、ヴィアローネ・ナーノという種類が栽培されている。ピエモンテのリゾットはバターベースだが、こちらはガルダ湖産のオリーヴ油を使う。単なる米料理の一つではなく、特産品を使ったものとして、ヴェネト人の誇りが込められている料理である。

作り方
ガルダ湖産のオリーヴ油とタマネギのみじん切りでソッフリットを作り、米を加えてトーストする。刻んだトレヴィーゾを入れてから、赤ワインを注いでアルコール分を蒸発させる。ブロードをレードルー杯ずつ加えながら煮る。アルデンテになる一歩手前で火からおろし、バターとパルミジャーノ・レッジャーノを加え、よくかき混ぜて照りを与える。


参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  


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