職業のこと
私の母は、当時のことばで言うと「スチュワーデス」で私を産むまでは、国内大手航空会社で経験を積んだのちに外資系航空会社の国際線のCAとして海外を飛び回っていた。
現役の頃の彼女の写真を何枚か見たことがある。彼女は「ママの青春」だったと言う。
私は幼い頃から「ママみたいになるのよ」と言われて育った。そうならなければいけない、と思っていた。小学校の卒業文集に「私の将来の夢はスチュワーデスになることです」と書いた。
それは私の本心ではないことにも気づいていなかったのか、気づかないようにしていたのか、母親の顔色を窺っていたのかわからない。心に蓋をしていたのかも、わからない。けれど本心から「スチュワーデスになりたい」と願ったことはなかった。
中学校入学後の最初の英語の授業。あのときの感動、座っていた座席の配置や先生の表情、鮮明に覚えている。T先生という女性の先生。T先生とお呼びしたことはない。カトリックの学校で、彼女は修道女だったので、皆彼女をシスターTと呼んだ。
シスターTとの出会いは、私のいまの職業選択に大きな影響を与えた。
教師になりたい、というよりもシスターTのような人間になりたいと心底思った。そのとき私は12歳。それから14年後の26歳のときに、私はシスターTと同じ職業に就いた。
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