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痛たたたた「英語のそこのところ」第140回
【前書き】
今回、投稿するエッセイは7年前の2017年8月3日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
ある大企業の社長さんの別荘に招かれたときに、なんで、Native English Speakerは、痛い思いをしたときにOuch! 一本なんだろう? と不思議に思った噺です。(著者)
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英語嫌いだった私の英語・英会話マスターへの道
VERSANT スコアアップ法を大公開
英語なんて好きでもないし、得意でもない。ていうか、むしろ嫌い。でも、仕事で英語を教えなきゃならなくなった! さあ、こまったぞ、どうする?
これは作者の15年にわたる英語との格闘をギュッと濃縮した英語スキルアップ物語。
英語・英会話習得、VERSANTスコアアップの詳しいやり方、学習期間がわかって、ふつふつとやる気が湧いてきます。
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2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。
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この「ドリル18」で「The Matrix」 を題材に英文を作っていきます。
判らない。これはただの偶然なわけがない。
なにいってる?
オラクルさ。預言者が告げたんだ。俺の選択にかかってると。
どんな?
なにする気?
侵入する。おれは行く。
ネオ、彼は自分を犠牲にしてあなたを、それを無にしないで。
俺は彼が信じていたものとは違う。救世主じゃない。トリニティ。預言者も認めた。
いいえ、そうよ。
残念だが普通の男だよ。
それは違う。
英語でどう言うのでしょうか?
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。
【本文】
夏ですねぇ~。
ああ、全国的に夏です。
朝から徹底的に夏。
しっかりと分厚いカーテンを窓にかけているのに、お日様ったらどうにかして入り込もうとなさる。う~ん、う~んと朝方には暑さに目が覚めて、ピピッとエアコンをつけてしまうことに相成ります。
ああ、もう日本のどこかに夏じゃないところないかしら? なんて、我がアルカディアを求める「海賊・ハーロック」みたいな気分になっちゃう。もちろん、そんなに勇壮な雄々しさも、悲壮な切なさもありゃしない(まず、足が短い)。いるのは朝から汗だくになっている「おいどん」です。
まぁ、キャラ的に私なんかは夏に向いていない。活動的じゃないですからね。夏はほんとに休養期間というか、身を隠す時期というか、極力外に出ないようにして過ごしています。じっとエアコンの効いた穴倉から出ないようにしてなんとか夏が過ぎるのを待っている。夏眠という言葉があるかどうかは知らないですが、あるとしたらまさしくそれ。
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でも、世の中の人はそうでもないんですねぇ。
なんだか暑くなった方がどんどん活動的に外に出ようとされる方々もいる。ん、書きながら気がつきましたけど、こっちの方が生き物として普通なのかな? 私がちょっと変なのに今更気がつきますね。で、まぁ、話が続かないんで、私は涼しい部屋にいてコツコツ仕事をしていたいんですが、こういう暑いときほど「外に出ようぜ!」というお誘いをかけてくる人たちがいます。
ゴルフに行こう! とか、
デイゲームの野球を観に行こう! とか、
プールに泳ぎに行こう!
バーベキューしよう!
キャンプに行こう!
なんていうお誘いなんです。みなさん元気ですよねぇ。とくに会社の社長さんたちというのは夏には特に活発にレジャーを楽しまれるようで、よく誘っていただける。
たいがいは申し訳ないと思いつつ丁寧にお断り申し上げるんですが、たまに「へぇ、そういう世界があるのかぁ」というお誘いがあって、取材がてら出かけることもある。
実はこの間のことなんですが、そういうお誘いがありまして。なんと東京のレストランのスタッフを丸ごと自分の別荘に連れて行って、バーベキュー・パーティをするってお話で、豪快な話もあったもんだなというのと、大企業の社長の別荘なるものを見ておくのも取材だなと思いつつ、溶けそうになりながら、いや溶けながら行ってきました。いやぁ、久しぶりに日の下に出たんで日焼けで肌が痛いです(笑)
こ、これは。。。
とレンタカーを降りた徳田は舌を巻いた。
目の前には勇壮な相模湾が広がり、その向こうには美しい富士がその黒々とした夏の山肌を見せている。絶景だ。こんないい立地にあって、しかもこの敷地、建物の大きさ、どんだけ金持ちなんだか。。。。
「ああ、来られましたね。徳田先生。のんびりしていってください」
駐車場に出て来賓客を出迎えていた男が徳田に声をかけてきた。真っ黒に焼けた肌が若々しく、エネルギッシュな印象を強く与える。この別荘の主の柏尾だ。
「お招きに預かり、ありがとうございます」
「そういう堅い挨拶はなしだ。今日はオフなんだから」
「ありがとうございます」
とは言われても、オフだからといって「ようよう!」といきなり肩を組むわけにはいかない。相手は昔高校受験を世話した生徒の父親で、あるメーカーの社長をしている人物だった。実は今までに1回か2回しか会ったことがないのだ。
「あ、徳さん!」
玄関ドアを開けて、その世話をした元生徒が飛び出してくる。さすがにほっとする。ほかに顔見知りはいない。アウェイの中で話し相手を見つけるほどほっとすることはない。
「こら、磨(ま)つ。先生とお呼びしなさい」
「いいんだよねぇ。徳さんで。昔からそうなんだから」
「これですからな。こいつにはどうしても甘くなっていかんのです」
娘の抵抗に、父親の眉が八の字になっている。目に入れても痛くないというのはこのことだろう。
「わがまま娘みたいに言うのはやめてよね。もう25なんだから」
「わかった、わかった」
そう言うと柏尾は徳田に向き直る。
「こういう子ですから、ご苦労もお掛けするでしょうが、なにとぞよろしくお願いします」
柏尾は人目を気にせず徳田に頭を下げた。周囲の客たちが目を剥く。あの若造は誰だろうという視線が徳田に突き刺さる。
「留学前に、ちょっと鍛え直させてもらいます。お任せ下さい」
「ほらね。この人、自信満々でしょ? これぐらいじゃないとやる気にならないのよ、あたし」
「そうそう、やる気になってもらわないとね。せっかくのイギリス留学を無駄にしないためにもな。ビシビシお願いしますよ。徳田先生」
「はい。承ります」
本当にこういう世界があるんだなぁっと思いつつ徳田は頭を下げていた。
「いやぁ、磨つがこんなお嬢様だったとは知らなかったよ」
大ぶりのパラソルが5個ほどならんで日陰を作っている。それぞれの下にはテーブルとチェアが置いてあった。相模湾から吹き上げてくる風が心地よい。テーブルの上には所狭しとサラダや海鮮焼きにワイン・ビールが並べてあった。少しでも食べ物がなくなれば、炎天下の中きちんとシャツとパンツを身に付けたウェイターやウェイトレスが追加の料理を持って来てくれる。贅沢三昧とはこのことだ。
「あれ、知らなかったっけ? 前からお嬢様だって言ってたけど」
「磨つさんは、活動的だからねぇ。信じてもらえないのも仕方がない」
テーブルの向こう側に座った男が茶々を入れた。40代だろうか、アロハシャツを着てこれまたがっつり日焼けしているいかにも「夏」っぽい男だった。Tシャツの上にカジュアルシャツを羽織った徳田とは対照的だ。柏尾の会社の役員らしい。大企業の役員というのはみんな日焼けをしているものなんだなぁっと徳田は変な感心をする。
「おかしいな。これでも塾では抑えてたんだけど」
「徳田先生、磨つの指導するのは手古摺ったんじゃないですか」
親しげに男は徳田に声をかけてきた。人前にもかかわらず柏尾が頭を下げてくれたからだろう、下にも置かぬ扱いだ。ありがたいことにすでに何枚もの名刺を交換をさせてもらっていた。いい宣伝だ。
「ええ。そりゃそうです。納得しないと動かないんですから」
男があははっと豪快に笑い、磨つが徳田の二の腕を叩いた。
笑い声に誘われたのか、新たに鉄板にのったステーキが運ばれてきた。
「松坂牛のシャトーブリアンです。塩と胡椒でお召し上がりください」
「おお、こりゃすごい」
ウェイターが皿に取り分けた肉を男に渡す。
「君も食べたらどうだ? 一緒に食べていいって言われてるんだろ?」
男が鷹揚にウェイターに言った。
「いえ、私たちはみなさんがひと段落してからです。お世話ですから」
世話をするのが仕事です、なのか、柏尾社長に世話になっていますから、なのかどっちにもとれる言い方をウェイターの男はした。男のシャツは汗で半透明になっている。
磨つが皿をウェイターに渡し、徳田の分を取り分けてもらう。あまり食べる気はしないので、おれはワインだけでと徳田は言おうとしたが磨つに皿を押し付けられてしまっていた。美味いものを見せつけるように食べるのは気が引ける。
「あちっ!」
と、突然、男が大声を出した。
「これ、すげえ熱いよ」
ウェイターがええ? と驚く。
「そんなはずは……」
「え? ほんとに?」
磨つが自分の皿の肉を口に持って行く。
「あつっ! ほんと、なにこれ! やけどしちゃう」
「本当ですか?」
困ったようにウェイターが言う。
「じゃあ、お前食べてみろよ。本当に熱いんだから」
「すいません。じゃあ……」
仕方なくというふうに、炎天下の下、シャツもパンツもびっしょりと汗みずくにしたウェイターがシャトーブリアンを口にする。
「あっつううう、これほんとに熱いですね。ほんと、ほんと」
と言いながら、ウェイターは二口目をほおばった。
「いやぁ、ほんと熱い熱い」
「熱いだろ? 火傷するからこれ呑めよ」
男がウェイターに冷えた白ワインを注いで渡す。
「あっ、ありがとうございます。火傷しそうだったんで助かります」
ウェイターがキューとそれを呑み干した。
呆気にとられていた徳田はようやくニヤリとした。遅まきながら遊びであることが判ったのだ。
「え、どれどれ。ほんとに熱いんですか?」
徳田が肉を口に放り込んだ。
「熱っ! なにこれっ」
と、パラソルの下で爆笑が起こった。
「徳田先生、下手だねぇ。ぜんぜん熱そうじゃないよ。もっと本気で言わないと」
「徳さん、真面目! ぜんぜんできてないよ」
男と磨つが笑いながら徳田に言う。それならと徳田が、白ワインに手を伸ばした。
「冷たっ! これ、冷たすぎるよ。凍傷になっちゃう」
「え? そちらもですか? 試していいですか?」
「もちろん、もちろん」
「あ、冷たっ! ほんと冷たいですね」
ウェイターはもちろんそのワインをキューっとまた呑み干した。
ああ、こういう配慮の仕方もあるのだなぁっと徳田は思いながら、また白ワインをウェイターに注いだ。
「先生、ところで英語でああいう場合はどう言うのかな?」
「『熱っ!』ですか?」
徳田は凍傷になりそうということになっている白ワインに手を伸ばした。すっかり寛いで上のシャツは脱いでいる。
「そう。ホット! とは言わないでしょ?」
「言わないですね。Ouch! です」
「? “Ouch!” って『痛い!』ってことじゃないの?」
「いや、“Ouch!” は急な痛みの全般に使うんですよ。『痛い!』ってときも、『熱っ!』ってときも、『冷たっ!』ってときも一緒です」
「へぇ。おおざっぱなんだな英語って」
「痛みに関してはそうですね。“Ouch!” の一つで片づけてしまいます」
「ふ~ん」
男はそう言うと興味を失ったようだった。
なぜかを説明しなければならないかと身構えていた徳田はほっとする。こういう場所で堅い話をするのはそぐわないし、目立ちすぎるのはアウェイではよくないのだ。「ふ~ん」というのも、それを見越したこの役員一流の配慮なのだった。
まぁ、こういうことがあったんですが、こういう深い配慮がそこここにある世界というのは、本当に素晴らしいことで日本の良いところだと思うんですが、ここで話を止めてしまってはみなさんに怒られる(笑) さすがに、このエッセイでは、理由を説明せねばなりますまい。
理由を知りたい方は、購入してね。
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