Excuse me. 「英語のそこのところ」第121回
【前書き】
今回、投稿するエッセイは7年前の2016年11月10日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
Excuse me というのは、日本人もよく使う言い回しで「失礼しました」と訳されていますが、実は微妙に違うようです。Native English Speakerと話していてそんなことに気づいたというお噺です。(著者)
拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。
2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。
映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル12」発売中!
English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
ですが、この「ドリル12」では趣向を変えて、地震に遭遇した際に困っているNative English Speakerを助ける言い回しを英語にしていきます。
Native English Speakerの多くは地震を経験したことがなく、震度2の地震でも慌てふためいて、意味もなく部屋をうろうろしたりします(実体験)。
そんなNative English Speakerたちをちょっとでも助けられたらなと思って作ったドリルです。
覚悟して!(心の準備をして)*緊急地震速報がなった時に
(揺れを感じながら)地震が来た。
大きいな、棚から離れていよう。
やばい! まだ揺れています。
落ち着いて。この建物は充分に安全だから。
などは、英語でどう言うのでしょうか?
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。
大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ
English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。
著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。
7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。
ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。
実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。
ひとつ目は、能動的な学習だということ。
English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。
ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。
たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。
みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。
具体的には、
私は彼が来るだろうことを知っていた。
という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、
I knew that he will come.
と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、
I knew that he would come.
という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。
☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。
【本文】
今年は2016年ですから早いもので、私が英会話スクールのVice-president を辞して5年ほど経つ計算になります。辞めた直後はどうしようかなぁっと思いましてね。辞めた原因はそれまでの会社の方針を根本的に変えるっていうスタッフと社長の決定についていけなくなったことだったんですが、かといってねぇ、それまでやっていたのと同じスタイルの英会話の会社をやるのは道義に反する。まぁ、のんびり考えるかと思って、取引先とかお世話になった方々に辞職の挨拶廻りをしたら、よく言われたのは、
「現場のノウハウ持ってんだから、同じような会社、立ち上げちゃいなさいよ」
とか、
「私といっしょに、そういう会社、始めてもらえませんか?」
とか、そんなことばかりで、いやはやまったくもってキャピタリズム社会というか生き馬の目を抜くというか、儲けるのに「道義」は必要ないんだなぁと感じ入ったものでした。
どうも私はそのあたりが古い人間のようで、どうしても筋を通すことを気にしちゃう。もちろん、丁重にお断りさせていただいて、ついでにそれまでのNative English Speakerたちとは仕事をしないようにして、友人づきあいだけにしておいた。仕事して、お金のやり取りが始まっちゃうと結局、同じような仕事を始めることになりますからね。ずるずると筋が通らないことになってしまうのはなおさら良くないんで。
でも、5年もたつと状況は変わってきていて、あとは卒業した受講生からもいろんなお声をいただいたりしていて、そろそろNative English Speakerといっしょに仕事をやろうかなと思っています。もちろん、以前との英会話スクールとは違う形です。私は今の企業様の英語アドヴァイザーや英会話・英語指導、それにこういったエッセイを書く仕事を愉しんでやらせていただいていますからね。手放すつもりはありません(笑)
そういうわけで、新規事業のために最近はNative English Speakerと会議して、ながれで食事することも多いんですが、この間Native English Speakerの家の近くの定食屋でこんなことがありました。
「は~い、こちらハンバーグ定食で、こちらカツ丼ね」
「ありがとうございます」
常連なのかDickが丁寧にお姉さんに挨拶する。
「あはは、サンキューベリマッチよ」
いかにも肝っ玉姉さんという感じの女性がオッケーサインを出して答えた。
「下町だねぇ」
「うん」
「でも、意外。Dickは東京の西が好きだと思ってたよ」
「そうだねぇ、渋谷、六本木も好きだけど、前の会社が茅場町だったから」
「ああ、なるほど」
徳田は頷いた。職場の近くに部屋を借りたら下町だったというわけだ。
「おれは好きだけどね。このあたりは」
「うん、おれもいいと思う。潮の香りもするし」
「たしかに」
風向きによっては、新宿や池袋ではしない潮の香りが感じられる。東京湾の海もだいぶ綺麗になったものだ。
「Dickって、港町出身だっけ?」
「おれは……」
そうDickがいいかけたとき、ガシャンっという大きな音が店に響いた。びくっとDickと徳田が音のした厨房に目をやる。
「失礼しましたぁ!」
厨房の奥のコック帽をかぶった男性がこちらを見てすかさず謝った。厨房の食器を落としたらしい。
徳田は何事もなかったように、Dickに視線を戻した。と、目を丸くしたDickの視線にぶつかる。
「ねぇ、徳さん、いまの何?」
「え? なにって?」
「なぜ、彼は謝ったんだい?」
「謝る?」
「だって、Excuse me. って言ってたんだろ?」
一瞬、徳田はその英語でいいのかと考える。責任をとらなくていいわけだから、Excuse me. か、間違ってない。
「そうだね。謝ったというか、軽い謝罪だね」
「で、なんで、誰に謝罪したの?」
今の「失礼しました」が相当不思議だったのかDickは食い下がる。
「大きな音を立ててしまって『失礼しました』ってことだよ。もうちょっというと、会話の邪魔をして、驚かせてしまって失礼しましたって意味で、お客さんに謝ってるってこと」
「会話の邪魔?」
ぷっとDickが笑い出す。
「だって、ここ、気軽な定食屋だよ。みんな大声で話してるんだから、お互いさまじゃん! 高級レストランならまだしも!」
「え? アメリカでは言わないの?」
「言わないよ! そんなことでExcuse me! だなんて。高級なところで、皿を落として誰かが怪我したなんて場合は、騒ぎを起こしたことをお客に謝罪するかもしれないけど、こういうところでは謝らない、謝らない」
Dickは笑いながら手を顔の前で振ってこたえる。異文化体験が面白いらしい。
「今度ステーツの連中に言ってやろ。日本人はこんなにやさしい人たちなんだって」
徳田は苦笑いする。やさしいってわけじゃないんだけどねぇという苦笑いだった。
確かに、大きなもの音を立てた場合の「失礼しました」は日本人のやさしさとも言えると思いますが、どちらかというとこの「失礼しました」は「人に迷惑をかけて申し訳ない」ということが基本にあるのだろうなぁ と私は思います。いわゆる「自分の外に正しさがある」ので、「外の正しさ」に迷惑をかけたこと自体を謝らないといけないと思っているわけです。
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