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にてるけど、どこか違う「英語のそこのところ」第152回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2018年1月18日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 アメリカ人は、sorry とは滅多に言いませんが、イギリス人は結構言います。私はイギリス人のsorry を日本人のすいません と同じものと思っていたのですが、ちょっと違うようです。(著者)

最新刊「新宿英語嫌い物語」発売開始!

英語嫌いだった私の英語・英会話マスターへの道 
VERSANT スコアアップ法を大公開

 英語なんて好きでもないし、得意でもない。ていうか、むしろ嫌い。でも、仕事で英語を教えなきゃならなくなった! さあ、こまったぞ、どうする? 
これは作者の15年にわたる英語との格闘をギュッと濃縮した英語スキルアップ物語。
英語・英会話習得、VERSANTスコアアップの詳しいやり方、学習期間がわかって、ふつふつとやる気が湧いてきます。

拙著「英語の国の兵衛門」のペーパバック版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle とペーパバックで復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル24」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
 この「ドリル24」では星新一の「おーい、でてこーい」と「きまぐれロボット」を題材に英文を作っていきます。英文を作ってみたあと、ぜひ「ぼっこちゃん」と「きまぐれロボット」を購入してください。名作ですよ。

「おーい、でてこーい」
彼は勢いよく石を投げ込んだ。
村人たちはちょっと心配したが、数千年は絶対に地上に害は出ないと説明され、また、利益の配分をもらうことで、なっとくした。(おーい、でてこーい)

これで、ゆっくり休みが楽しめる。手紙や書類は観なくてすむし、電話もかかってこない。まず、ビールでも呑むとするか。
これは、うまい。さすがは、優秀なロボットというだけのことはある。
しかし、二日ほどすると、様子が少しおかしくなってきた。ふいに、ロボットが動かなくなったのだ。(きまぐれロボット)

英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

【本文】

 あっという間に今日は1月の18日、気がつけば今年も3週間ほど過ぎようとしています。みなさん、1月のスタートダッシュは決められましたか? 仕事に、プライベートに、スキルアップにと生活のリズムを取り戻されてきた時期ではないかと思います。
 そう言う私自身は、年末休みも正月休みというものもなく、いつも通りに仕事をさせていただいていたりします。まぁ、節目みたいなものが世間様とはずれていること甚だしい。法人関係のお仕事は多少なくなるんですが、英会話の個別レッスンなどは受講生次第でして、大晦日だろうが、元旦だろうが、相手のご希望があれば馳せ参じる(とはいっても、ネットの中をですけど)。みなさんの熱意には頭が下がりますし、気合が入る。元来、怠け者なんですが、好きなことしか仕事にしてませんからね。休んでるよりも愉しいわけで、ありがたいことです。あとは原稿書きもありますし、これまた愉しい。結局、いつも通りに仕事をしているわけです。

 でも、そうは言っても、まったく正月らしいことをしてないわけではなくて、人並みに初詣ぐらいは行く。ご存じの方もおられると思いますが、昨年ぐらいから昔、私のスタッフだったNative English speaker たちとの交流も復活しているんで、今年は浅草寺にお参りに彼らと行ってきました。Two Americansとan English man と私の日英米の三ヵ国混成部隊です。

「おお、これはこれは、戦争だね」
 あちこちで警官の警笛が鳴り、ハンドマイクを通した指示が仲見世通りに響く。
<はい、無理しないでください。列はここまでです。次の回を待ってください>
「徳さん、あれはなに言ってるの?」
 金髪碧眼の綺麗な美人(美人に綺麗を重ねるほどきれいってことです)のCatherineが徳田に訊ねる。
「ああ、あれは境内に入る人を制限してるのさ。多すぎると圧迫事故や将棋倒しが起こってけが人が出るからね」
「いやねぇ、日本人は。なんでそんなにまでして群れたがるのかしら」
 久しぶりに会ったがCatherineの率直な意見は健在だ。悪意のないストレートな物言いが心地よい。
「それが日本人のいいところなのさ。こんな混雑の中でも、ケンカが起こらないのは驚きだよ」
 これはRichだ。English man のRichの目線は日本人に肯定的だった。
「そう。人に迷惑をかけないようにするのが日本人の特性だからね。混乱は起きない」
 徳田がそういうと、相変わらず雄大な腹をしたDidoがとなりで頷く。
「アメリカでこんな人混みが作られたら大変だよ。誰かが絶対発砲する」
 苦笑しながら三人は強くうなずいた。
「でも、この人波に入っていくのはちょっとぞっとしないけどね。サーフボードでも持ってくればよかったよ。波乗りで境内にインだ」
 いや、サーフボードがあってもその体重は誰も支えられない。
 さっと三人の顔にその言葉が浮かんだが、流石にCatherineもそれは口にしない。
「さて、ここにいてもお参りできないからね。一丁ダイヴとまいりますかぁ」
 雷門前の歩行者天国に陣取っていた三ヵ国混成部隊は徳田の言葉に意を決して歩き出した。

「いやぁ、まいった。お参りするまで1時間もかかったよ!」
「クレージーだね」
「髪が痛んじゃうわよ。こんな寒空の下、歩かされたんじゃ」
 お参りをすませて、本堂のわきの流れた四人は境内の露店のおでん屋に腰を落ち着けていた。
 口々に不満は言っているが、顔は愉しそうだ。久しぶりに気の置けない友人と日本の風情を愉しんでいる。
「は~い、おでん一通りと外人さんたちのビールね。こちらはお兄さんの熱燗」
 歳の行ったお姉さんが、頼んだ食べ物と飲み物を置いていく。
「寒い中のおでんは堪えられないねぇ」
 Didoが竹輪を器用に箸でつまむとタップリ辛子をつけて口に運んだ。ハフハフとまるで日本人のように口の中でおでんを冷ましながら、一番搾りをキューっと呑む。
「だんだんとDidoも日本人化してんなぁ」
「おれも長いからなぁ。もう十八年だよ」
「そうかぁ、じゃぁ、日本が第二の故郷だね」
「そうだなぁ、でも、いまだに『外人』って言われるのはムッとするけどね」
 さりげなくDidoに給仕してくれたお姉さんに視線をやって怖いことを言う。正月早々波乱を起こそうとでもいうのか。
「まぁ、いいじゃない。おれたちに強制する権利はないよ」
 と、Rich。
「そりゃ、そうだが。でも、ムッとはする。Richもするだろ?」
「まぁ、することはするけどね。気にしないさ」
 Richも一番搾りのプルトップを引き開けてぐびりと一口呑んだ。
 この寒い中よく冷えたビールを呑むなぁと徳田は感心する。お兄さんと呼ばれはしても、もうおっさんの徳田は熱燗だ。コップ酒をちびちびやっている。
「そう言う弱腰なところが、English man だよなぁ。Richは」
「弱腰?」
「さっきの人込みの中でも、人にぶつかってずいぶん”I’m sorry.” って言ってたじゃない。自分が悪くもないのに謝る」
 良いリクリエーションを見つけたDidoが冗談半分にRichに絡んだ。
「Didoだって、”Excuse me.” って言ってたろ?」
「”Excuse me.” は、おれの我儘を通すことを許せ、だからいいんだよ。”I’m sorry.” は、責任をとる謝罪だからな。おれは言わない」
 二人の話を聞きながらCatherineもビールを呑み始めた。男たちの話に加わるつもりはないらしい。Catherineもまた器用に箸を使っておでんを食べる。
「まぁ、確かにね。でも、そう言った方がケンカにならない。England では”I’m sorry.” っていつも言うのさ。紳士はケンカをしないってわけ」
「げ~、でたよ。Gentleman が」
「なに言ってんだか、なんでも腕力で解決しようとする野蛮人よりはましさ。ほら、同じく歴史ある洗練された日本人も『すみません』って言うだろ」
 水を向けられた徳田がうなずく。

「そうだね。確かに言うけど」
 徳田は違和感を覚えたのか首をかしげた。その隣でCatherineが追加のビールを頼む。エンジンがかかったようだ。
「Rich、確認だけどEnglish people は責任をとるつもりで”I’m sorry.” って言ってんのかな?」
「もちろんさ。秩序と礼節を守るEnglish people はウソをつかない。武士に二言はないのと同じだよ」
「それだと、ちょっと違う気がするな。日本人の『すいません』は『申し訳ない』『残念だ』って思ってる表明だからね。責任までは取る気がない」
「ええ!」
 DidoとRichが素っ頓狂な声を上げる。
「じゃぁ、ぶつかった相手が弁償しろって言ってきたときとかはどうするのさ?」
 Richが不思議そうに訊く。
「そりゃ、逃げるね。それに、ぶつかっただけで弁償しろなんて言ってくるヤツはヤクザか頭がおかしい奴だって思うんだよ、おれたちは」

「う~む」
『すいません』と”I’m sorry.” の間にある大きな違いにDidoとRichは考え込んだ。アメリカ人のDidoはともかくとして、日ごろ日本人とEnglish people は似ていると言っているRichにとっては意外なことだったらしい。
「なんでそういう違いが生まれるんだろうなぁ? 日本人もEnglish people も礼儀正しいから、”I’m sorry.” って言うって思ってたんだけど。Americans と違って」
 Didoが左の眉を上げてRichに答える。
「確かにAmericans と違って礼儀正しいけどね……」
 徳田の言葉に、今度はDidoの右の眉が上がる。

「そんなの簡単ニョウ!」
 徳田の首に突然長い腕が組み付いた。艶っぽく絡みついたのではない、組み付いたのだ。
「あ、Catherine!」
 いつの間にかCatherineの前には大量のビール缶が並んでいる。この短時間で呑み干したらしい。

酔っぱらったCatherineの意見を知りたい方は、購入をお願いします。

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