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ピースの裏には「英語のそこのところ」第148回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2017年11月23日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 カメラを向けられると日本人はよくVサインをしますが、あれ、日本人とそれに影響を受けたアジア人だけの慣習らしいです。なんでVサインなのかな? ということをNative English Speakerを考えた話です。(著者)

最新刊「新宿英語嫌い物語」発売開始!

英語嫌いだった私の英語・英会話マスターへの道 
VERSANT スコアアップ法を大公開

 英語なんて好きでもないし、得意でもない。ていうか、むしろ嫌い。でも、仕事で英語を教えなきゃならなくなった! さあ、こまったぞ、どうする? 
これは作者の15年にわたる英語との格闘をギュッと濃縮した英語スキルアップ物語。
英語・英会話習得、VERSANTスコアアップの詳しいやり方、学習期間がわかって、ふつふつとやる気が湧いてきます。

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル22」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
 この「ドリル22」では名曲World In Unionを題材に英文を作っていきます。英文を作ってみたあと、ぜひ「World In Union」をYou Tube やCDで聞いてください。より意味が深く判って感動します。

一つの夢がある、わたしは、とてもめずらしく価値があって、とても本当だと感じるので(夢なのだけど)。
団結したすべての世界、ひとつとしての世界。
一緒に集まっている、ひとつの精神、ひとつの心。
すべての信経、すべての肌の色、ひとたび手をつなげば(=ひとたび加われば)、決して離れない。

英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

【本文】

 最近は、デジタルカメラが行き渡っていて猫も杓子もあっちでパシャパシャ、こっちでパシャパシャという時代になりました。というか、デジカメ自体も持っていなくて済む。スマートフォンについているカメラ機能で充分。あれでハイビジョン撮影ができるって言うんですから、36枚撮りフィルムをカメラに入れて、一枚一枚大切にシャッターを切っていた時があったと思うと本当に時代は変わったなぁっと思っちゃいます。

 学生のころはいいカメラも買えなかったですから、もっぱら「写ルンです」でしてね。サークルの合宿や新歓の時期には、それを使ってパシャパシャやってました。社会人になってコンタックスのT2を買ったときは、嬉しかったですねぇ。なんといってもコンパクトカメラなのに10万円ぐらいした。でも、ライターをやっていた時にお世話になった出版社の先輩やカメラマンの人にどうせ買うなら、いいもの買った方がいいって言われて(そそのかされて?(笑))清水の舞台から飛び降りるつもりで買いました。

 そんなに違うものかなと思ってたんですが、まったく違う。
「写ルンです」で撮るとべたーっとしたぬり絵みたいな感じになるんですけど、T2で撮ると奥行きが出て肌色もぜんぜん違う。素人目にもわかるものだなと感心したものです。

 ただそのころ撮っていたものは、残念ながらカノジョの写真とかじゃない( ;∀;)
 会社の宣伝のための写真です。私が新卒で就職したのは国立私立中高専門の進学塾でして、授業風景や講師の写真、あと卒業イベントの写真を撮っていました。ああ、そうそう、父母と講師のゴルフコンペなんかもやってましたから、そのときも駆り出されてた。バブルも弾けてましたから会社のパンフレットもコスト削減だったんじゃないでしょうか。

 そういうわけで、授業風景をカメラに収めるんですが、入社した当初、私は講師管理が業務で授業を持っていなくて、担当の先生に断って教室に入って生徒にカメラを向ける。でも、これがうまく撮れない、というか撮らせてくれない。
 もちろん、私の腕も悪いんですけど、なにより生徒たちが緊張したり恥ずかしがったりして、うつむいたり前の生徒の陰に隠れたりして抵抗してくれるんです。髪の長い女の子なんかはわざと髪を前に垂らしたりしてぜんぜん表情が撮れない(笑) これじゃ仕事にならないんで、一計を案じて生徒たちに席を立ってもらって集合写真をとるように壁に並んでもらう。そうなるとさすがに髪を前に垂らすってことはないんで、こういう生徒たちがいますよ~という写真は撮れていました。
 まぁ、もちろん、出来上がった写真を見た首のないヤクザみたいな社長から、
「おめぇの撮る写真は集合写真ばっかだな。スナップショットみたいなやつは撮れないのか、雰囲気が伝わらねぇだろ」
 と怒られちゃう。でも、かといって盗み撮りするわけにはいきませんしねぇ。苦笑いするしかありません。

 ただいつのころからでしょうかね。簡単にスナップショットが撮れるようになった。私自身はもうそういう撮影する仕事は会社でやってなかったんで、会社の後輩がやっていましたが、カメラを向けると生徒たちが喜んでポーズを作る。おやおや、恥ずかしがらないんだなぁと感心する。
 不思議に思って「恥ずかしくないの?」と訊いてみたことがあるんですが、小学生も中学生もきょとんとして「なんで?」って顔をして、
「写真なんてよく撮られるじゃん」
 とのこと。
 中学生あたりになると、
「写メで撮ったり、プリクラで慣れてるよぉ。徳さん、この前撮ったの見せてあげようか?」
 とくる。
 いや結構、と返事をしながら、デジカメの普及は日本人をカメラ慣れさせちゃったんだなと思ったものです。

「あっ、これもだ」
 この前のハロウィーンの写真の整理をしていたRichが徳田の席の隣でつぶやいた。Richと徳田の勤める英会話スクールでは月一のペースでイベントを開催している。Richは撮影した写真を集めて、ホームページにアップするものを選ぶ作業をしているところだった。
「どうしたのさ?」
 キーボードを打つ手を止めて徳田がRichに尋ねる。
「いや、日本人はVサインが好きだなと思ってさ」
「Vサイン?」
 ピンと来なかったのか、徳田がRichのPCのディスプレイをのぞき込む。
 カメラを向けられた受講生の男女が写っていた。ミッキーにミニーの仮装をして愉しそうにポーズをとっている。

「ああ、ピースサインのことか」
「日本ではピースサインって言うのか。知らなかったな」
「そうだね、おれも詳しくはないけどベトナムの反戦運動あたりからやってるんじゃないかなぁ」
「反戦運動?」
「ほら、Love & Peace ってやつ。やってたじゃん。ジョン・レノンとか」
「ふ~ん、じゃ、これは平和を祈ってるってこと?」
 徳田がうっと言葉に詰まる。
「そういうわけじゃないなぁ」
「じゃぁ、なんでさ?」
 しまった、Richの好奇心に火をつけてしまったようだ。徳田は急いでググるがwebにも明確な答えは出てこない。
「もともとVサインって、チャーチルがドイツの侵略に対抗するために始めたものなんだけどね。まぁ、ジョン・レノンはそれを平和への願いに応用したんだろうけど」
 困っている徳田を見てRichが間を埋めてくれる。
「そうだねぇ」
 徳田は腕を組んで考え込んだが、ピンと来る答えはない。いったいなぜ日本人は写真に写るときピースサインをするのだろう? と悩む。とっかかりがないな、と思った徳田はRichに尋ねていた。
「じゃあ、UKでは写真を撮られる時どうするのさ?」
 立脚点がないときは、比較対象を求めるという徳田の思考回路だった。Richは即答する。考える必要もないことのようだ。
「おれたち? そりゃおれたちは満面の笑みでしょ。それで充分」
「自信満々だな、そりゃ」
 あっという顔をRichがする。同時に、徳田もニヤリとうなずいた。
「ここにも、日本人とNative English speaker の違いだね」
「ああ、間違いない」
 ふたりは強くうなずきあうとそれぞれのPCに向かって仕事を再開していた。

 と、まぁ最後は意地の悪い書き方になりましたが、みなさんはRichと私が気付いたことがお判りになられたでしょうか。長くこのエッセイを読んでいただいている方は「ああ、あれね」と思われるでしょうけど、そうでない方のために蛇足ながら解説しておくと、

蛇足を知りたい方は、購入をお願いします。

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