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第42回 Native English Speakerに ツッコミを(笑)

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2014年9月4日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。日本語と英語でのコミュニケーションの仕方は全然違うものですが、特に違いを感じるのは、会話の盛り上げ方です。海外の講師とのオンライン英会話でなかなか盛り上がらない方、どうぞ参考にしてください。(著者)

【本文】

「どうも、リッチさんとの会話がうまく行かなくて」
「はぁ?」
 徳田は首をかしげた。
 リッチとうまく行かない? 恋愛相談じゃあるまいし、しかも、リッチも目の前の受講生の大森さんも男性だし。もしや、そっちの相談? たしかにリッチはイケ面だが。しかし、そんな相談までは、語学カウンセラーの手に余る。
 と、あらぬ妄想を展開していて、徳田は相手が「会話がうまく行かない」といったことに気づいた。ちょっとほっとする。

 以前私がいた英会話スクールでは、『語学学習カウンセラー』という職種がありました。
『語学学習カウンセラー』ってなに? 営業のこと? と思われるかもしれませんが、これが本当に『語学学習』に関しての様々な事の相談を受け、英会話力向上につなげるという職種で、英文の作り方、リスニング力の上げ方、発音の仕方といったテクニカルな面から、学習習慣の作り方、モチベーション維持のための声がけ、といったメンタル面までフォローするという業務でした。
 幸運なことに、私は多少才能があったようでカウンセラーとして、よくご指名をいただきました。ありがたいことです。
 で、具体的にはどういうことをするかというと、新宿のカウンセリングルームに来てもらって、英語・英会話を習得する目標や、今までの学習に関しての悩みをお聞きする。その上でコンピューターによる口頭英語力診断(VERSANT)を受検していただき、客観的なデータを基に悩みを解消しながら、目標を達成するためのトレーニングを指導させていただくというものです。
 そして、3ヵ月たったら、もう一度診断を受けていただいて成果を見る。そこで、伸長が見られなければ何が問題なのかを探り、伸長していればOK。このままさらに行きましょう! という具合です。

「リッチさんとの会話がうまく行かなくて」
 と仰った大森様は2回目のカウンセリングで、きちんとトレーニングについてきていただいたので、口頭英語力診断の結果もばっちり、突っかかり突っかかりでしか話せなかったレベルから、使える言い回しも増え、海外に一人旅は楽に出来るレベルになっておられました。決して意志の疎通が出来ないレベルではありません。

「うまくいってないって言うか」
 徳田の待ちの姿勢に、大森が言葉を継ぐ。
「前回言われたみたいに、リッチさんとの共通項を見つけて話は盛り上がるんですよ。サッカーが共通項だって判ったし、僕もだんだん聞き取れるようになって、リッチの話に返すことも出来るようになってるんです。でも……」
「でも?」
 徳田は相槌を打って話を促した。
「でも、なんていえばいいのかなぁ。いまいち、表面的というか、リッチがノって来てくれないのが判るんですよ」
「たとえばどんな話の流れで?」
 徳田は、大森の話をより具体的に聞くことにした。

 以前も(第18回)お話しましたが、英会話を始めてある程度意志の疎通ができるようになってくるとNative English Speakerとの壁を感じてしまうというご相談はよく受けます。その際は『この点に関しては同じ』というものを見つけましょうとまず申し上げるんですが、この大森さんの場合はもう一歩踏み込んだお悩みのようでした。

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