SSS(全国大学生満足度調査®)コラムVol.9 : 「推奨」を把握する意味とは?
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これまでのコラムでは多角的な視点で「満足度」の分析を行ってきました。
今回は、自学を周りの人にどの程度薦めたいかという「他者推奨」と「満足度」の関係を見ていきましょう。
マーケティングの世界では、他者推奨に関して「顧客推奨度」を意味する「NPS(Net Promoter Score)」という指標が使われることが多いです。NPSは「商品やサービスを親しい人にどの程度お薦めしますか」という質問を通じて回答を取得し、値を算出します。
推奨するという行動には、推奨した相手への責任が伴うため、本音が表れやすく、NPSは顧客の実態を知る重要な項目の1つと言われており、CS調査などで取り入れられることが多いです。満足度に比べ、長期的な満足度やロイヤルティを測る指標として活用されています。
大学の世界においても、大学生活の様々な場面で学生に“よい体験”を提供することで、在学生満足度が向上し、結果として推奨度も向上。周りの関係者(保護者・高校教師・塾講師など)に良好な口コミとして伝わることで、志願者が増え、教育の質が高まり、大学経営の上昇スパイラルに繋がります。
大学の「推奨」と「満足度」の定量的な関係とは?
では、具体的にどのような定量的な関係があるのでしょうか?
SSSでは、推奨に関して次のように聴取しました。
Q.あなたの通っている大学に進学したいと考えている高校生がいたら、進学を薦めたいと思いますか?最も近いものをお答えください。
A.薦めたい/やや薦めたい/どちらともいえない/あまり薦めたくない/進めたくない
ここでは、
「薦めたい」「やや薦めたい」との回答を合算して、「薦めたい・計」
「薦めたくない」「あまり薦めたくない」との回答を合算して、「薦めたくない・計」として、それぞれの満足度の違いを分析します。
「薦めたい・計」人の満足度が93%に対し、「薦めたくない・計」人の満足度が26%と大きく差が開きました。「推奨」と「満足度」の相関係数も0.67と、“十分相関がある”といえる結果となりました。
推奨度の高い学生の傾向とは?
では、どのような学生が推奨度の高い傾向があるのでしょうか?
「性別」「学年」「大学種別」「学生数(大学規模)」の4つの視点で推奨度の違いを分析します。
■性別
男性に比べ、女性の方が6ptほど推奨度が高くなっています。
■学年
1年生が最も高く、3年生が最も低くなっています。調査が2023年2‐3月というタイミングだったこともあり、学生時代の大半をコロナ禍で過ごしたことも要因の1つの可能性があります。
■大学種別
国立>公立>私立の傾向がみられました。
特に国立では、「薦めたい」が31%と公立・私立に比べ、10pt高くなっています。
■学生数(大学規模)
学生数が多いほど、推奨度が高い傾向がみられました。
今回は4つの視点で明らかにしてきましたが、「大学の所在地」など別視点や、「大学種別」×「学生数」等の2軸でも結果を把握することが可能です。
「推奨」と「個別満足度」の関係とは?
では、どのような観点が推奨に繋がっているのか、推奨度と関係性が大きい項目を把握するため、35項目の個別満足度との関係を、相関係数の値を通じて見ていきます。
「推奨度」との相関が強い順(値は相関係数)
1位:好きな分野の学びを深められる:0.47
2位:授業のレベルが自分に合っているか:0.46
3位:幅広い分野のことが学べる:0.45
~
33位:インターネット環境:0.36
34位:外国人(留学生)との交流:0.35
35位:お手洗い・パウダールーム:0.35
全体的に総合満足度(0.67)ほど推奨度との相関係数は高くなく、一定の正の相関が認められる結果となりました。特に「学び」や「就職サポート」などに通じるソフト面がやや高くなり「設備」のハード面はやや低い傾向となりました。学業関連の満足度を上げることで学生に“よい体験”としてインプットされ高い推奨に繋がる可能性があります。
当然、大学によって学生の期待している分野も大きく異なるため、自学の学生が「求めていること(期待度)」「評価していること(満足度)」「重視していること(重視度)」の把握も必要です。そのうえで「推奨」という評価指標を加え、大学経営の上昇スパイラルに繋げていきましょう。