SSS(全国大学生満足度調査®)コラムVol.4「自学の調査結果だけで満足していませんか?」
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様々なステータスで聴取されている自学調査
10年前と比較すると、入学時、在学時、卒業時など様々なステータスで、学生に調査・ヒアリングし、自学の状況を把握している大学は確実に増加しています。
多くの大学では下記のような調査が多く実施されています。
■新入生調査
入学に当たって重視した情報や入学前の学習状況、入学時における能力についての自己評価など。
■在学生調査
自学の教育活動や学生支援、施設設備などに対する満足度、自己の修学状況、自己能力・知識の伸長度など。
■卒業時調査
卒業を控える在学生を対象に、大学で習得した知識・能力の実感値、教育プログラムへの満足度、卒業時の大学への評価など。
また、社会人になった卒業生に対し、自学を俯瞰的に評価する調査や、卒業生を採用した企業へ自学の学生の評価を聴取する調査を実施している大学も増加しています(私学においては、「私立大学等改革総合支援事業」による影響もありますが)。
ただ、これらの調査を定点的に実施し、各項目の数値の昇降を経年で追いかける。さらにそこからみえてくる傾向を基に、自学経営やブランディングに資する施策の検討に活かしている大学はまだまだ少ないように感じています。
自学調査から具体的なアクションプランを検討できていますか?
これらの調査は、確かに自学の在学生(または卒業生)の声を収集しているのは事実ですが、コラムVol.3「在学生満足度の“基準”とは?」で触れたように、満足度として表れる数値の背景には、様々な属性の学生の声があり、それらの変数を考慮する必要があります。
実際に、弊社が全国を対象に行った在学生満足度調査(有効回答:13,081名)では、学部系統で満足度が異なる結果がみられました。
この結果は、コラムVol.2で少しご紹介した35項目にわたる個別満足度を聴取した一例ですが、この例のように満足度に起因する要素・項目を理解することが重要である、と私たちは考えています。
自学全体の総合的な満足度を目安にするのではなく、学部や学科、年次など個別に満足度をみていくことで、学部間の格差低減や自学ならではの強み強化、一方で課題に対するアクションプランの導出につながると考えます。
35項目の内訳
・大学設備に関する項目(「インターネット環境」「食堂・カフェテリア」など7項目)
・学生サポートに関する項目(「先輩・後輩との交流」「クラブやサークル、同好会の充実」など14項目)
・教育サポートに項目(「グローバルな学び」「少人数教育の体制」など14項目)
満足度向上には、相対的な評価が必須
さらに、これら満足度と関連性の高い要素・項目が、競合などの他学に比べ優っているか劣っているか比較してみることが何より重要です。自学だけの絶対評価ばかりを参照していては、大学運営に資するどころか害するアクションプランになりかねません。
例えば、教育サポートに対する満足度を聴取した自学調査の結果が、
・少人数教育の体制 75パーセント
・ハイブリッド型の講義(対面とオンラインの両立) 72パーセント
・実践的な授業 65パーセント
であったとします。
この場合、最も満足度が低かった「実践的な授業」の改善を検討することと思います。しかし、同じ項目を他学の在学生に聴取した場合の結果が、
・少人数教育の体制 85パーセント
・ハイブリッド型の講義(対面とオンラインの両立) 70パーセント
・実践的な授業 60パーセント
である場合、自学で低かった「実践的な授業」は、他学を上回っている一方、自学で最も満足度が高かった「少人数教育の体制」は他学より低い結果になっています。さて「実践的な授業」の改善を最優先に図るべきでしょうか?
自学で実施する満足度調査はあくまで絶対評価です。少子化が加速するこれからの時代において、競合大学との差別化は、生き残りをかけた大切な取り組みになるでしょう。そのためには相対的な評価を基に「劣っている」項目を軽減していくことが肝要です。
例えば下図のように、競合をはじめとする他大学と比較することで、自学の強みや課題を見える化することができます。
この図は、在学生の期待度と満足度の度合いにより、自学が在学生に提供している要素(項目)を4つに分類したものです。
期待度が高く満足度が高いオレンジに分類された要素(項目)は、貴学の強みを表しており、この要素(項目)をさらに伸ばしていくことで、競合大学に大きな差を広げていけるでしょう。一方、期待度が高い割に満足度が低いレッドに分類される要素(項目)は、最優先に改善しなければいけない事柄です。この図に自学と他学の結果を反映することで、伸びしろや最優先課題が明確化でき、今後の大学経営の戦略構築への糸口になるはずです。
つまり、他学の追随を許さず、誰の目にも明らかな強みがあるならともかく、差別化が難しい状況であるならば、自学だけの調査結果では読み取れない課題を、他学との相対評価を基に明らかにして「負けない戦い方」に取り組んでみることが重要なのではないでしょうか。