レストランでの顧客体験を高める、決済サービスSunday
先日ご紹介したワクチン・パスポート導入のおかげもあり、フランスでは街に人が戻り、レストランも賑やかになってきました。レストランでは、日本ではそこまで困らない注文や会計も、フランスでは時間がかかることがしばしば。テーブル担当のウェイターを呼ぶために手を少し挙げてアイコンタクトをしても、忙しいとなかなか気づいてもらえなかったりして、食事を終えてから店を出るまで一苦労、なんてこともよくあります。
今回は、そんなフランスで最近拡大中の、レストランにおける便利で素早い支払いサービスを提供しているSundayを紹介します。
Big Mammaグループのスピンオフ企業として米国で創業されたSundayは、今年9月にシリーズAで1億ドルもの資金を調達し、話題を集めました。Big Mammaはフランスで10店舗以上のイタリアンレストランを立ち上げた企業で、お手頃価格で美味しいイタリアンが楽しめることでパリの若者に大人気です。系列のレストランでSundayの決済サービスが使えるということを聞いて、実際に行ってきました。
10月のとある夜、友人と訪れたのはパリ11区にあるレストラン「East Mamma」。ウェイターは私達をテーブルに案内した後、テーブルに置かれていたQRコードを指差し、スマホでスキャンしてメニューを見るようにと教えてくれました。また、食事が終わったらSundayアプリを使って会計もできるからね、と簡単に説明してくれました。
最近では、紙のメニューではなくスマホ上でメニューが見れるお店が増えていて、感染対策や印刷コスト削減にも繋がるとても良い変化だと感じていましたが、支払いまで同じアプリ上で出来るというのがSundayの魅力です。
アプリ上でも注文をすることは可能ですが、今回はウェイターに直接注文を伝えました。なんと、各テーブルのQRコードはレジと連動していて、Sundayアプリ上でも自分達の注文内容や金額をリアルタイムで確認することができます。
食事を美味しく頂き、いよいよ支払いへ。注文内容を確認したアプリ画面から、案内にしたがって決済を済ませます。誰か一人が総額を支払っても良いし、友達と割り勘して支払うこともできます。その際、会計を均等に分けることも、一人一人金額を変更することもできるので、シーンによって使い分けができとても便利です。ウェイターへのチップも必要に応じて追加できます。パリでの現状の支払い方法は、Apple Pay(iOS)かクレジットカードの二種類でした。
支払いが完了すると、Sundayアプリ経由で支払い完了のメッセージが届き、ウェイターのデスクにも通知され、いつでもテーブルを離れることができるという仕組みです。フランスのレストランでは支払いに時間がかかることは日常茶飯事で、待たされるのことに慣れている人も多いでしょう。でもこのサービスがあれば、効率よくスムーズに支払いを終わらせることが出来ます。これは従業員や顧客にとって手間が省けるというメリットだけでなく、実際にこの支払い方法を提供することでレストランで平均15分の待ち時間が短縮され、テーブルの回転率が向上したという実証結果も証明されているそうです。
高級レストランでは必要のないサービスかもしれませんが、ある程度人で賑わうレストランであればこのサービス導入で売上を上げることができるでしょう。また、月々の利用料や初期セットアップ費用も必要が無く、使用量に応じた処理手数料のみ(手数料はクレジットカードよりも低い場合が多い)で済むという導入の手軽さも経営陣にとっては魅力的です。これらのベネフィットを武器に、Sundayはパンデミック中にも多くのレストランとの契約を進め、21年4月時点でSundayを採用するレストランは1000店以上になりました。
将来的には、個人のSundayアカウントから過去の支払い記録、アレルギーの追跡、お気に入りの支払い方法の登録などのユーザーデータを収集・活用することで、会員向けに新しいサービスを展開するという野心的なロードマップも計画しています。先日のインサイトでご紹介したYukaアプリも含めて、フランスの消費者行動を次々と変容させていく仏スタートアップの動きに、今後も目が離せません。
<参考文献>
・TechCrunch
・TechCrunch