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親友が出産した話

私には親友がいる。
高校1年からの親友だ。なんで仲良くなったかというと、席が隣りだった。


高校の入学式の日、入学の案内に必要なものが「上靴」と書いてあった。
そのほかにはなにも書いていなかった。
16歳の春の私は、中学校ではそれなりにハチャメチャやった為、高校では真面目にやっていこうと思った。
持ち物…上履き!これだけね!オッケー!!
と新しい皮の匂いがする学バン(学生バック)に上履きとグロスだけを入れて入学式に望んだ。
廊下に張り出された自分の教室にドキドキした気持ちで向い、指定された席に座る。
…私からも、ほかの子からのアクションはない…
同じ中学校の友達もおらず、ただただ椅子に座っていたら先生が入ってきて始めてのホームルームが始まった。
興味のない話を聞くことが苦手な私は、窓の外を眺めてセンチメンタルな気持ちでグラウンドの土が風に舞うのを見ているふりをして、今日のお昼の回転寿司は何を食べようか考えていた。
「この紙に記入…」と何かに記入する旨を先生が話している。
急に焦ってきた。
なぜなら、私は上履きとグロスしか持ってきていない。
一応カバンの中を確認してみる。
上履きは履いているので、グロスしか入っていない。
筆記用具は持ってきて当たり前だったのか、見るからにやんちゃな風貌の男の子もギャルもみんな筆記用具でカリカリ書いている音が聞こえる。
もうどうしようもない。隣の子に筆記用具を借りるしかない。
覚悟を決めて「ごめんだけど、筆記用具貸してくれない?」と話しかけた。
………少し待つが反応はない。
聞こえなかったと思い、肩をポンポンと叩き「筆記用具貸してくれない?」再度話しかけてみた。
「え…私!?はい…。。。」と、振ると芯の出るシャープペンを貸してくれた。
「ありがとう!!!」と感謝を述べて、ありがたく私は筆記用具を借りることができた。
入学式や帰りのホームルームが終わり、筆記用具を隣の女の子に返す。
「ありがとう!入学式の案内に上履きしか書いてなかったから、ガチで上履きしか持ってきてないから焦ったよー。」と伝えると、その子は心から驚いた顔をして、引きつった笑顔をしていた。

次の日。
初めての大事な日だ。
携帯は、クラスの子殆ど持ってはいたが、まだまだSNSも普及していない時代だった。
友達もいないため、席に座るしかない。
隣の子を見てみる。誰とも話しておらず、何かを落書きしていた。
話しかけてみようか…どうしようか…。考えているうちにホームルームが始まった。次の休み時間にイヤホンを付けるところを制してやっとの思いで聞いた「何聞いてるの?」答えは「椎名林檎だよ」
最高過ぎた。今日の私が聞いてきたMDは椎名林檎だった。
信じられないくらい話が盛り上がって、すぐアドレス交換した。(当時はまだパカパカ携帯)
その日から、お昼は3年間一緒に食べた。彼氏ができようが私の一番は彼女だった。

毎日が楽しかった。
昔の友達と遊ぶのも楽しかったが、彼女と遊ぶのはひときわ楽しかった。
悪いことなんてしていない。自転車で二人乗りしてレンタルDVDショップへ行き、CDを借りたり、DVDを借りてどちらかの家で見たり聞いたりする。マックへ行って、Lポテトを半分こする。街へ繰り出し、試供品のマニキュアを全部の指に違う色を塗ってみてプリクラを撮ったり。どこにでもある、青春。

そんな楽しい日々を過ごしていた時に、彼女が部活をやめた。
男バスのマネ(男子バスケット部のマネージャー)を行っていた。もちろん理由はスラムダンクの影響だ。
そのマネージャーの一人に同じクラスの女(Aとしよう)がいた。彼女に私はいじめられていた。
いじめ?なのか。嫌がらせを受けていた。
靴がなかったり、大きな声で悪口を言われたり、なんだか仲間外れにしようとしたり。よくある女子高生のいじめだ。
よくあるしょうもないことなので、無視をしていた。
そんな中、彼女は私がいじめられている事実に全く気が付いていないのだ。
仲間外れにしようと、彼女を取り込もうとAが話しかけたり、なんやかんやしているが彼女も私といたほうが面白いと思ったのか必ず私のそばにいてくれた。一度話したこともある。「学校では一緒にいないほうがいいかも。いじめられちゃうかもよ」と。彼女は、「全然大丈夫!楽しいしそんなことされないよ」と言ってくれた。
そんな中、彼女をいじめるとAが言ってるのを小耳にはさんだ。
絶対に許してはいけない。
自分の為には何もしたくないが、彼女の為なら別だった。
すぐに自分の席を離れて、Aをトイレに呼び出した。
何かしらギャーギャー騒いでいたが、こういう時は先手必勝なのだ。
Aの横の壁を蹴り、「彼女に何するって言ってた?黙っていたら調子に乗りやがって。お前が格下だから構ってないだけなんだよ!」と言うと答えにならないことをまたぎゃーぎゃー騒いでいたので、足をどけずに顔を近づけ「彼女になんかしたら殺すからね。まじで。やり返すなら集団でもなんでもかかって来いよ。」と言って、同じ高校の中学の時の同級生たちのところに行った。「久しぶりに怒っちゃってさー。呼び出しかけちゃった。だって、今仲良くしてる子いじめるって言ってきてさ。集団できたら力貸してくれる?」と念には念をのお願いだ。みんな力と時間が有り余っていたので、まずはAの確認にすぐに来てくれた。「どの子?あいつ?いじめられそうなのは?あの子ね!おーい!」と男子はいかついラグビー部の子、女子はめちゃくちゃギャルの子が彼女に話しかけたりして、クラスの空気が一気に変わった。
Aはもともと嫌われていたのか、そのあといじめられて学校をやめた。
手のひらを返したように、彼女と私の周りに人が来たが、私は彼女がいればいいので二人で過ごすことのほうが多かった。
彼女がいたから、頑張れた。私の恩人だ。

ほかの思い出は、また話すことにしてそんな青春時代の恩人でもある彼女が子供を産んだ。
本当にうれしい。心の底からおめでとうだ。
また新しい遊び方ができる。

大好きな彼女の子供。
この世界へようこそ。いやなこともあるけど、きっと楽しいことのほうが多い。まだ見ぬあなたをもう大好きなんだ。
これから、楽しい思い出をたくさん作ろうね。
世界はきっと美しい。


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