英語リスニングにとって英熟語学習はどう進めるべきか? 記憶学習が必須だが、音声付きの良い英熟語教材が少ないと言う問題があります。
大学受験の英語試験に向けて英熟語の勉強をした人も多いと思います。
英語リスニング力向上のために英熟語学習をどう進めるべきか解説したいと思います。
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英熟語とは
英熟語は、日本の英語教育における用語で、複数の英単語で構成され、ある特定の意味に慣用的に使用される語彙を指します。
入試英語対策で、英熟語集を購入して勉強した人も多いと思います。
日本の英語教育における英文和訳では、英単語に1つ1つ日本語の意味をあてはめることが基本となっていますが、そのような逐語訳では和訳しにくい表現を英熟語としてまとまった意味を充てることで効率よく英文和訳ができると言う役割があります。
英熟語は、学校英語教育と深くかかわり、多くの日本人には非常になじみのある用語ですが、英語学における学問的分類とはずれがあります。
英語学の観点からは、英熟語の中には以下のようなカテゴリーが含まれています。
〇イディオム(idiom)
複数の単語が連結して別の意味になる表現
⇒オックスフォード辞典では、例示として “Let the cat out of the bag” 「猫を袋から出して」という表現は「誤って秘密を告げる」という意味のイディオムであると説明されています。
〇句動詞(phrasal verb)
動詞に副詞や前置詞が連なって、文法的に1つの動詞と同様にふるまう表現
⇒オックスフォード辞典では 例示として ”go in for” が句動詞だと説明されています。
“I can’t go in for the idea.”(私はその考えに賛成できない)
〇コロケーション(collocation)
複数の単語からなるが、まとまった形で単語と同様に用いられる言語表現
⇒オックスフォード辞典では、例示として “Resounding success”(大成功)や “crying shame”(非常に残念なこと)がコロケーションであると説明されています。
⇒別の説明では、「強い風」は英語では”strong wind” が適切な表現で、 “heavy wind” は不自然な表現とされます。これに対して「強い雨」は ”heavy rain” が適切な表現で、 ”strong rain” は不自然な表現というのがコロケーションであると説明されています。
学習すべき英熟語の数
イディオム、句動詞、コロケーションなど多様な英単語群を含んでいる英熟語ですが、どれくらいの数があるのかを調べてみました。
【大学受験向けの英熟語集】
まず大学受験向けの英熟語集ですが、1000個くらいの数を掲載しています。
大学入試の英語問題分析したものなので、これくらいの数を記憶すると大学受験ではOKなようです。
【TOEIC・英検向けの英熟語】
TOEIC900点台や英検1級狙いとなると4,000~5,000個は記憶する必要があるようです。
【イディオム(idiom)】
「英和イディオム完全対訳辞典」では2万個のイディオムを搭載し、「クラウン英語イディオム辞典」では収録項目数約6万3千のイディオムを搭載していて、類書中最大だそうです。
「クラウン英語イディオム辞典」は最大級で、「英和イディオム完全対訳辞典」は学習用の参考書なので、英語学習用のイディオムとしては最大で2万個くらいな感じです。
【句動詞(phrasal verb)】
「動詞を使いこなすための英和活用辞典」では1万個の句動詞が搭載され、「現代米語動詞句辞典」 はおよそ1万2千個の句動詞が収録されていますので、英語学習用としては最大1万個くらいの句動詞があるものと想定されます。
【コロケーション(collocation) 】
「プログレッシブ 英語コロケーション辞典」では、コーパスに基づいて2,500の基本語と19,000のコロケーション、応用しやすい用例1万例を収録し、「小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典」では、見出し項目約2,500、コロケーション数約14万5,000で、最大級の英語コロケーション辞典だそうです。
英語学習用としては、コロケーション用例1万個くらいが限界かという気がします。
ということで、英語学習用としては、イディオム1万個、句動詞1万個、コロケーション1万個で、重複が想定されますので、単純に足し算する訳にはいきませんが、英語学習としての英熟語数としては2万個くらいが最大数なような気がします。
40歳代の教養人の英米人が知っている英単語数が3万個程度と言われていますので、それに英熟語が2万個が加わると、なかなか日本人英語学習者がこのレベルの語彙力に到達するのはかなり厳しいものがあります。
大学受験向けの英熟語の1,000語や、TOEIC900点台・英検1級狙いの4千~5千語というのは、試験対策としての英熟語数としてカバーしているのでしょうけれども、大人の英米人の教養人の英熟語力にははるかに届いていないことになります。
これでは、TED Talksなどの英語プレゼンテーションや米国映画・テレビドラマを英語のみ字幕なしで視聴するのは難しいのも当然と言えます。
筆者は「英和イディオム完全対訳辞典」では2万個のイディオムを数カ月かけて全部目を通しました。
英単語を3万5千個全部に目を通したときは、こんな英単語は覚える必要もないし、絶対覚えられないとネガティブな気分になりました。
これに対して、イディオムは、動詞+前置詞などで比較的なじみのある表現が多く出てくるので、こんな表現もあるんだという面白さがあり、英熟語の方が英単語よりも記憶学習のモチベーションが維持できるものがありました。
「英語フレーズ4000」という書籍は、米国映画・テレビドラマでよく見聞きするような、イディオム・句動詞・コロケーションなどが4000個と手ごろな数の英熟語が収録されており、例文も豊富で記憶学習もしやすいものがあり、この書籍から英熟語力のパワーアップに着手するのが良いと思います。
英語リスニングにとって英熟語学習
【英語音声に認識力】
米国映画・テレビドラマを英語のみ字幕なしで視聴した場合、単なる音の流れとしか聞こえず、1つ1つの英単語として聞き取れない人はとても多いと思います。
俳優の方々のセリフの英語字幕や英語スクリプトを見ると中学で学ぶような英単語や英熟語のみで構成されたセリフであることもあります。
こんな中学レベルの英単語・英熟語でも聞き取れないのかと、愕然とすることもあります。
なぜこのような事がおきるのでしょうか?
それは日本語と英語の発声特性が構造的に大きく異なるため、日本語の聴覚脳では英語音声を単語レベルで区分して聞き取ることができないからなのです。
逆に言えば、日本人でも、英語発声特性をもってして、英文音読をして英語聴覚脳が構築できると、英語音声を単語レベルキャッチできるようになります。
「今さら、英文音読ですかあ」と感じられた方も多いと思います。
英文音読が英語リスニング力の向上に役立つと聞いてトライした方も多いと思います。
しかし、多くの方は英文音読を止めてしまっていると思います。
理由は簡単で、英文音読に時間と労力をかけても、期待したほど英語リスニング力が向上しないからです。
なぜ、英文音読に時間と労力をかけても、期待したほど英語リスニング力が向上しないのでしょうか?
それは日本語発声特性で英文音読をしてしまうからです。
日本語発声特性で英文音読に時間と労力をかけても、英語聴覚脳を構築することはできません。
英語発声特性で英文音読をしてこそ、英語聴覚脳が構築できるのです。
英語発声特性に関しては、英音研学習サイトで具体的、詳細に判りやすく解説していますので、ぜひアクセスしてみてください。
【英語音声の意味の認識力】
英音研学習による英文音読トレーニングで、英語音声を単語ごとに認識できたとしても、その英単語・英熟語の意味が判らないと、英語音声の意味の理解は不十分になります。
意味が判らない英単語・英熟語の部分は空白になり、その他の英語音声の意味が判っている部分から英語音声の意味を推測することになります。
英熟語力に関しては、大学入試英語における英語熟語力は1千個程度、TOEIC900点台・英検1級狙いとなると4千~5千個程度と言われていますので、まずは試験対策として出版されている英熟語の参考書を音声付きで必死で記憶することで、取り敢えずは努力の問題となります。
最近は前置詞をイメージでとらえて英熟語を記憶するという方法を提示されている参考書もあり、そのようなものも活用しても良いかと思います。
ちなみに前置詞をイメージで捉える学習方法ですが、筆者もかなりトライしました。
確かにテキストに解説してある事例は理解しやすいものがあります。
しかし、千単位・万単位のイディオムや句動詞になってくると、なぜその前置詞でその意味になるのかは判然としないものが多く、なかなか前置詞をイメージで捉える学習方法も万能とは言えません。
英熟語記憶学習は、コロケーションも含めて、地道にこの場合はこうなると記憶するケースが多く、画期的な記憶方法はなく、なかなか道遠しです。
音声付きの英熟語記憶学習教材
大学受験向けやTOEIC・英検対策向けの英熟語の参考書やスマホアプリは、英語音声付きでたくさん提供されています。
これに対して、英語音声付きで5千語を超えるような英熟語の参考書やスマホアプリに良いものがありません。
英音研スタッフが認識している英熟語集としては、「英語フレーズ4000」は収録英熟語数が4000と収録数がそこそこ多く、必要度が高そうで判りやすい例文とともに掲載されている良書です。残念ながら音声教材はありません。
1万個の句動詞を搭載「動詞を使いこなすための英和活用辞典」や2万個のイディオムを収録している 「英和イディオム完全対訳辞典」にも、残念ながら音声教材はありません。
プログラミング力のある人は、かつてこれらの辞書が電子辞書として発売されていたころ、その電子データを、英語音声化ソフトにインプットして、英語音声で学習した人もいるようです。
筆者もトライしましたが、プログラミング力不足でうまくいきませんでした。
かつて、アルク社は“Standard Idiom List (SIL)”という標準熟語リストを公表していました。
SVLと同様に出現頻度や日本人学習者にとっての有用性などをベースに英熟語をランキングリスト化したものです。
6000個の英熟語を600個ずつ10レベルに分けてあります。
今でもアルク社のサイトにはSILの英熟語リストが掲載されています。
どのような英熟語がリストアップされているかの把握には役立ちますが、意味、例文、音声もなく、それだけでは簡単には使えません。
“Standard Idiom List (SIL)”をベースにしたCD付き英熟語本もありました。
これも過去形です。“Power Idioms”と言う書籍で、現在、絶版となっています。
Amazonで中古本としては販売されていますが、5巻から10巻は定価1,320円が数千円の高値で取引されています。
英語教育教材出版会社の方々からすると、数千個~1万個レベルの英熟語学習市場規模が小さすぎて採算性が合わないのだと思いますが、誰か何とかしてもらいたいものです。
まとめ
英語リスニング力や英語スピーキング力などの向上のためには、英熟語を英語音声で記憶学習することが非常に重要です。
しかし、音声付きの英熟語教材やスマホアプリはせいぜい1000個程度の英熟語しか搭載されておらず、語数的には厳しいものがあります。
仕方がないので、文字ベースの英熟語関連書籍を自力で音読などをしつつ、記憶していくしかないのが現状です。
ただ、英熟語は、英単語と違って比較的簡単な英単語の組み合わせが多く、難解な意味のものが少ないので、判りやすく、これならいつか英語スピーキングで使ってみたいと思えるものが多いので、英熟語は英単語に比べて学習モチベーションを維持しやすいものがあります。
英熟語記憶学習を頑張って、英語リスにイング力を高めて頂くことを願っております。