言葉にならない言葉〜【ヘレンとgesuidou】に見る表現
言葉にならない言葉〜【ヘレンとgesuidou】に見る表現
近年SNSの普及などもあり簡潔が好まれるようです。
これは効率がいいのかもしれませんが何かが不足しているように思えます。私は創作の際にそこが気になります。
イーアイオーでは企画によって大きく違いますが「共通言語」「共通感覚」がある程度ないと作れない作品があります。これらを作るには時間と努力が必要と思えます。そうしないと言葉にならないものを捉えることは難しいのです。
言葉にならないものを考えたとき、作品そのものだけでなくそのプロセスにおいてもいいなあと思った作品があります。
それは、お寿司の【ヘレンとgesuidou】という作品です。
(作・演出・衣装 南野詩恵 2023年 THEATRE E9 KYOTO 及び こまばアゴラ劇場 での上演)
以下、いくつかのシーンについてです。
最初のシーン
5~6名のダンサーが登場しますが単純な動きで何かを意識しています。
これを文字化(台本など)しても伝わるのは限度があります。
南野さんはこのシーンの稽古にかなりの時間をつかっています。理論ではわかっても、当初はどこかよくわからなかったシーンです。それが稽古を重ねてだんだんとみえてくるのです。あの「空気感」は生舞台、それも小劇場でしか出せないです。
聴こえてくる曲はグリーグ作曲【ペールギュント】で朝をイメージさせる名曲です。でも内容は波乱万丈で好き勝手のペールとそのペールをひたすら待ち続けたソルヴェイグのお話です、最後にはペールはソルヴェイグの元に帰ってきます。(南野さんは知ってたのでしょうか?)
前半の舞台上の5名のダンサーが円を描くような動きのシーン
これも最初のシーン同様、稽古を重ねて空気感を作り上げています。
このシーンの稽古は当初ちょっと苦痛でした。稽古が進み人との絡みが多かったり楽しんだりすると南野さんから修正が入ります。
前半これらのシーンは自分の中に起きているものを感じていく作業をしながら作品と向き合っていったのでは思えます。これは演出家が言葉で伝えきれるものではなく自分でも探っていくことになります。
中盤ダンスシーン
使われている曲はセシル・シャミナード作曲【フルートと管弦楽のコンチェルティーノ】です。作曲者のセシル・シャミナードは19世紀で良家の子女は妻となり母となることが使命という価値観があった時代の人です。パリ音楽院には入学できなかったそうですがパリ音楽院の教授達から個人レッスンをうけることができました。ビゼーがあらゆるサポートをして、純粋に作曲家としてのシャミナードがいられる場ができていったらしいです。そして経済的にも自立した女性音楽家とされています。
後半の5名のダンサーが一体となり大きく円で動くシーン
レゲエの音楽とともに溢れるエネルギーを感じさせます。前半のシーンを大切にしなければこのシーンの力が薄まってしまうことを実感します。改めて考えると前半の言葉にならないシーンが重要だと思えます。
この作品を1年以上、根気よく時間をかけて作り上げています。「ローマは一日にして成らず」という言葉がありますが【ヘレンとgesuidou】も一日にして成らずなのでしょう。
私にはやりたいけど先に進めない作品があります。
【タクシーを待ちながら】【値引き家族】【姫の物語】をSN1572の世界で包み込むというものです。ライフワークと言っていいぐらい大事な企画です。
1年以上かかること
言葉にならないものを創作現場で扱うこと
「共通言語」「共通感覚」
そのためには使われた言葉にとらわれすぎないことです。
これらはイーアイオーの課題です。
イーアイオー 【タクシーを待ちながら】
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お寿司ホームページ