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殺されても殺されても、この世に蘇る美しい女!!「富江」

富江という作品をご存じだろうか。伊藤潤二作のホラー漫画である。
1987年に発行されたとのことなので全然最近の作品ではないが、韓国とかで再び人気に火がついたらしく大きな書店に行くとわりと置いてある、富江。

私は流行るちょっと前に、タイのネトフリドラマで「転校生ナノ」という富江をオマージュした作品を見てから原作が気になって買った。転校生ナノもめちゃくちゃ良かったが、原作も非常に面白かった。

伊藤潤二作品にハマって、他にもうずまきとか潰談とか、マニアックというアニメもちらほら見たのだが、やはりこの富江という作品は別格だなと思った。
伊藤潤二作品は基本的に何がどういうことなのか全然わからないんだけど、話の展開としてはとても説明的でわかりやすいと思う。

富江とは、一言で言えば殺しても殺してもその細胞の一片から蘇る、絶世の美女である。あまりにも美しいので、男たちはみな虜になり、最終的には彼女を絶対に殺したくなってしまう。富江は作中で何度も殺され、そして蘇る。蘇り、人の世で男たちを翻弄し生きながらえ繁殖し続けるのだ。

本の帯には、「男たちを惑わし、狂気の愛へと導く富江。富江の愛を求めた男たちが、辿り着く先とはー。」って書いてある。ここが伊藤潤二作品の激しいツッコミどころで(笑)、いやいや男たちの行く末とかどうでもよくて、読者的には富江の目的が何なのかが一番知りたいのだが…という気持ちになる。しかし富江はあくまで怪異なので、ただただ不条理な存在としてしか描かれない。目的は強いて言えば「増えるため」なのだろうか。切ったらそこから生えてくるプラナリアと同じで、お前の目的は何なのだと尋ねても絶対に答えは返ってこなそうである。

富江の内面は、ひたすら高慢ちきでワガママで鼻持ちならない、ステレオタイプの悪女として描かれている。映画とか、転校生ナノなどのオマージュ作品を見ると、富江の内面は意外と人間愛や執着や葛藤があるかのように描かれているのだが、原作ではひたすらに頭と性格の悪そうな発言しかしない。「こんな犬の餌みたいなの食べられないわよ!!フォアグラやキャビアはないの!?」とか言う(笑)。私はこっちの方が断然好きである。
富江の性格の最悪さがフルスロットルでぶちかまされてるのは、下巻の「小指」という話だと思う。もう本当に最悪、イライラしすぎてこんな女ミンチにされて当然じゃん、とナチュラルに思うくらい性格悪い終わり方をする。絶世の美女とか関係なく激ヤバ女すぎる。伊藤潤二の性癖出てると思う。

また、伊藤潤二は美しい女を描くのがやたらうまい。そこもまた、富江という作品が再評価されている所以だと思う。絵柄こそ時代を感じるけど、今見ても美しくて息を呑むコマがいくつもある。出会う男を虜にする富江の人間離れした美しさが、伊藤潤二の筆先を伝い時空を超えてしまっているのかもしれない。


このホクロの見える絶妙な角度が美しい

なんか言ってる

超絶ツヤサラ黒髪ロング


またなんか言ってる


イライラ三白眼かわいい


そんなこと言っちゃさすがにおしめぇよ


このスタイルの良さである


こんなに美しいながらも、やはり伊藤潤二ホラー漫画なのでかなりの頻度でグロすぎ注意の姿になる。うっっわきんんんも…と絶句するページが結構ある。それでも読んで欲しい。前述したように、伊藤潤二作品はすごく説明的でわかりやすいのに、肝心なところは何一つ説明が足りない。富江の美しさとそのカオスが相まって、病みつきになること間違いなしの大傑作ジャパニーズホラー漫画である。

おしまい

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