25歳女、ともだちいません

ともだちがいません。
本当に、いない。
悲しいほどいない。
「あえて作らない」とかではなく、「欲しいのにいない」。
結婚式となったら骸骨と人体模型とファービーで出席者を埋めるしかない。

小中高大を普通に出た。
それぞれの学校で集団に属し、友達がいた。今はいない。
私はいい奴だ。常識があるし、明るいし、話も面白いし、おしゃれだし、よくナンパされちゃうかわいい25歳だ。普段はIT企業で普通の顔して働いてる。

高校生ぐらいからすべての歯車が狂い始めた。
高偏差値の進学校に進学したのだが、品質の高い生徒たちの中で、毒親持ちは私だけだった。
みんな素敵な親に応援されながら勉強を頑張っていた中で、「お前なんか東大に行っても首を吊る人生になる」と妬まれ足を引っ張られ続けていたのは私だけだった。

友達のことが、だんだん自分みたいな劣悪な人間が気軽に関わってはいけない届かない存在に思えてきた。
無料の愛情さえもらえなかった私は、他人から認めてもらうための課金アイテムは一つも買ってもらえることはなかった。

劣等感に押しつぶされたまま大学に入り、親に押し付けられた無名ブランドの白ロムのスマートフォンがいきなり壊れ、高校の人たちの連絡先が一気に消えた。
大学ではやり直そうと思った。サークルに入り、友達を作った。
毒親から自由になったと思ったのに、大学生活でお前は怠けすぎだから死に物狂いで働けと言われた。やがてメンタルがおかしくなり、サークルもやめてしまい、完全に心が壊れてきているのがわかった。笑顔のやり方がわからなくなった。意味もなくいつも泣いていた。

自分は発達障害かもしれないと思った。発達障害であって欲しいと思った。
生まれつきコミュニケーションが下手で、人を傷つけてしまうから親にも愛されなかったのだと思い込もうとした。
でもそうじゃない、昔から友達は普通にできたし、普通に遊んだ記憶が沢山ある。ある時期服がダサいとかいじめられたけど、親が服を買ってくれなかったので私のせいではない。
親が異常者だったわりに、頑張ってきた。普通に愛されて育ったかのような顔をして周りに溶け込んできた。偽物だと見破られないように虚勢を張ってきたけど、大人になればなるほど自分の綻びが見えてくる感覚があった。

ともだちへの劣等感はやがて憎しみや卑屈さに変わった。
いいな、何も努力してないのに愛されて、親がいい人ってだけで認められて、溶け込めて、親が買ってくれたアイテムを身に着けて、常識的で、排他的で、守られたオーラを放ってて、いいな。
私は何もしてないのに、努力だけは沢山してきたのに、そんなもの人から好かれるという点においては何の意味も持たなかった。

恋人は年一くらいでできては一年待たずに別れてきた。恋人とはバイバイした後寂しくてまだ帰らないでと言ってセックスするのに、なぜ友達はそうしないんだろう。友達は遠く、寂しい存在すぎて切なすぎる。もっと手を繋いで常にくっついてて欲しい。たくさん頭を撫でて欲しい。ずっと好きでいるよと言って欲しい。毎日LINEでおはようと言って欲しい。そうしてくれなければ、どうして私のことを好きだって信じられるんだろう。情緒も距離感もバグり、友達が欲しいんだか憎いんだかいらないんだか、何もわからなくなった。

一人ぼっちでふさぎ込んだまま社会人になった。
大好きな彼氏には、お前は家族と仲悪いから将来が見えないと言われ振られた。
寂しいのでマッチングアプリや友達作りアプリ、サークルに入ったりした。知らない男と会って抱かれては、いきなりメンヘラ化してブロックしたりした。女の子と会ったりもした。マルチだった。おばさんに謎のパーティに誘われたりした。(結局あれなんだったんだろう。)
どこでもともだちは作れなかった。
都会はともだちを作るところではないのかもしれない。

休日、何も予定がない。何かあるような顔をしてカフェで勉強している。
とにかく早く時間が過ぎればいいと思う。
連絡もしない元ともだちのストーリーに足跡つけるのが癪だから、違法の覗き見アプリで見ていたらこの間垢バンされた。
お金は沢山ある。でも使い道がない。このまま推しに全額投げ銭してニコニコの笑顔を見てから死んでやろうかな。

ああ
ともだちってなに。

おしまい





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