川本真琴が好きだ
川本真琴が好きだ。私は25歳なので正直全く世代ではないけど、世代ではない音楽を聴くのが好きだし、川本真琴に辿り着けて本当に良かったと思う。
特に好きな曲は「DNA」「桜」で最近は「やきそばパン」をよく聴いてるんだけど、やっぱり川本真琴の魅力は歌詞抜きでは語れないと思う。
音楽好きな人は「歌詞なんてなんでもいいんだよ、音楽が大事」とか言いがちだけど、私は「詩を歌に乗せている」感覚で聴いてしまうので、音痴な聴き方なのかもしれない。でもそれしかできないんだから仕方ない。
川本真琴の歌詞は感覚的で詩的で現代文の教科書に載りそうなくらい素晴らしいんだけど、難解である。
「桜」に関しては、サビが一番よくわからない。
「できないできないできない」と3回「できない」を言うんだけど、何ができないのかイマイチわからない。この何かに苦悩して呟く独り言のような歌詞が、綺麗で爽やかで繊細な音に載せ可愛い声とともに切なく耳に残る。この人の、悩みを悩みのまま昇華しきらない歌詞がとにかく好きなのだ。
「DNA」は最後の一行が衝撃的だ。「他人だよねぇ?」と相手の気持ちを確かめているのか、諦めているのか、それとも期待しているのかわからない不思議なフレーズ。曲の構成的に特にいらない一行だと思うんだけど、これを最後にぶち込んでくるところが衝撃だった。「他人」て。なんだこの捻くれた、哲学的なワードセンス。jpopって、「他人」ってたぶんあんま言わないよな(笑)この人の歌詞が頭に残るのはやっぱり、この完結しきらないモヤモヤ感なんだと思う。明るさ、爽やかさの中のモヤモヤ。単に鬱的に暗いというよりは、誰しもが普遍的に持っている「根暗」を感じる。好きとか言っても、でもどうせ他人だしな、みたいな。そういう心の中だけに隠しておきたい気持ちを歌詞にああやってサラッと落としこんじゃうの、あまりにも自由だ。
「やきそばパン」はすごい怒涛の詰め込み具合の歌詞なんだけど、特に好きなフレーズがある。
「この星のこの場所は リップクリームくらいのガードで 壊れそうになりながら光の中進化してく」
というところ。
わけがわかるかと言われれば、わけはわからない。このフレーズを読み解けている自信は全くない。とりあえず「リップクリームくらいのガードで」ということは相当薄いに違いない。「この星の」と始まって「リップクリーム」というチープな日用品に寄り道し、「進化してく」という壮大なところに着地させる感じ、詩的すぎて眩暈がする。
川本真琴の歌詞でもう一つ特徴を見つけたのだけど、「ひとりぼっち」というワードが非常によく出てくる。この人はきっと誰かといても相当孤独を感じるタイプで、身体的にも精神的にももっと近くなりたくて、それでも「他人と相手」という圧倒的な壁の前で苦悩し続けているからこそあれだけ内面の複雑さを怒涛に詰め込んだ歌詞が書けるのだろう。
川本真琴を初めて聴いたときから、思考から川本真琴的切なさが抜けなくなってしまった。好きな人と寝ている時も、「境界線みたいな身体」を意識するようになってしまった。「他人だよねぇ」という声がよく頭に響く。
でもやっぱり川本真琴が好きだ。「1人じゃない」「仲間がいる」等と歌いきる歌詞より「ひとりぼっち」と吐露してくれた川本真琴に支えられて生きている。
おしまい