ITエンジニアが資格取得に挑戦するメリット
こんにちは。アイネの渡邊と申します。
「ITエンジニアに資格はいらない」
最近、このような主張を聞くことがあります。資格不要論は以前からありましたが、最近になって増えてきた気がします。そもそもIT資格はライセンスではありませんので、それがないとITの仕事ができないわけではありませんし、資格がなくても優秀なエンジニアは大勢います。またWeb系企業の場合、就職・転職の際に重要なのはポートフォリオであり、会社として資格取得を推進しているところは少ないのが現状です。一方でSIer、SES企業では資格取得を推進している企業も多く、就職・転職の際にも有利になります。
では、実際ITエンジニアにとって資格は必要なのでしょうか。今回は、このことについて考えていきたいと思います。
資格挑戦した方が良いのか
結論から言うと、ITエンジニアは資格に挑戦した方が良いというのが私の考えです。
個人が資格を取得する一番のメリットはスキルアップに役立つということです。ネットでは資格は就職・転職に有利というメリットを強調しているきらいがあるように見受けられますが、こうした対外的なアピールよりも、自身のスキル向上が最も重要だと思います。この記事のタイトルを「~資格取得に挑戦するメリット」としたのもそうした意味を込めているからです。たとえ資格試験が不合格であったとしても、勉強した分は確実に身に付くからです。
一方でIT資格取得に時間をかけるのであれば、ポートフォリオを作成した方が良いと言う人もいます。
しかし、例えば業務でプログラミングすることはありますが、IT資格のような体系的な学習は業務ではほぼありません(研修等の学習機会があれば別ですが)。このため、ITの基礎を体系的に身に付けるためにも、IT資格の勉強は有効です。
また、情報処理技術者試験で学習する内容は、あるべき理想のプロジェクト、システム開発です。現実のプロジェクトは理想通りに進むことがほとんどなく、様々な妥協があります。あるべき理想を知らないとそれが普通だと錯覚してしまう危険性があります。資格の勉強であるべき理想を理解していれば、安易な妥協をすることが少なくなり、理想に近づく努力ができるのです。結果としてプロジェクトの品質を向上させることができます。
このように、IT資格には自身をスキルアップさせるだけでなく、プロジェクトの品質向上にも寄与できるのが大きなメリットだと考えます。
SIer、SES企業で資格取得が推奨される理由
次に企業としてもメリットですが、SIer、SES企業では積極的に資格取得を推進している場合があります。何故でしょうか。
SIer企業の場合、プロジェクト提案の際に要員のスキルを保有資格でアピールできる場合があります。ユーザからの調達条件になる場合もあるようです。SES企業の場合は、スキルシートに保有資格を記載することで、実務経験を補完できます。未経験、あるいは経験が少ないエンジニアの場合は特に有効です。
またIT資格は客観的評価がしやすく、評価に手間がかからないなどのメリットがあります。このため、多くのSIer、SES企業では、資格取得支援制度があります(弊社アイネにも資格取得推進制度があります)。また社内勉強会を実施している企業も多くあります。
ITエンジニアが挑戦すべき資格の種類
IT資格は国家資格と民間資格に分けられます。またITエンジニアが挑戦すべき資格には、IT以外の資格もあります。それぞれについて見ていきましょう。
国家資格(情報処理技術者試験)
ITの国家資格は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施している情報処理技術者試験になります。詳細はこちらのサイトで確認することができます。
国家資格なので認知度が高く、資格保有者も圧倒的に多いです。また受験料が安い(2023年現在、7500円)のも特徴です。例えばOracle認定資格は3.4万円なので、相当に安くなっています。
初心者がまず受験するエントリー資格は、ITパスポートになりますが、ITパスポートはエンジニア向けと言うより、全てのコンピュータ利用者向けの資格です。ITエンジニアであれば、基本情報技術者以上の試験に挑戦して頂きたいです。但し、まずはITパスポートに合格し、その次に基本情報技術者試験に挑戦しても良いと思います。
基本情報技術者試験は、ITエンジニアの登竜門とも言われている資格です。その上には応用情報技術者試験があり、更にその上の高度試験はIT分野ごとに細分化されています。
個人的には基本情報技術者試験がお勧めです。ITエンジニアであれば、ぜひとも挑戦して頂きたい資格です。基本情報技術者試験はユーザ系、ベンダー系を問わず、ITエンジニアが知っておくべき基本知識をカバーしています。資格試験に合格するかどうかは別としても、試験範囲をよく理解しておくと、現場での仕事に役立ちます。試験は区分A(基礎問題、IT全般)、区分B(応用問題、アルゴリズム、情報セキュリティ)から構成されています。区分Aでは基本的なIT用語・知識を理解できますので、エンジニア同士の会話に困らなくなり、上司からの指示も理解しやすくなります。区分Bでは基本的なアルゴリズムの考え方を習得することができ、設計やプログラミングに活かすことができます。また情報セキュリティはインシデント防止の観点からも知っておいてほしい内容です。
基本情報技術者試験に未合格の方は、挑戦を検討してみては如何でしょうか。
民間系資格
民間系資格は、ベンダー系とベンダーニュートラル系に分けられます。
ベンダー系は、ベンダー製品に対する技術力を認定するもので、アマゾン(AWS)、Oracle(DB、Java)、シスコ、マイクロソフト等の認定資格があり、近年はクラウド需要の影響でAWS資格の人気が最も高くなっています。
ベンダーニュートラルは特定の企業ではなく、任意団体が主催している資格で、具体的にはPMP、LPIC(Linux技術者)、UMTP(UML資格)などがあります。
ベンダー系、ベンダーニュートラル系を問わず、何れも実務に直結しやすいというメリットがある一方で、受験料が高額になっています。
どのようなIT資格があるか
IT資格には様々な種類があります。どのようなIT資格があり、またそれらのレベルはどの程度なのか、それを知るための資料がスキル標準ユーザー協会から公開されていますので、紹介しておきます。
下記サイトから無料でダウンロードできます。なお、ダウンロードには、氏名、メールアドレス等の入力が必要となります。
IT系以外の資格(業務系)
IT資格以外にもエンジニアのスキルアップに役立つ資格はあります。
アプリケーションエンジニアの場合、対象業務の業務知識が必要ですが、エンジニア転職された方はともかく、多くのITエンジニアには業務経験がありません。それを補うのが資格になります。もちろん、資格が絶対必要というわけでもなく、資格取得さえすれば十分というものではありません。しかしながら、業務知識の学習になり、また知識のアピールにもなります。
具体的には日商簿記、外務員、銀行業務検定等は、担当の業務システムによっては役立つ資格となります。
その他にもTOEICのような外国語資格は全般的に役立ちますし、ストラテジのような超上流に関わる人であれば、中小企業診断士が役立ちます。
IT資格はどのように役立つのか
IT資格には、以下のようなメリットがあります。
目標レベルが明確であり、合格水準に達するまでは妥協の余地がない。そのため、モチベーションを保ちやすい。
テキストの読み返しや問題を反復することで理解が深まる。
学習範囲が体系化されており、網羅なく該当分野の学習ができる。
自分の技術レベルを客観的に知ることができる。
合格することにより、更なるスキルアップへのモチベーションとなる。
個人的経験で言うと、プロジェクトマネージャではEVM(Earned Value Management)を学び、出来高ベースでの定量的な進捗管理に役立てています。システムアーキテクトでは設計スキルの向上を図ることができ、上流設計での品質向上に役立てています。情報セキュリティスペシャリストは、社内あるいはSESでの作業現場の情報セキュリティ対策推進に役立てています。業務系資格では、外務員は証券システム開発に役立っており、日商簿記もシステムでの会計理解に役立ちました。
また、エンジニア業務ではありませんが、ビジネス会計検定で学んだ知識で自社の財務分析を行い、ビジネス法務実務検定は会社(アイネ)起業時の法務対応、就業規則作成に役立てることができました。
資格試験の勉強が役立つ場面はこのようにたくさんありました。また資格試験に合格することで技術に対する自信がついたことも大きなメリットです。
まとめ
最後に、資格取得のメリットを補足で追加しておきます。
それは、後輩が資格取得することで、未取得の先輩、上司へ影響を与えることができるということです。例えば、新人が資格取得した場合、先輩へのプレッシャーが大きくなるでしょう。高度資格であれば、一目置かれることもあるでしょう。
資格取得にぜひ挑戦してください。たとえ、不本意な結果になったとしても、その挑戦は必ずスキルアップにつながります。技術者としてスキルアップの階段を上がっていきましょう。
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