幻の銘茶のこと(五)最高級銘茶
宇治は茶所、茶は政所
政所の茶樹は『実生・在来種』という日本古来のもので、日本茶の栽培としては約2%だそうです。
室町時代からの茶樹を今でも引きついで育てられていて、当時の味と言ってもいいのではないでしょうか。
茶葉に厚みがあり、害虫に強いため農薬を必要としません。
茶樹の植え替えが無いので、しっかりと根を張り栄養を吸い上げるのでミネラルも豊富にあります。茶樹それぞれに個性があるためお世話は大変です。
一般に約98%を占める " 日本茶 " と呼ばれている藪北茶は、外来種です。
日本独自の品種改良を重ねて、美味しい味を一定して作ることができます。
茶樹は挿し木により数年で新しく植え替えられます。
一方、害虫や病気に弱く農薬が必要です。
年数回使用されることや茶葉の洗浄という工程が無いことから、規定の厳しいEUなどに出すことが難しいものでした。
(残念でしたが、このことが川上家のお茶との出逢いとなりました)
整然と植えられた茶樹は機械を使って刈るために整えられたもの。
大量に美味しいお茶ができるので、私たちが気軽に頂けているのもこの技術のおかげですね。
何故、川上さんのお茶なのか
『政所』といっても、集落がそれぞれあり一括りにできません。
在来種は個性のある茶樹なので、農家さんそれぞれの特徴が出ます。
限られた量ですが、他所の茶葉とブレンドしたりハーブを入れたりなどされていません。
川上さんは独自で頑張っておられます。
好みはそれぞれですので、お気に入りの政所茶を見つけられるといいかもしれません。
1.川上さんの茶園の立地
『川上』さんの名前の通り、川上さんの茶園は中でも一番上に位置しています。
カモシカなどの害獣から茶樹を守るために鉄柵を作られました。
先述しましたが、険しい崖地で日照時間が短いです。
・山頂に近い傾斜地の特徴として、一番おいしい水を茶樹が吸い上げていること。
・水が下に流れて行くので水はけが良く、いつも新鮮な水であること。
・日照時間が短いことで、自然に玉露状態になること。
これがのどの奥にずっと残る甘みの正体かなと思います。
(*一般的に玉露を作るときは黒の遮光資材で被覆し遮光します)
2.越冬茶
「越冬野菜」という言葉がありますが、政所は積雪量の多いところです。
毎年茶樹が雪に覆われて越冬します。ゆっくりじっくり茶葉が甘みを蓄えて育ちます。しっかりとした茶葉の味わいです。
茶葉に厚みがあるため、通常の新茶時期とは異なります。
川上家の新茶は6月頃になります。
3.完全無農薬
JAS認定を取得されていない川上さんのお茶は『有機農法』や『自然栽培』という言葉は法的に使用できません。
ですが、古来からの農法を引継ぎ続けていらっしゃるので、
JASよりもJASです。
愛知川の源流を預かる茶園として、農薬を使用しないということもあるようです。
「何とかJAS取得していただけないでしょうか」と言ってみましたら、
JAS認定講習にご夫婦で参加してくださいました。
沢山のお茶農家さんがいらしていたそうです。
ところがJASが認定する農薬もあり、「JAS取ってたかて無農薬やないやんっ。目視やなくて実際に科学的な分析して判断しはるんかと思ってた」と仰っていました。 後に私も農水省にお尋ねしてみましたが、14種類ほどの農薬使用は許可されていることや、JAS認定は各団体がしているので基準はまちまちだということがわかりました。
生産量が少ないため、JASマークを取ったり維持したりするコストと販売売上が同じくらいになるため取得は断念しました。
4.徹底的な芽摘み
川上さんの茶摘みは手摘みです。
茶農家さんたちと協力し合いながら経験者だけで行います。
「お茶摘み体験やボランティアさんなど募ってみたら如何でしょう?」と
提案してみましたが、「そんな教えてる余裕ないねん」とのこと。
芽摘みに拘るために、素人摘みは茎など入り込み
反ってその後が大変なんだそうです。
また、香水や整髪料、化粧品や衣料洗浄剤の匂いなどが、お茶の香りに影響するため
折角来ていただいても、その場でお帰りいただくのも心苦しいと。
どこまでも職人気質な川上さんです。
雑味が入らないように、徹底して手作業で最後まで拘られるのでした。
5.長年の歴史と実績
代々茶園を受け継ぐ筋金入りの茶農家です。
近年の政所茶品評会(日本茶ソムリエによるブラインドテスト)
にて最高品質と評価をされました。
無論、過去何度も評価を受けている折り紙付きです。
6.商品管理
保管状況が品質に影響します。
ということで、川上さんのところで在庫保管をしていただくことになりました。
注文に対して都度パッケージに詰めていただき、発注というかたちになります。
したがいまして、発送までに少々お時間をいただくことになります。