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~それぞれの生きる意味~2000字のドラマ

「もう25か…」
25歳になったその日、仕事帰りに街をぶらついていた
ふと、小さなライブ会場の前を通った
聴いた事のない曲が漏れ出している
何故だかとても心地よかった
「ちょっと寄ってみるかな」
いつもなら、そんな事はしないのだが、このまま家には帰りたくなかった
狭い階段を降りていくと受付に華奢な男性がいた

お金を払い小さく重いドアを開けると、脳に一気に音が流れ込んで来た
狭い舞台に二人の男性が、透き通った声で歌っていた
会場には15名位の客がいた
このハコにしては少ない
何曲か歌を聴いた後、静けさが…歌っていた方の男性が話しはじめた
「今日で僕たちは解散します。これまで応援してくれたみんな、本当にありがとう~!」
最後の叫びが響き渡った
それと同時に会場から拍手とすすり泣く声が

解散ライブだった

もう一人の男性がギターを奏でる
あぁ、とても心地よい
私はこの音に誘われたのだ

ラストの歌が終わり、暗転
会場の明かりがつくと舞台にいた二人はもう消えていた
ザワザワと帰りを急ぐ人達

私はそこから離れずにいた

しばらくすると受付にいた男性が入ってきて片付けをし始めた
「あっ、もう終了です」
彼は私を見つけるとそう言った
「あのぉ、今の方達とお会いしたいのですが」
私にしてはなんて大胆な事を言ってるんだろう
「ちょっと待っててください」
男性は片付けの手を休め楽屋の方へ消えていった
しばらくすると一人の男性を連れて帰ってきた
ギターを弾いていた男性だった
「あぁ、ども…俺で良かったです?」
男性は気まずそうにボソッと言った
「あの、どうして解散するんですか!」
なんて厚かましい…はじめて入ったライブなのに
「まぁ、意見の相違?って言うか、環境が変わるって言うか…でも、あいつはソロでやっていくから心配しないで」
「あなたは?あなたはどうするんです?」

そう、私は彼のギターと曲に惚れていたのだ

片付けをしていた男性が私達を見ていた
「俺…は」少し苦笑いをした
「やめないで、続けてください!」
華奢な彼はそう叫んだ
「俺、太一さんの曲が好きなんです」
はじめて、彼の名前を知った…太一って言うんだ
「俺も続けたいよ、正直な…」
「だったら!!」
華奢な彼からは想像できない位の熱い思いだった
「今日はやめとこう、また今度な」
すぐに私は言った「あの、私今日誕生日で…すてきなメロディが聞こえてきて思わずこちらに来てしまったんです」

何もかも思うように行かないまま25年がたってしまった
今日も一人で誕生日を迎え虚しいままここにたどり着いた事など続けた
「誕生日か…アイラ、ちょっと歌えるか?」
「えっ?あ、はい!」
アイラと言う名の華奢な子はマイクと椅子を用意した
私を椅子に座らせるとアイラはマイク2本を自分と太一の前に置いた
太一がギターを奏でる
スーっと心に入ってくるメロディ

アイラが歌い出した瞬間、私の脳がパニックを起こした
ギターの音色とアイラの声が一つになった
美しく透き通る高音と力強い低音

「さっきの人よりも好き」即座にそう思った

じっと聴き入ってると、これは私に向けた誕生日の歌だという事に気づいた
それと同時にアイラの声にどんどん引き込まれていった
歌が終わると私はいつまでも拍手をしていた
そして自然と涙が頬を伝った
こんなにステキな誕生日を迎えたのは初めてだった

「ありがとうございます…本当に、本当に最高の誕生日になりました」
「それは良かった。君が最後の客で良かったよ。こちらこそ、ありがとう」
「お二人で続けてください!是非!」私は叫んだ
太一は重い口を開いた
「あと、2か月位なんだ…俺」
何を言っているんだろう
「血液の病気で、今の所猶予はあと2か月…」
そう言うとまた苦笑いをした
私は言葉を失った
アイラは太一の言葉を聞いていないかのように言った
「その2か月、俺にください!俺と組んで下さい」
私はその提案に多いに賛成した
この二人の歌をもっと聞きたかったから
「私も出来る限りの応援をするから!二人で活動して欲しい」
「とりあえず、この事は今日は持ち帰らせて欲しい」
私達はそこで、解散した

帰り道私の頭の中は彼らの事で埋まっていった
どう家についたのかも覚えていない
毎日仕事帰りにライブ会場の前を通った
別の音が漏れている
どうも入る気にはなれない
次の日も…また次の日も…
1か月近くたった頃
休みだった私は街に出ていた
ショッピングしたりスイーツ食べたり
今まであまりしてこなかった事ばかりだ

そして帰り道いつもと同じようにライブ会場の前を通った
優しい音が漏れてくる
心にスーっと入ってくる
私は「はっ!」として、狭い階段を駆け下りた
受付には可愛らしい女性がいた
「あの!入れますか!」
彼女はニコッとしながら言った
「はい、ありがとうございます。今日からなんです!」
私は重いドアを軽々と開けた
会場内はたくさんの人で埋め尽くされている
人をかき分けながら、少しずつ前に

舞台の上にはキラキラ光る二人の姿があった
私の生きる目標が一つ増えた

ど素人でとても下手かもしれませんが、もし良いと感じていただけましたら、スキやシェアやフォロー頂けると嬉しいです。どうかお願いします<(_ _)>