18.ドローナ、一矢報いる
アルジュナを始めとするたくさんの王子たちが成長を遂げました。
それを見てとった指南役のドローナ先生は、生徒である彼らを集めて言いました。
「そろそろみんな、一人立ちしてもよい頃だろう。教えるべきことはすべて教えたといっても過言ではないからな。と、いうわけで。私にダクシナを授けてほしいのだが」
(※ダクシナとは、先生に差し出す感謝のお礼のようなもの)
それを聞いて生徒たちは興奮しました。
「もちろんです!先生!なんでも差し上げます!!」
ドローナはにこにこしながら答えました。
「待て待て。私はな、お金なんていらないんだ。それよりもパンチャーラ国へ行って、ドゥルパダという王を捕えてきてほしいのだ。いいか、くれぐれも殺してはならぬぞ」
そう、ドローナは忘れてはいなかったのです。
昔、友と信じていたドゥルパダに裏切られたあの出来事を(こちらをご参照ください)。
王子たちはドローナの言葉に更に興奮しました。すぐに準備を整え、パンチャーラ国を目指して戦車を走らせることにしました。第一陣は、ドゥルヨーダナ率いるカウラヴァ軍です。
粉じんを巻き上げて自国に向かって走る無数の戦車を見たドゥルパダ王は、
急襲に驚くもすぐに迎え撃つ準備を整え、こちらも速やかに出陣。
あいまみえた両軍はすぐに交戦し始めましたが、さすがはドゥルパダ王というところでしょうか、若手のカウラヴァ軍を打ち破り、ドゥルヨーダナはとぼとぼ肩を落として帰ってきました。
ドローナはアルジュナに出撃を伝えます。第二陣としてパーンダヴァ軍がパンチャーラ軍と対峙しました。アルジュナは長兄ユディシュティラを司令塔として後方に下げ、棍棒を担いだ次兄ビーマと、剣を巧みに操る双子の弟ナクラ・サハデーヴァを前方に配置。
兄弟たちの間に入ったアルジュナ本人は、弓で応戦する布陣を取りました。
神と人のハーフである5人が率いるパーンダヴァ軍は、尋常ならざる力で次々にパンチャーラ国の軍隊を打ちのめし、どんどん王国深部へと迫ります。
ついには、ドゥルパダ王のいる本隊と激戦を行い、ドゥルパダを捕らえました。
ドローナはドゥルパダ捕獲の連絡を受け、逸る気持ちを抑えながらアルジュナ達の元へ急ぎます。
後ろ手に縛られてビーマに引きづられながら現れたドゥルパダは、ボロボロになり俯いたままでした。
「やあ、ドゥルパダ、久しぶりだな」
ドローナの声を聞いて、はっと顔を上げたドゥルパダ。
一体なぜクル族がパンチャーラ国を攻めて来たのか分からないままの彼でしたが、ドローナの顔を見て、やっと合点がいきました。
「さーて。我々は、パンチャーラ国に勝利し、この国は全て我々の支配下となった。もちろん私は、君のことを今でも友達だと思っているさ。
おおそうだ!確か君は昔こう言ってたなぁ。友達とは、対等な存在でなければあり得ない、と」
ひたとドゥルパダの目を見据えて、ドローナは続けました。
「よし、では、我々が得たこの国の半分を君にやろうじゃないか。
私と君とで半分ずつ、まさしく対等だな。わっはっは!これで、君と私は対等な友達というわけだ!!」
ドローナの話を唇を噛み締めながら聞いていたドゥルパダ。
なんという屈辱でしょうか。ブラフミンに国をとられ、挙句の果てに同情され、嫌味を言われて国を半分返されるとは。
ドローナの仕返しを受けて今度はドゥルパダの胸の内に、大きな怨恨の炎が灯ったのです。
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身柄を解放された後すぐに、ドゥルパダは、あるヤグニャ(儀式)に勤しみました。
その儀式をすると子供を授かることができるのです。一体なぜ、彼は子供を欲しがったのか。
彼はこう考えたのでした。
ドローナを倒してやりたいが、地上最強の男と言われる彼を自分の力では倒すことができないだろう。しかし、ドローナを倒せるほどの力をもつ人間が息子として得られれば、その息子の力で確実に奴を葬り去ることならできるはずだ、と。
そしてもう一つ。
ドゥルパダは先の戦乱で目を見張る活躍していたアルジュナを自分の戦力にしたかったので、アルジュナを懐柔し味方に取り込めるようアルジュナの妻となる娘も欲しいと祈りました。
そしてその儀式の結果、彼は2人の子供を新たに授かるのです。(その一人こそがアンバーが生まれ変わったシカンディー、もう一人は5兄弟の妻となるドラウパディー)
怒りと恨みの連鎖が未来の子供達まで巻き込んで、更なる戦争へと発展させていくのでした。
《ガネーシャのひとりごと》
根にもつよね~~~
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