14.ドローナとドゥルパダ王
ドローナという人がいました。
ドローナはバラドワージャの息子で、バラモン(司祭)の家の出でした。
子供の時には、パンチャーラ王国の王子ドゥルパダと同じリシの元で学んでおり、とても仲良しでした。
ドローナは、ヴェーダとヴェーダーンタを学んだ後、さらには弓の名手に成長。ドゥルパダは国に帰って亡くなった自分の父の後を継ぎ王になりました。
《ガネーシャのひとりごと》
みんなはドゥルパダを覚えているかな?
そう、ビーシュマを逆恨みして生まれ変わった
アンバーことシカンディー、
彼女のお父さんがドゥルパダ王ですよ。
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ドローナは、学び舎を出たあと、リシ(聖者)ゴウタマの娘クリピーと結婚し、アシュワッターマンという息子が生まれました。
ドローナは、家族をとても大切に想い特に息子のアシュワッターマンは、目に入れても痛くないほど可愛がりました。彼は、家族のためにも自分のためにも、この時代で一番の弓使いになってやろうと大志を抱いたのです。
そんな矢先、ドローナはバルガヴァという人のうわさを耳にしました。
実は、このバルガヴァ、あのビーシュマも習ったことのある弓の凄腕の持ち主(後にクンティ―とスールヤの間に生まれたあの赤ちゃん、カルナも習うことになりますがそれはまた別の話)。
ドローナは、バルガヴァのもとに行って願い出ました。
「バルガヴァ先生!私はドローナと申す者。どうか私に、あなたの素晴らしい弓術をお教えください!」
彼はドローナの類いまれない能力をすぐに悟ると頷きました。
「いいだろう。これから君は、私の弟子だ」
ドローナは一生懸命修行に励み、更なる弓の技を身に着けました。
けれども、弓の腕は誰にも負けないと自負しても、武術のみではお金を得ることができずいつまでも貧しい身なりのまま。
満足に食事一つ食べさせてやれない・・・
と、悩むドローナの頭の中に、ふと若かりし頃の思い出が蘇ってきました。
そう、ドゥルパダのことを。
彼は昔よく言っていたものです。
『なあ、ドローナ。俺たちはここを出てそれぞれの世界に戻ったとしても、ずっと友達だぞ。俺はな、お前に俺が継ぐ王国の財産を半分あげたいと思っているくらいなんだから・・・』
そうだ、確かに彼は言っていたぞ、とドローナは嬉しくなりました。すぐに彼は、クリピーとアシュワッターマンに旅支度を整えさせて、ドゥルパダの治めるパンチャーラ王国へ向かうことにしました。
パンチャーラ王国にたどり着き、ドローナは王国を引き継いだドゥルパダ王に謁見を願い入れ、やっとこさ王の前に立つことができました。きっと大いなる歓迎を受けるだろうと、頬を紅潮させて、
「おおドゥルパダよ!俺だよ、ドローナだよ!君は以前僕に王国の財産をあげると言っていただろう?もちろん、土地が欲しいという訳ではないんだ。だけどね、これからはきみと一緒にまた友人として暮らしていけたらなあと思っているんだ」
期待を込めた眼差しのドローナを見ているドゥルパダはというと・・・
あの頃の面影は薄れもはや別人のようでした。権力と財力に固執した今、誰かに自分の財産を譲ろうとか貢献しようとかなんて気持ちは、サラサラなくなっていました。昔なじみの友人が来ても、またどこかの誰かが金をせびりに来たんだなくらいにしか思わなかったのです。
鼻を鳴らして笑うドゥルパダ。
「おい、そこの貧しいブラフミン(バラモンのこと)め、この俺と友人などとよくも言えたものだよなあ?知らないなら教えてやろうか。友情というものはな、対等な立場の二人がなるものなんだ。いくら昔同じ学び舎にいたとしても俺とお前じゃまるで訳が違う。わかったらとっとと出ていけ!!二度と俺のことを友人なんて言ったら、今度はただじゃおかないからな!」
ドゥルパダが玉座が足早に去った後も、硬直してしばらく動けなかったドローナ。こんな屈辱はありません。そして何よりかつて親しくされたものに手のひらを返されたときのこの悲しく苦しい気持ち。
数々の感情に飲み込まれたドローナは、傲慢なドゥルパダに深い憎しみの念を持つようになりました。
そして、いつの日か復讐をしてやろうと強く誓ったのでした。
《ガネーシャのひとりごと》
ドローナがピュアで馬鹿なの?ドゥルパダが普通の大人なの?
自分で働けよ!って思う?
それとも、他人任せのドローナが悪いの?意地汚いドゥルパダが悪いの?
約束破ってひどい!って思う?
この二人、
みんなの目には一体、どのように映って見えますか。
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失意のどん底に陥ったドローナでしたが、求職をしないといけないことには変わりありません。そこで、今度はハスティナープラに向かうことにしました。というのもハスティナープラの宮殿に住んでいる王子たちの教育役をしているのが、ドローナの嫁クリピーの双子の兄クリパだったのです。
クリパは、昔、シャンタヌが森に狩りに行った時に拾ってきた双子のかたわれでした。(一緒にクリピーも拾われました)
シャンタヌの元で成長するにつれて、クリパは特に、武器の扱い方について習熟していきました。それを見ていたビーシュマが、クリパを王子たちの武器取り扱い教育係として任命。
そのクリパに会いに、ドローナはクル一族が統治するハスティナープラへと足を運んだのです。
ある日、王子たちはカウラヴァたちもパーンダヴァたちも一緒になって、
町のはずれでボールを遊びをしていました。遊びに夢中になりすぎたせいか、ユディシュティラはうっかりボールと自分の指輪を井戸に落としてしまいました。王子たちは井戸の近くに集まって、井戸の奥底に確かに指輪とボールが落ちているのを確認したものの、さあどうやって拾いあげようかとみんなで困り果てていました。
あーでもない、こーでもないと、王子たちが相談し合っているところに、
一人の見知らぬブラフミンが声を掛けてきました。
「おやおや、王子様方、いったい何をしていらっしゃるのです?あなたがたは、バーラタの血筋の方々でしょう?さあ、何をためらっているのです、さっさとその落し物を拾い上げられては?出来ないのであれば、ひとつ私がして差し上げましょうか?」
ユディシュティラは笑って、
「おおそこのお方よ、もしあなたがボールを取ってくださるのなら、クリパ先生のところにお連れして夕飯を御馳走してもらうようお願いしましょう」
それを聞いたブラフミンーーもちろんドローナのことですーーは、近くに生えていた葉っぱを抜き、その葉へ矢になるように暗示を掛け、ボールに向かって鋭く投げました。
そして同じような葉っぱの矢を作っては、ボールに刺さった葉に向かってどんどん投げつけて、一つながりにしてそれを引っ張り上げました。
するとどうでしょう。
つながっているその葉のつながりの先には、しっかりとボールが付いてきており、そのボールをドローナはユディシュティラに差し出したのです。
それを見て思わず息を飲むユディシュティラたち。
「なんと素晴らしい!!もしかして、あなたは指輪さえも拾えるのでは?
是非お願いできないでしょうか」
ドローナは黙ってうなずくと、王子から弓矢を借りました。紐を矢にしっかりと結びつけると、指輪に向けて放ちます。まっすぐ指輪の真ん中に突き刺さった矢は、そのまま跳ね返りドローナの元に指輪を運んできました。
彼は指輪を抜き取って、ユディシュティラに笑顔で手渡します。王子たちは驚いたのなんの。
「おお、ブラフミンよ。あなたは一体、、、?どうか名を明かしてくださいませ。」
「我々に何かできることがあれば、なんなりとお申し付けてください!」
口々に言い募る王子たちに、ドローナは手を挙げました。
「それでは、一つお願いしましょうか。私が来たとビーシュマ殿にお伝えください。名乗らずとも私が何をしたかを知ったら、きっと彼は誰が来たか分かるでしょう」
慌てて王子たちは、ビーシュマの元へ。何が起きたのかをこぞって口々に伝えました。彼らの話を聞いて、ビーシュマは思わず興奮を隠しきれません。
そんな凄技をいとも簡単に出来てしまうのは、
弓に関して当代切って噂で持ちきりのドローナに違いない、と気付いた彼は
ドローナを最大限のもてなしを持って宮殿に迎えました。
そして、クリパ同様に王子たちの弓の先生としてドローナを任命したのです。
ついにドローナは、職を手に入れました。
そして、王子たちの指南役となったことで、
彼自身の歯車も大きく回り始めるのです。
《ガネーシャのひとりごと》
なんだかんだいって、王子たちよく一緒に遊んでるよねぇ。
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