見出し画像

3.婿探し大会で義兄張り切る

シャーンタヌとサッテャヴァティーの間には、二人の王子が生まれました。
チットラーンガダヴィチットラヴィーリャです。

なんと言っても、
チットラーンガダは不運でした。

実は天界に同じチットラーンガダという名の神様がいたのです。
(注:「ソーマ」という神々の飲み物を守ったり、神々のために美しい音楽を奏でる神様)

彼は、自分と同じ名前の人間が、この世にいることを良しとしませんでした。
そこで神様のチットラーンガダは、人間のチットラーンガダ王子に、
「どっちがチットラーンガダという名にふさわしいかの戦い」を挑みます。

神様vs人間。
分が悪すぎる!!
ただの人間であるチットラーンガダ王子は負け、無残にも殺されました。

チットラーンガダ王子が死したいま、
残ったヴィチットラヴィーリャが王位継承者となります。
本来はビーシュマ(元デーヴァヴラタ)が継ぐ流れですが、独身を貫く誓いをしているため戴冠はせずに、
ヴィチットラヴィーリャを支えるという形で王国を守るのでした。

【ガネーシャのひとりごと】
神様の行動って時に理解を超えますよね。
まあ、僕はこの気持ち、わかっちゃうんだけど。

**********

サッテャヴァティーにとっては、
いまやヴィチットラヴィーリャは唯一の息子です。

ぜひ素晴らしいお嫁さんをもらってほしいと思うのは、王妃ならずとも母心。
ビーシュマも、義兄として、彼の結婚について考えるようになりました。
ちょうどその時にこんな噂が舞い込んできたのです。

いわく、カーシー国(現在のバラナシュ)の王様の三人娘が婿を探しており、スヴァヤンヴァラを催すと。

スヴァヤンヴァラは、
古代のクシャットリヤ(王族・武人階級)の慣例に従って行われる、
一種の婿探し大会のようなもの。

男たちの戦いの様子を見て、女性が自分にふさわしいと思う男性を選ぶのです。
特にカシの娘たちはそれは美しいと評判で、
他国の王子たちもこぞって参加する模様。

これは良いチャンス、とばかりにビーシュマは腹違いの弟、ヴィチットラヴィーリャのために参加することを決めました。

ビーシュマは、クシャットリヤの中でも腕っぷしが強いことで有名です。
(皆さん、覚えているかと思いますが彼のお母さんはガンガー女神。
本人も天界に住み、ヴェーダを周知しヴェーダーンタを修め、習った師匠はかの有名な「ヴァシシュタ仙」なのですから当たり前と言ってしまえば当たり前なのですが)

なので、ビーシュマもほかの王子たちのように、
一人の求婚者として挑戦すると聞き、他の王子たちはみんな、驚き慌てました。

もちろん王子たちは、まさかビーシュマがヴィチットラヴィーリャの代理で参加している、なんて知りません。

当時既に成熟した大人であったビーシュマなので、
まだ若々しい諸国の王子たちからみたら、

「なぜ今更ビーシュマが参加するんだろう?」
「彼は決して結婚しないと誓ったのではなかったかな?」と不思議がるものもいましたし、

「まさかビーシュマのような年老いた男が、スヴァヤンバラで選ばれるわけがないさ」

とあからさまに悪口を言うものもいました。

みんな言いたい放題で騒がしい会場でしたが、
突如、大きな声が轟きました。
ビーシュマです。

「確かに私はスヴァヤンバラに参加するためにこの場に来た!
そしてスヴァヤンバラに勝ち、三人の姫たちをもらい受け、ハスティナープラに帰るつもりだ。

私の花嫁にするつもりはない。
わが弟でありクルの王子であるヴィチットラヴィーリャの妃にするのだ!」

言うや否や、さんざん陰口をたたかれてビーシュマは、憤っていたせいもあったのでしょう、
一人また一人と、どんどん王子たちを投げ飛ばしていきました。

そして三人の姫たちを自分の馬車に乗せ、
つむじ風の如く、この場から立ち去りました。

それに怒ったカーシーの王様は、
会場に立ち尽くした王子たちに3人の娘たちを連れ戻すよう命令します。
慌てて王子たちはビーシュマを追いました。

追撃したものの、王子たちはことごとくビーシュマの返り討ちに。

その中で、姫達の中の一人、アンバー姫と婚約をしていたサルヴァ国の王がいました。
彼も勇敢にビーシュマに立ち向かうのですが、善戦空しくビーシュマに敗退します。

その戦いの様子を、ハラハラしながら姉妹たちとともに馬車の陰から見守っていたアンバー姫。

自分を奪い返そうとビーシュマに戦いを挑んだ婚約者を目の前にして、
「わたくしのためにあんなにも一生懸命戦ってくださったあのお方、、、ああ、なんと逞しく素敵な方なの!!」
と、アンバー姫はヴィチットラヴィーリャとは結婚せずに、サルヴァ王のもとに嫁ぎたいと強く思います。

けれどもそんなアンバーの心情など露知らず、ビーシュマは姫たちを連れ再び馬車を走らせ、ハスティーナプラの街に向かうのでした。

《ガネーシャのひとりごと》
ビーシュマとアンバーの初めての出会いだね。感慨深いよ。
え?サルヴァ王とアンバーの出会いじゃないのかって?
いやいや、ビーシュマとアンバーはある意味深い繋がりがあるのさ。
君が思ってるより、思わせぶりな象だろ?

よろしければサポートをお願いいたします! ヴェーダーンタというヨーガの学びを通して、たくさんの方に知恵を還元できるよう使わせて頂きます。