目が覚めたあの日
転勤の辞令が出たのは二十四歳の時。家族は猛反対し、友達は泣いてくれた。反対に私は初めての一人暮らしに浮かれ、現実味がないふわふわした気分のまま仕事の引き継ぎと引越しの準備をこなしていた。
真っ暗な二月初旬の朝六時。父は既に家を出ていた。リビングの机に一枚のノートの切れ端がポツンと置いてあった。父らしい手紙に母と笑い、それを鞄のポケットにしまい込んで真っ暗な外に出た。
そして飛び込んできたのは、出発日を教えていないはずの友人二人だった。
最後のサプライズだと、空港まで車で送ってくれるという。約一時間のドライブだった。薄暗い外の景色と、なんてことない話、そしてじわじわと湧き上がってきた寂しさ。
最後に泣きながら手紙を渡された。飛行機に乗り、父の手紙と共にゆっくり読んだ。確か隣は空席だった。だから、小さく声を上げて泣いた。その時窓の外はもうすっかり明るくて、力強い刺すような光がとても眩しかった。
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