ウォン・カーウァイの艶めく夜
昨日(というか今日の早朝?)は新文芸坐でウォン・カーウァイオールナイト。一番前の一番端の席だったので、正直画面の6割位を見ている感じ。それでも料金の価値はあった。
一本目はChungking express.恋する惑星。重慶森林。どのタイトルも素晴らしい。失恋によって「頭がおかしい」(この言葉を使うことはスティグマの問題とかもあるかもしれないからやや逡巡があるのだが)状態になってしまった2人の刑事に関する話。2人目の刑事に恋する女の子(ショートカットでポスターに出てくる子。カリフォルニア・ドリーミングを爆音で聞いている)も同様に「頭がおかしく」なり、勝手に刑事の部屋に乗り込んで掃除をしたり金魚のストックを増やしたりしている。1人目の刑事は金城武(きんじょう、とか、かねじょう、って読んでしまっていたけど、かねしろ、が正しいんだね)。独特のスター性。スクリーンが歪んでいてもわかるElectricな存在感(これは2人目の刑事であるトニー・レオンにも言える)。金城武は失恋して自分の誕生日まで1ヶ月間パイン缶を買い続ける。しかも賞味期限が自分の誕生日だという制限付きで。結局誕生日になっても振られた事実は変わらないと気づき、野球場みたいなところで走りまくって「体の水分を蒸発させる」。その記念すべき日に電話をかけてくれたのが新しい恋の相手(ずっとサングラスをしている殺し屋の女。マギー・チャンかと思ったが違うらしい)。パイン缶を食べすぎてお腹を壊した金城はバーで酒を飲んで腹ごなしをしていると、新しい恋の相手と出会って、ワンナイトではなく女がベッドで寝て金城は古い映画を2本見ながらフレンチフライとサラダとチキンを食べる。フライを頭の上部後方のテーブルに乗せて、後ろに手をやりながら食べるシーンがしびれる(花様年華でもステーキにソースを付けるシーンがものすごくJuicyというかRepressedな大人の恋愛というか。カーウァイと食べ物で一考察できるかもしれない)。2人目のトニー・レオンは、CAの彼女(ものすごくゴージャス。Valerie Chowという女優さんだが、割とB級映画によく出ている感じっぽい)に振られてしまい、行きつけのデリの女の子ともすれ違い。ただそこのデリに新人のフェイ(ショートカット)が現れ、そこからはストーカー気味の恋愛が展開される。
2本めはブエノスアイレス。休憩時間に割と場内で過ごしてしまったからか眠気が払えず、また映画自体もなかなかDepressingで苦み走った内容らしく(ほぼ寝てたのでそういう評判を聞いただけ)、8割型寝てしまった。でも男2人が踊るシーンとか、滝のシーン(画面が歪んでいたのでどういうアングルでどんな滝の様子を取っていたのかわからなかったけど)は目が覚めた。
あとこの曲は最高。
https://music.apple.com/jp/album/prologue-tango-apasionado-2009-remaster/1613613762?i=1613614613&l=en-US
3本目は花様年華。唯一すでに見たことのある映画。史上最高の映画ランキングとかを開催すると必ずTOP10には入ってくるし、私は1回目見たときはそこまで刺さらなかったが2回目でかなり好きだった気がするので、期待して見た。ちゃんと休憩も取って(池袋をみっちり15分間ぶらついて)、画面の方に体を向けてみた。(ブエノスアイレスでは字幕を見るために視線を移動するのがきつくなってほぼ正面(画面ではない)を向いてしまっていたので)
これが結局一番の収穫だったかも。マギー・チャンの、歪んでいてもわかる美しさ。あのテーマが大音量で流れて、美しいドレスに身を包んだマギー・チャンが腰を振りながら歩き、スーツで渋くキメたトニー・レオンとすれ違うだけでもう恍惚OF恍惚。土砂降りのときに道路を映すショットとか、ステーキを食べる二人を平行移動出とるシーンとかが一番好きだったかも。結末は忘れていたのだが、勝手に2人が結ばれて(再会して)めでたしめでたしかと思ったら、全然違った。カンボジアで「穴」に向かって話すトニー・レオンを上方から捉えたショットが印象的。
とにかく、(席はもっとちゃんとしたところを取ったほうが良かった(予約時点であと2席しかなかった(泣))けど)オールナイト上映は素晴らしい。前は変容する女性たち(TITANE、ハッチング、ラストナイト・イン・ソーホー)というオールナイトに行ったことがあり、これが2回目。社会人になって確実に行きづらくはなってるけど、長期休暇のタイミングとかで行っていこう。