「亀の甲より年の功」が通用しなくなってきた時代に必要なコト
日本では古い言葉に
・亀の甲より年の功
というものがあります。亀の甲は占いを、年の功は経験値をしめしており、経験値のある人物、つまり年長者の判断の方が正確性が高いということです。
最近の世の中を思うと、この「年の功」も怪しくなってきているように感じます。多くの企業では社長ともなれば若くて40代、多くは50代、下手すると60代以降ということもあり、つまりは「結構なお年」の方が多いわけですが、必ずしもそのビジネス判断が正しいとも言えません。逆に若い人が立ち上げたベンチャーの方がスイスイと成長することもあります。
ではなぜ
・亀の甲より年の功
という、「年長者の意見は正確性が高い」が崩れてきたのでしょうか。
一つには
・高度成長期を経てバブル崩壊を経験し、リーマンショック以来「不確実な世の中」になってきている
点が挙げられると思います。
良くも悪くも、バブル崩壊までの日本は「このまま際限なく景気が良くなる」という雰囲気だったと思いますし、事実経済成長もしていました。つまり
・延長線上に描ける過去の累積たる未来
がそこにはありました。
ところが、先述のバブル崩壊やリーマンショックなどを経て、
・必ずしも延長線上ではない未来
になってしまったわけです。つまり、これまで積み上げてきた経験が必ずしも「正しい」わけではない世界になってしまいました。
例えば「住宅を建築する(細かく言えば耐震性能や保温効果など近年の技術はありますが)」ということにおいては、
・設計があり
・土地があり
・基礎があり
・骨組みがあり
・壁があり
・電気水道ガスが通っている
という点では、大きく変化しないと思います。なので「年の功」が役に立つわけです。少なくとも「未経験の人」が作れるものではありません。
一方で「(もう歴史はありますが)動画配信サービスとしてNetflixを立ち上げる」となったら、それは
・過去に成功例が少ない
ために、マネタイズの方法然り、コンテンツ制作然り、アライアンス然り、課金方法然り、サーバーの堅牢化しかり、それらを組み合わせると
・いままで誰もやったことがないビジネス
になるわけで、どこでどんな経験を積んでいても、それが「そっくりそのまま」活かせるものではありません。住宅建築とはまるで違うものなわけです。
特に日本は、改善は得意でもゼロイチはあまり得意ではない民族なので
・過去のノウハウの焼き直し
しか必要ではないと言っても暴論にはならないと思います。言ってしまえば
・時間をかけて習熟度を上げるほど優秀な人になる
理屈だったわけです。しかし世の中は「不確実」になり、これまでの経験をなぞるだけでは「延命という衰退」しか道はないわけで、違う道を探す必要があります。
ではどうしたらいいかというと、ごく当たり前の話ですが
・情熱を持つ
・好奇心を持つ
・調べてみる
・試してみる
・試行錯誤を恐れない
といったところでしょうか。多くのベンチャー企業が掲げているようなものになると思います。
ガチガチの枠の中で、精細に決められた作業を、習熟度を上げて、間違いなくこなすようになる、ことが多くのビジネスで求められますが、その「枠」を自分で作るということでもあります。そうして「発明」された製品やサービスは
・Apple iPhone
・Netflix
・Spotify
などがあります。これらも
・Apple iPhone→「ケータイは電話するもの」を破壊
・Netflix→「ビデオはレンタルショップで借りるもの」を破壊
・Spotify→「音楽はCDを買って聞くもの」を破壊
してきたわけです。そもそもこうした「枠」の破壊がなければ生まれなかった製品やサービスだったと言えると思います。
もちろん、長年積み上げてきた経験がまったく無用になるかと言えば「使いようによっては役に立つ」ものですが、そのためには「アレンジ能力」が必要になります。応用とも言えます。例えばFujifilmのように、元々はカメラのフィルムメーカーだったわけですが、そこで扱う素粒子を「化粧品」の開発に応用したわけです。ただ前述のように「ガチガチの枠」の中で安住していては挑戦しようがない分野であったとも言えます。
経験を積むことそのものよりも、積んだ経験を
・正しく応用できるか
という方が、これからの世の中では必要になってくるでしょう。