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ウォーキングで行った、川の向こう側

 たまに違う道をウォーキングする。川の方へ進むのは同じ。ただ川沿いのサイクリングコースには入らず、橋を渡る。同じ川でもこっちから見るのと向こうから見るのでは趣も変わる。それは街並みが変わるから。

 こちらの街は一応整備され、歩道も広い。道路も二車線から三車線。スーパーもコンビニもクリニックも、郵便局も銀行も、それに学校も程よい位置関係で住みやすい街。

 ただ川向うは少し違う。生活に必要な施設が揃っていることは同じなのだが、それに加えて、建物に統一感があり、街全体がおしゃれな空気を醸し出している。言ってはいないけれど「どうだ」という態度に、見ようと思えば見えるそんな街並み。少し違うと言ったが、実際は結構違っていて、うらやましいというちょっとした気持ちが「少しだけ違う」という表現で自分の気持ちを誤魔化す。少しだけ。

 橋を渡り始めると段々、視界にそんな統一感のある建物群が見えてくる。少しの好奇心から、川のこっち側に住む輩が、橋を渡りウォーキングさせていただく申し訳ないようなそんな気持ちを少しだけ持つ。統一感のあるおしゃれな方に住みたかったという羨望の気持ちは悟られないように、街並みだけを見るのではなく、川の水面へと見遣る。

 悟られたくないから。

 べつになんてことがない川の水面、波が立ち、海辺から河口を経て、やっぱり同じように好奇心を持ったカモメが忍び込んできているのが見えた。大して興味がなくても「カモメだ」と頭の中でつぶやく。あくまでも平静を装うため。

 橋の終わりが近づけば、木々の影に入り統一感の街並みは一旦、視界からは消える。渡りきったところに、大きな公園が河口まで川沿いに繋がっていて、たくさんの木々が自然を演出する。街全体が埋立地だから自然溢れる公園も人工。つまり人工的な自然。

 公園の中にもきちんと整備された遊歩道があるがくねくねとしていて、細かい起伏もあり、同じリズムで歩くことが難しく、ウォーキングには適していないかな、と個人的な見解。若干不本意ではありますが、川と公園の間の道を進んでいく。人は少ない。同じ川沿いの道なのだが、サイクリングコースではなく、アスファルトで整備はされているが、細かなデコボコがあり歩きにくい。雨が降ると水たまりになるところもあり、サイクリングコースには適していないかなと個人的な見解。自転車の人、ランニング、ウォーキング、イヌの散歩。そんな人はごくわずか。通学で利用する高校生はいない。

 通勤通学の時間帯で、左に川、右に公園をそれぞれ配し、海を目指して歩く。海に向かって歩くと丁度太陽が視界の開けている左側に位置する。少し秋めいたといっても、まだ30度を超える日があって、そんな時間帯であっても、日が出ていると結構暑い。真夏はもっと凄かった。もうずっと遠赤外線グリルで焼かれている状態。サンマの美味しい季節。サンマはグリルでいい。

 反対側のサイクリングコースを、目を凝らして見れば、ランニング、ウォーキング、自転車乗る人、高校生と人が多いのが見える。せっかく今、自分がいる道には人がいないのだからと、太陽の暑さと共に少しの気楽さを味わった。

 海沿いの公園と川に挟まれた道。人が少ないがために公園の木々が道にはみ出す。木々から身元不明の虫たちがさまよう。なんの虫? どうせわからないからと無視した。

 やがて河口に近づく。河口付近で釣りする人を通り過ぎれば目の前に東京湾が広がる。東京の湾。そして川沿いの道から海沿いの道に替わる。天気等の条件が良ければ、左手奥に富士山。前方奥にスカイツリー。前方手前には、お気に入りのプロ野球チームのホームスタジアム。

 さらに程よい時間、距離を歩き進めたら、やっぱり海辺に座りボーっとすることにしている。こちら側には、あっちのようにベンチのある海辺の見晴台のようなところは少ないので、適当に座って時間を潰す。漁船が見えたり、海面を跳ねる魚の姿が見えたり、打ち寄せる波、引く波を見てボーっと。自分にとってこの時間が必要なことと言い聞かせながらボーっと。

 なにか思いついたら、スマホにメモをしてみたりしながら、ボーっと。同じ海を見てボーッとするのでも、少し位置が異なるだけで感覚が全く違う。視点を変えることは大切なこと。

 そんな感じで大体、30分ぐらい休んで帰る。来た道を辿って、現実へと戻るために歩くのは、川のあっち側もこっち側も同じ。






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