タブ消し道中 #19 - talmbout aave
タブ消し道中 #19 - talmbout aave
ある日Safariを開いてみれば
タブがその数約600
そこからぽつりと歩き始めた
タブ消し道中第[19]回
talmbout aave
これはですね!!
面白いんですよ!!
どこでこれを見てなんでこれを調べたんだったかな!!
忘れたけど!!
とにかく面白いんですよ!!
教えてChatGPT! AAVE ってなに?
教えてChatGPT! talmbout ってなに?
つまり、
"talking about" をアフリカ系アメリカ人の人が話すときにこんなふうに聞こえるよね!ってやつです。
"tombout" "taumbout" のように書かれたりもします。
面白いですねえ〜
…
ええ わかってますとも
全然共感いただけていないことは。
じゃあここで本当に面白いことを言いましょう。
"Hell You Talmbout" という楽曲があります。
(この先はぜひ聴きながら読んでください)
ここでの "Talmbout" について話したいのです。
先ほどの説明を踏まえると
つまり "Hell You Talmbout" は
"What the hell are you talking about?"
という意味です。
でも、なぜこのように表記されているのでしょうか?
"talking about" が入っているその他の曲を見てみましょう。
"I'm Talking About You" - Chuck Berry
"Talkin' Bout" - Juicy J
"Talking 'bout a Revolution" - Tracy Chapman
これらは全てAAVEを話す
アフリカ系アメリカ人の楽曲ですが
talkingの "g" や
aboutの "a" を省略する形はありつつも
talmbout とはしていないですね。
一方で確かに Talmbout と書いてある曲もあります。
"Talm' Bout" - Chris Brown
"Talm Bout" - 9lokkNine
"HELL YOU TALMBOUT" - Travis Porter Ft. Waka Flocka Flame
この違いは一体なんなのでしょう?
なぜ、ジャネール・モネ(Janelle Monae)は "Hell You Talmbout" をこのように表記したのでしょうか?
そこには明確な意図がありました。
そしてそれはこの曲のメッセージや彼女のアーティストとしての姿勢を知ると自ずと理解できます。
この曲は抗議、主張、心からの叫びであり
だからこそ人種に関わらず人の心を打ったのでしょう。
言葉が映すもの - アイデンティティ
ある特定の世代や、コミュニティに属する人たちのアイデンティティを映し出すもの。それは言葉です。
AAVEはアフリカ系アメリカ人というコミュニティに属する人たちのものです。
この歌やメッセージは彼らのものであるということを "talmbout" は示す。
talking about と言う言葉は彼らだけのものではありません。
talkingの "g" を省略したり
aboutの "a" を省略してもそれは彼らだけのものではありません。
("Ain’t Talkin’ ’bout Love - Van Halen)
一方で talmbout は彼らだけの言葉。
また、AAVEも含め、私たちの言葉は時代を経るにつれてその形を変えています。
若い世代は無意識に常に自分達のアイデンティティを作り出そうと、新しい言葉や新しい表現を求める。
"talmbout" はそういった一面も映し出しています。
言葉が映すもの - アートとエゴ
マーケティングを考える人ならこう言うかもしれません。
「曲を人気にするためには、なるべく多くの人が共感されるものの方が良い。そのためにはなるべく馴染みのある、一般的な形で表記するべきだ。」
ジャネール・モネはそうしませんでした。
talking about を talmbout としたのは
それは見え方を変えれば、隔絶、線を引いたり、溝を作り出す行為のようにも取れます。
個人的には、ジャネール・モネがその線を引いて、円でアフリカ系アメリカ人という自分のコミュニティを囲んだのは、その円の中の人たちだけにこの曲を届けようとしたわけではなく、円で囲む事で円の外にいる人の目がそこに向くように願ったのではないかと思います。
ただ、やはりこの行為を好く取らない人もいるでしょう。
言葉は誰もが誰かから学び、人に伝えるために使うものです。
そのため忘れがちではあるのですが
自分の発した言葉は自分だけのものです。
彼女がそれでもこうするというエゴや意志、選択がここに表れています。
そしてそれがアーティストの特権なのでしょう。
言葉は人の目を惹く
この曲のタイトルを見た人の多くは、このある種 "ひっかかり" を感じるでしょう。
「何この言葉?」
「こんな曲の名前見たことないな。」
エンターテインメントが飽和したこの時代において、このような "ひっかかり" は何かを発信する人間として常に意識しているもの。
そのために、アーティストは常に新しい見たことのない、でも人が共感できる何かを探しています。
それが1つの言葉の表記となることもあるのですね。
たった1つの言葉の表記に、アイデンティティと、想いと、主張と、エゴと、アートと、戦略と、これだけのものが込められている。
僕は言葉の持つその力に感銘を受け、「ことばとはなんて面白いんだ!」と思わず声を上げてしまうのです。
以上、ご覧になっていただきありがとうございました。
また次回。
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