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三人称単数現在の動詞の語尾"-s"はなぜ生まれたのか?


英語を学習したことがある人であれば、ほとんど全員が抱いたであろう当然の疑問です。
この"-s"を忘れてしまったが故に、テストで△をつけられ、悔しい減点をもらった経験は皆さんあると思います。

3単現の動詞の"-s"
 ∟主語が三人称かつ単数、時制が現在の場合、動詞の語尾に"-s"をつけなければならない
正:She drinks Lemonade, I drink Lipton.
誤:She drink Lemonade, I drink Lipton.

ではなぜ、この(忌々しい)"-s"をつけなければならないのか。
歴史的な観点から、簡単に解説してみたいと思います。


結論、「もともと全ての場合に動詞の屈折はあったが、時の経過とともに、3単現の"-s"のみが生き残った」というのが通説のようです。
※動詞の屈折:動詞の語尾が変化すること(例: 3単現の"-s", 過去形の"-d"など)

今よりももっと昔の英語である古英語の時代には、主語が1人称でも、主語が複数でも、時制が未来でも、あらゆる場合に動詞の語尾は変化していました。

しかし、古英語末期から中英語にかけて、動詞変化の語尾についていた語の発音が弱化したり、消失したりという現象が起こりました。
そんな中、3単現の"-s"(当時は"-th")だけは発音が残り、今の形を残し現代まで活用されています。

昔は、今よりももっと語尾変化が激しかったのです。
今はむしろ簡素化され、私たちもテストの点数も減点されにくくなっているということですね。


●余談

少し話は逸れますが、AAVE(African American Vernacular English)という主に黒人の方が使用している英語においては、「3単現の"-s"が消失する」場合があります。
※アメリカやイギリスのラップを聴く方は、「たしかに」と思われるはずです!

私たち日本人は(日本人だけでなくおそらく世界中の英語教育において)、3単現の場合、動詞に"-s"をつけることが正しいと教わります。
それがゆえに、それを忘れると減点されてしまうわけです。

では、AAVE話者の人々が使用している英語は「正しくない」のでしょうか?
AAVEも、形は違えど正しい英語として認められないのでしょうか?
学校で教えられる「標準」英語とは何なのでしょうか?

この3単現の"-s"の話から、いったい「標準」となにか、それがどういう基準で決められているのか、それは英語教育のみにおける標準なのか、日常生活で使用する英語においてはどうなのか、などと考えてみると、英語に対する捉え方が拡がり、より英語学習が楽しくなるかもしれません。

ぜひご参考になれば幸いです!

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