元教員が語る教育現場の課題(その2)
前回は業務量の多さと教員の風土について話した。
引き続き、教育現場の課題についてまとめていく。
人材不足
定年退職を迎える教員が増えていることで、教員の大量確保が求められている。
しかし、教員のブラックな職場環境がニュースになり、近年の民間企業が売り手市場になるなどの理由により教育学部の学生の多くが民間に流れている。
それに伴い教員採用試験の倍率は低下しており、優秀な人材の確保は難しくなっている。
産休や病休に入った教諭の代わりになる講師もいない。本当に人がいないのだ。
また、若手教員が増えることで、現場のミドル層にも負担がかかっている。
若手は経験が不足しているが、それを育てる余裕もない。結局は背中を見て育て、技を盗めという「名ばかりのOJT」になっている現状だ。
人材不足。そして育成もできない。これはダイレクトに教育の質に関わる。
毎年50万人規模で人口減少が進む日本で、教員免許をもった人材を採用し続けるには給料を上げるか業務改善をするしかないが、現状どちらも不可能に近い。
モノ不足
今の教育現場に不足しているものは人材だけではない。
生産性の高い学びを支援するICT機器等のモノも不足している。
「GIGAスクール構想」という一人一台タブレットを持つ環境整備を進めているが、ICT機器、ネットワーク環境が完備されている学校は稀だろう。
また、学校施設の老朽化も進んでおり、現時点で子どもたちは快適な環境で学習しているとは言えないだろう。
また、教員の業務を支援するシステムの導入も遅れている。民間企業では何十年も前にあるタイムカードですら学校にはない。未だにハンコを押しているのだ。(今や民間企業ではハンコを押す必要すら無くなっているのに…)
予算不足
一つの学校を運営するのに、毎年億単位の金額が必要になる。
それでも予算は圧倒的に足りていないだろう。今の教育課題を解決するには、
ICTの整備、業務支援システムの充実、人材補充が必要だが、そこまでの予算はない。
日本は社会保障費の予算が年々増えている。教育関係の予算の割合は諸外国と比較して著しく低い。
(参考 日本の教育への公的支出、34か国中最下位<国別割合比較表>)
日本の未来を担う子どもたちにより良い教育を行わなければならないはずだが、現状の予算配分では難しいだろう。
医療費をはじめとする社会保障費を削減し、教育への配分を増やす必要がある。
組織にはヒト・モノ・カネの3つが必要不可欠だ。これは経営をする上で基礎中の基礎だが、なんと学校には3つとも不足している。
まさに「沈みかけた船」だろう。このままでは船に乗る子どもたちや教員は溺れてしまう。
しかし教育現場の課題は、これだけではないのだ…(続く)