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(サッカー)2024.3.9_J1_FC東京×ヴィッセル神戸@味スタ


introduction

先週末の3月2日に行われた、J1リーグでのホーム開幕戦から1週間。我らがFC東京は再びホーム・味スタでの連戦となる。この3月から4月にかけての東京の試合日程は少し歪で、2,3節とホーム連戦を戦ったかと思えば、4,5節はアウェイ連戦、6,7節は再びホーム連戦・・・といった具合。もう少し上手く日程を組めなかったものかとも思うが、降雪地域のクラブなどがアウェイ連戦での開幕というハンディキャップを強いられていることなどを考えると、強く文句は言えまい。今節ホームに迎える相手は、昨季のJ1リーグ王者・ヴィッセル神戸。リーグ序盤にして早くも大一番を迎えた。

先週の試合は曇りがちな天候もあって厳しい寒さとなった飛田給だが、本日は朝からスッキリとした晴れ模様。公式記録の気温は先週よりも低い9.3℃となったが、日向にいればさほど寒さは感じない。京王線を飛田給で降りると、心なしか若い世代の仲間やカップル連れが多く見受けられ、新規ファンを増やしたいであろうクラブの集客効果が多少は実を結んでいるのかなと思える。ただ、いざスタジアムに着いて入ってみると、入りは先週よりもかなり少なめ。ビジター席の神戸サポーターも、先週のサンフレッチェ広島のサポーターより少なかった。結果的には24,974人という入りで、個人的には少し拍子抜けという印象だ。

開幕から2試合を終えて、J1リーグは2連勝を挙げたチームが1つも無いという異例の様相。第2節にして全勝のチームが消滅するのは、2005年シーズン以来19年ぶりのことだという。2005年といえば、J1に通年制が導入された最初の年であり、最終節の「長居の悲劇」によってガンバ大阪が劇的な逆転優勝を果たしたことで知られる、伝説的な幕切れを迎えたシーズン。たった2試合のみの結果が符号しただけで今季のリーグ戦が混戦になると予想するのはいささか早計だろうが、東京としては少なくともその「集団」に食らいついていきたいところだ。

東京は開幕2試合を終えていずれもドロー。前節の広島戦は、後半に先行を許したもののすぐさま荒木のゴールで追いつき、最終的に1-1のドローに持ち込んでいる。今季上位進出を予想する人が多い広島を相手に上手く立ち回ることができたという自信と、主に攻撃面で昨季から見違えるような進化が見られないことへの不安が入り混じる結果だっただけに、まずは早い段階で勝点3を獲得し、今のサッカーへの自信を確固たるものとしたい。今節は前節スタメンだった原川がメンバー外で、代わりに小泉が先発。控えには今季新加入の小柏に加え、昨年4月の試合中にアキレス腱を断裂して長期離脱を余儀なくされていた中村が戦列復帰後初のベンチ入り。選手紹介時のスタンドからは大きな拍手が起きていた。

対する神戸は開幕2試合を終えて1勝1敗。昨季リーグ王者の自信を手に臨んだ開幕戦はアウェイでジュビロ磐田に2-0と完勝し、さすが神戸という印象を受けたものだが、前節のホーム開幕戦に柏レイソルを迎えた試合では、最後まで攻撃が噛み合わず、逆に終盤の失点によって0-1で敗れるという結末だった。今節はその柏戦で負傷交代を余儀なくされた汰木が欠場、代わりに広瀬が4-1-2-3のウイングのポジションで出る模様。どのような並びになるのか注目される。

1st half

神戸のスタートの並びは予想どおりの4-1-2-3。今季初先発の武藤が右、広瀬が左のウイングに入り、今季川崎フロンターレから完全移籍で加入した宮代がインサイドで山口と組む形。ただ、山口はどちらかといえば中盤のサポートや潰しに回るため、必然的に宮代がほぼほぼトップ下に近い機能をしていた。

前半は開始早々から神戸が仕掛けてくる。3分、自陣内に押し込められた東京は森重が一度クリアを試みるが、これがハイプレスをかけた神戸の選手に当たり、ボールはフリーの武藤のもとへ。そのまま武藤がミドルシュートへ持ち込むが、危うくシュートは枠の右をかすめて外れていく。いきなり肝を冷やすシーンとなり、スタンドからどよめきが起きる。

更に5分、神戸は左サイドを攻めてボックス付近から中に入れようとしたボールを森重がぎりぎりでカット。CKに逃れたかに見えたが、ここでVARが介入し、オンフィールドレビューに。ビジョンには森重の手に当たってボールのコースが変わる映像が流れ、アウェイ側スタンドからは歓声が起きる。清水主審の判定はPKに変更。蹴るのは勿論大迫だ。しかし助走をつけてボールを蹴るインパクトの瞬間に軸足を滑らせたようで、力の無いシュートは大きく枠の外へ。大迫のよもやのPK失敗にスタンドから歓声があがり、再び活気を取り戻す。

しかし試合の主導権は引き続き神戸が握る。東京は前節と同様に自陣からのビルドアップを試みて、ある程度攻め込むことはできるものの、一度拾われるとすぐさま大迫や武藤に繋がれて裏を返されそうになるため、素早い帰陣の方に意識を持っていかれがちだ。25分すぎには意識して前からプレスをかけにいく時間帯が少しだけあったものの、神戸の組み立てによって割とあっさり攻略されてしまい、それ以降は再び自陣で待つ形の守備対応へと戻ってしまう。

カウンターをなかなか撃てない故、攻撃は散発的になるが、何度か得ることできるCKでは競り合いで優位性に立てる場面も。中でも右CKはしばらく松木がキッカーだったが、今日はバングーナガンデがキッカーを務めていて、悪くない形を何度か作れている。しかし神戸の守備も良く、決定機までは至らない。東京もリスクマネジメントをしながらの試合運びで、大迫のPKの場面以降はビッグチャンスは作らせず、0-0のまま前半終了。攻撃のチャンスを全くといっていいほど作れなかったことを考えれば、無失点で終えられたのは御の字だ。辛抱強く戦い抜くしかない。

2nd half

試合が動いたのは後半の早い時間だった。50分、東京は右CKを得ると、バングーナガンデが中央に入れた所の競り合いでファーにこぼれたボールをフリーの小泉がプッシュ。地を這うような低い弾道の強烈なシュートに対し、ゴールマウスのカバーに入っていた神戸の選手がカットを試みるが、ボールの勢いが勝り、僅かにコースを変えただけでゴール左隅に突き刺さる。前半から可能性を感じさせる場面のあったCKから、東京が1-0と先制。今季初めて、公式戦でリードを奪うことに成功した。

しかし神戸もすぐさま反撃。55分、アタッキングゾーンを押し込む流れから右SBの酒井が2度に渡り強烈なシュートを浴びせるが、いずれも波多野がストップ。ここはどうにかピンチを凌ぐものの、続く57分、今度は大迫のポストプレーから宮代が武藤へ繋ぎ、武藤は左サイド裏のスペースへパス。そこにタイミング良く攻め上がった広瀬がゴールラインぎりぎりでクロスを入れると、中に詰めてきた宮代が空中で競り合いながらも頭で押し込んで1-1。先制してから僅かに7分、東京は撤収のゲームプランを遂行する暇もなく追いつかれる。

60分、神戸は再び左サイドから広瀬がボックス角付近からシュート。これが東京の選手に当たってコースが変わり、転々と跳ねたボールがゴール右ポストをヒット。ラッキーな失点回避でスタンドを大きなどよめきが包む。東京は62分に遠藤を下げてジャジャを投入。スペースで勝負できるジャジャが入った影響か、今度は東京がセカンドボールを拾えるようになり、しばらく東京が神戸を押し込む展開に。勝負を決めるならこの時間帯に逆転まで持っていきたい。

しかし、えてしてこういう時に落とし穴が待っているものだ。70分、神戸は広瀬が裏のスペースへ出したボールに宮代が反応して抜け出そうとすると、半身ほど遅れて追う形となったエンリケがボックス手前で宮代を手で止めてファウル。これに福島主審から提示されたのはレッドカード。どうやら決定機阻止の対象となってしまったようだ。VARのチェックも一応入るものの判定は変わらず、スタンドのブーイングが空しくこだまする中、一発退場となったエンリケがピッチを去る。このファウルで得た直接FKを蹴るのは大迫。ゆったりとした助走から右足を振り抜くと、これが鮮やかなコースを描いて壁を越え、波多野が懸命に伸ばした右手をかすめ、左上部のクロスバーをヒットしながらゴールイン。大迫の針の穴を通すような高精度弾により、神戸が1-2と逆転に成功する。木本を投入してまずは立て直したかった東京にとって痛い失点だ。

10人の東京は4-2-3の布陣を敷いてなるべく前線を厚くしようとするが、神戸は74分に左サイドの本多と広瀬を下げ、初瀬とパトリッキのオフェンシブなユニットにスイッチ。数的有利ということもあってか、強気の采配だ。東京は74分にバングーナガンデの左サイドの突破からジャジャがカットインを試み、最後にボールを引き取った松木が利き脚でない右でフィニッシュに持ち込むが、枠内を捉えたシュートは前川が弾き出し、このチャンスを生かせない。

パトリッキが入ったことで脅威を保つ神戸の攻撃陣に対し、これ以上突き放されるわけにいかない東京は83分に長友を下げて長期離脱明けの中村を右SBに投入。スタンドからは大きな拍手が贈られる。これと同時に最前線の荒木と仲川が下がり、味スタデビューの小柏と俵積田が入る。小柏が持ち前のアジリティを生かしたハイプレスで神戸の最終ラインに制約をかけにいくが、カウンターに繋がるようなボール奪取には至らない。

試合終盤の90分、東京は左サイドを起点として中央へ切れ込む攻撃から直接FKを獲得。ゴール真正面の絶好の位置で松木がボールをセットし、左足を振り抜くが、ボールは僅かに枠の右に逸れていく。膝をつき、ピッチを叩いて悔しがる松木の姿がこの試合最後のハイライトといえる場面だった。7分と長めにとられた追加タイムでもドラマは起きず、このまま試合終了。1-2の逆転で接戦を制した神戸が勝点3を確保。東京は今季初の敗戦となった。

impressions

両チームの間に明らかな実力差があるとまでは思わなかったが、それでも神戸の地力が上回ったゲームだった。神戸にとってみれば、前半の大迫のPK失敗に始まり、ゲームを支配しながらも後半に東京に先制を許すという非常に厳しい展開だったが、それでも早いうちに同点に追いつき、更に逆転まで持っていった。東京が退場者を出したことで有利に試合を運ぶことができたという点はあるが、それでもアウェイでしっかりと勝ち切ってくるところはさすが昨年の優勝チームである。

神戸はチームの攻撃の中心である大迫がポストプレーで何度となく攻撃の起点となり、今日も獅子奮迅の活躍ぶり。決勝点となった直接FKも見事というほかない。だがそれ以上に印象的だったのは新加入選手の活躍だ。前節の試合で汰木が負傷しチームを離脱した中、今日は左ウイングに広瀬、更にインサイドには宮代がそれぞれ加入後初スタメンとなったが、この2人が決定的な仕事をした。1点目は広瀬の折り返しを宮代が押し込んだものだし、2点目に繋がるエンリケの退場シーンは広瀬が裏のスペースへ出したボールに宮代が反応したことで生まれたものである。もちろんこれは2人のセンスとテクニックによる部分が大きいのだろうが、同時に神戸の戦い方への適応が早かったことの証左でもある。神戸のチーム強化の賜物といえるだろう。

東京は内容についてはそれほど悪いとは感じなかった。神戸と比較して何かが決定的に劣っていたというわけでもない。ただ、感覚的なものだが、言語化するならば、「相手にとって想定内のことしかやれていなかった」というのが敗因の1つかもしれない。アタッカー陣の個人技頼みの攻撃は昨季までと特に変わりなく、カウンターさえ封じてしまえばそれほど東京は怖くないというのが実際のところだろう。手数をかけたビルドアップでも形は作れているが、フリーでシュートを撃てる場面というのは極めて少なかった。広瀬や宮代といった前線のカードが機能した神戸と対照的に、荒木や遠藤といった東京の新戦力は今日は輝くことができなかった。

守備においても神戸の強力なアタッカー陣に対してどうにか渡り合っていたとは思うが、後半に裏のスペースで勝負され、ネガティブトランジションの所でミスが出てしまうという昨季からの「悪癖」が露呈。最終ラインを高めに設定している以上、裏を突かれることはある程度織り込み済みなのかもしれないが、さすがに退場者を出すと厳しい。本当ならばもっと前からプレスをかけに行って奪いきりたいのだろうし、実際意識して奪いに行った時間帯もあったが、今日の神戸はそれを上手くスキップしてきた。あくまでもハイプレスにこだわるか、あるいは戦い方を変えるのか、シーズン序盤ながら早くも難しい悩みに直面している。

開幕戦から2戦ドローが続いていた東京は、今日が初めての敗戦。シーズンが始まってから未だ勝利を挙げられていない状況が続いている。今日に関しては先制点を挙げることができたし、一度同点に追いつかれてもそれほどムードは悪くなかったが、現実として逆転を許してしまった。内容が悪いわけではないのに結果が出ないというのは、プレーする側にとっても苦しいものだろうし、観る側にとってもしんどいものがある。セットプレイに工夫が見られることや、負傷離脱していた選手の復帰など、ポジティブな材料はまだあるので、今はそれらをかき集めて早く結果を出すしかない。

第2,3節と味スタでの連戦だった東京は、次節からアビスパ福岡、川崎フロンターレとアウェイでの連戦。4月に入って以降も浦和レッズ(H)、鹿島アントラーズ(H)、東京ヴェルディ(A)とやりにくいカードが続くだけに、早く勝点3を獲得したい。まずは次節、アビスパ福岡との一戦を乗り切れるかが注目される。しばらく勝てていない九州でのアウェイ戦なだけに厳しい戦いが予想されるが、ずるずるいかないためにもここは踏ん張ってもらいたい。

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