(サッカー)2024.4.7_J1_FC東京×鹿島アントラーズ@国立
introduction
カレンダーが新年度を迎え、4月最初の週末は、個人的に1ヶ月ぶりとなる現地観戦だ。我らがFC東京は3月9日にヴィッセル神戸とリーグ戦のホームゲームを戦った後、アウェイで2連戦を消化。そして4月に入ってからは3日に浦和レッズ、7日(本日)に鹿島アントラーズといずれもホームゲームでの連戦が組まれている。3日の浦和戦は平日ナイトゲームということもあり、都合がつかずに観戦を見送ったが、日曜開催の鹿島戦は観戦予定をしっかりと入れてある。この連戦は味の素スタジアムではなく国立競技場での開催となっており、いつもより早めに自宅を出発した。
試合のキックオフは17時。本日に予定されているJリーグの試合で最も遅いキックオフだ。帰宅が少し遅くなるので個人的にはもう少し早い時間に設定してくれた方が助かったのだが、今日は朝から日差しの強い一日となり、最高気温22℃ながら半袖でも過ごせそうなほどの暖かさだったので、結果的にはイブニングゲームでちょうど良かったのかもしれない。国立には52,772人超えの観客が集まり、入場ゲートでは少し並んだがどうにかバックスタンド2層目の自分の指定席に到着。ホーム側のゴール裏には各座席に青赤のフラッグが置かれ、コレオグラフィーのような鮮やかな模様が広がっている。一方のビジター席の鹿島サポーターも1,2層目をしっかりと埋めて圧巻の応援を見せており、雰囲気は文句なしに素晴らしいものだった。
我らがFC東京はここまで2勝2分2敗のイーブンペース。3月16日のアビスパ福岡戦(A)で今季初勝利を挙げ、遅まきながらここからスタートを切れるかと思いきや、第5節の川崎フロンターレ戦(A)では0-3の完敗。しかし前節、4月3日に行われた浦和レッズとのゲームでは、前半に東京のゴール取り消しや相手のスーパーゴールによる失点、更に負傷交代などアンラッキー要素の詰め合わせといえる展開だったにも関わらず、後半に荒木と松木のゴールでひっくり返し、2-1で勝利するという大きな勝点3を挙げている。それだけに前節の勢いを持ち込みたい東京だが、今日は大きな課題を抱えている。今節は鹿島から期限付き移籍で加入している荒木が契約条項の縛りにより出場できないのだ。ここまでチームの中心的存在だった荒木抜きでどこまでやれるか注目される中、3トップの頂点には仲川が入りそうだ。中3日のややタイトな日程だが、スタメンには前節活躍した土肥・安斎・俵積田といった若手選手が今日も名を連ねる。また最終ラインには前節途中出場で存在感を見せた白井が入っている。森重がベンチスタート、長友がメンバー外など、一気にチームが若返った感がある。
対する鹿島はここまで3勝1分2敗。今季から指揮官に就任したポポヴィッチ監督のもと、リスタートのシーズンとなっている。前節はアウェイでアビスパ福岡と戦い、0-1の敗戦。他チームと同じ中3日のスケジュールだが、常勝・鹿島として連敗だけは避けたいところだろう。前節から並びを変えてくるのかなど、出方が気になる点の多い試合だ。また、東京にとってポポヴィッチ監督はかつての指揮官でもあり(2012~2013年)、個人的にも思い入れのある監督だが、彼が東京を率いたのはもう10年以上も前のこと。選手紹介時にポポヴィッチ監督の名前がアナウンスされた時も、スタンドの反応はブーイングと拍手共に疎らなものだった。
1st half
キックオフ時点での立ち位置を確認すると、東京は予想どおり仲川が3トップの頂点に。荒木がこのポジションを務めた前節までと同様に、前に張らない形のゼロトップシステムを継続するようだ。一方の鹿島はチャヴリッチが右サイドアタッカー、樋口がトップ下に入る4-2-3-1の並び。ポポヴィッチ監督らしく(?)、システムはいじってこなかったようだ。
試合の立ち上がりは鹿島が攻勢を仕掛ける。5分、右サイドの崩しからボックス内に侵入すると、中に落としたボールにフリーで走り込んだ佐野がフィニッシュを狙うが、これはシュートコースに入ったエンリケがブロック。その後もチャヴリッチが絡む右サイドの組み立てに東京は一旦受ける時間帯が続く。9分、東京はボール回収した俵積田がドリブルで左サイドを攻め上がり、カットインからシュートに行くが、こちらも相手のブロックが入りゴールを脅かすには至らない。15分には再び左サイドを攻め、バングーナガンデのパスを受けた仲川がシュートへ持ち込むがこれもカットされる。
ボールの回収位置が全体的に低めの東京はまずは自陣でポゼッションする時間が多いが、これに対して鹿島はそれほど高い位置から制約はかけてこず、中盤あたりから圧力をかけてくる形が多い。ある程度自由にやらせておいて、カウンターで刺す鹿島の狙いは明白だ。守備における注意ポイントはただひとつ、1トップの鈴木にボールを入れさせないこと。ここはチームとしても徹底しているようで、鈴木がボールを収めたら早いうちに動きを封じ、ファウルを冒してでも止めておく意識が見える。
その後も互いにゴール前での守備が固く、決定機の生まれない時間が流れる。25分、東京は再び俵積田がドリブルからのカットインでシュートにいくがGKの正面。29分には鹿島の左CKから大外で待っていた関川がフリーでヘディングを放つが、野澤が難なくキャッチ。いずれも枠内シュートではあったがビッグチャンスというほどではなく、引き締まった展開が続く。
40分、東京は仲川が自陣に下りてきて組み立てに関与し、前を向こうとしたところで相手のプレスに引っ掛けられる。こぼれ球がフリーの鈴木に入り、一瞬にしてピンチとなるが、守備がどうにかカバー。このチャンスを機に鹿島が1段ギアを上げてくるが、東京は集中した守りを見せ、これ以上の決定機を作らせない。結局、0-0のまま前半終了。立ち上がりと終盤に押し込まれる時間帯があったのは怖かったが、全体的にはまずまず戦えていた内容だった。とはいえ、いつ一発で裏を返してくるか分からないのが鹿島の怖さ。この独特の緊張感は鹿島戦ならではのものだ。
2nd half
後半最初のチャンスは鹿島。49分、鈴木の折り返しを知念が拾ってシュートにいくが僅かにバーの上。対する東京も54分に俵積田がドリブルでボックス内に侵入し、相手のマークをかわしながら右45度の角度から速いクロスを送り込むが、これも中の味方に合わず。ゴール前をボールが高速で横切る形となり、スタンドからは悲鳴のような絶叫がこだまする。
しかしスコアが動いたのはこの直後だった。55分、左サイドでバングーナガンデが攻め上がり、1つ内側のレーンにサポートに来た松木へパス。その松木がゴール前のスペースへクロスを送り込むと、そこにいち早く走り込んだのは仲川。同じタイミングでGK・早川が飛び出してきたため、ゴールマウスはがら空きだ。仲川がヘディングでコースを僅かに変えると、無人のゴールに転々とボールが転がり込む。これで遂に均衡が破れ、1-0。独特の緊張感から解放されたホーム側スタンドからは大歓声が上がる。東京にとっては良い流れが来ていた時間帯にしっかりと1点を取りきることができた。
61分、リードを許した鹿島が先に動く。左サイドアタッカーに入っていた仲間を下げ、スピードが持ち味の藤井を同ポジションに投入。するとこの藤井が早くもチャンスに絡む。64分、左サイドでボールを受けた藤井がカットインからミドルシュートに持ち込む場面を作ると、66分には左サイドの縦の突破を見せて対面の白井のファウルを引き出し、白井にはイエローカードが出される。東京としてはこれ以上サイドを押し込まれると苦しいところだ。直後の67分、東京は自陣でのボール奪取から松木が相手の厳しいマークを受けながらも、左サイドで待つ途中出場の遠藤へパス。ここからファストブレイクが発動。遠藤がドリブルで一気にアタッキングゾーンまで前進し、ハーフスペースから折り返したボールに仲川が飛び込むが、仲川の身体に当たったボールは惜しくもクロスバー。横浜F・マリノス時代の連携を彷彿とさせる、2人で完結させたパーフェクトなカウンターだったが、これを得点に結びつけることができない。
追加点のチャンスを逃した東京に対し、鹿島は徐々にセカンドボールを拾うようになり、ポゼッションを増やしていく。依然としてチャヴリッチと藤井の両サイドは脅威だが、東京の選手たちもある程度はアジャストしてきたのか、サイドを深くまで切り崩されたり、ハーフスペースまで入り込まれる場面はそれほど多くなく、しっかりと跳ね返すことができている。75分、東京はここまで豊富な運動量でボールに関与し続けた仲川と高の2人を下げ、ジャジャと原川を投入。対する鹿島も80分に3枚替えを敢行。トップ下に土居、右サイドに松村、そして中盤の底に新加入のミロサヴリェヴィッチを投入する。ミロサヴリェヴィッチは高精度のロングパスを駆使してゴール前へボールを配給してくる。ここが踏ん張りどころだ。
82分、東京は相手陣内で鹿島の中途半端なパスをジャジャが奪い、ショートカウンターが発動。ジャジャが松木にボールを渡し、そのまま裏のスペースへ走ったジャジャへ松木がリターンのスルーパスを出してGKと1vs1の絶好のチャンス。しかし、飛び出してきた早川の鼻先をかわそうとジャジャがふわりと浮かせたフィニッシュはゴールの左に外れてしまい、またしても追加点ならず。東京が1点もののチャンスをまたしても潰してしまう。これに乗じて鹿島の勢いはますます強くなり、ややハーフコートゲームの様相を呈してきた。88分、東京は最後の交代で右サイドに徳元を投入。藤井に対しては徳元と白井のダブルチームで対応する。後半の追加タイムは6分。どうにか守れてはいるものの、息の詰まるような1点差の展開が続く。
予定されていた追加タイムもその多くを使い切り、そろそろタイムアップの時間が近づいてきたと思われた試合終了間際。東京は中盤でボールを回収した原川が松木に楔のパスを入れ、自らも攻撃参加。松木がタイミングよくリターンパスを渡すと、フリーで受けた原川は左足を一閃。これがゴール左上隅に突き刺さる。試合にケリをつける大きな追加点で2-0。東京がこの試合の勝利を実質的に確定させた瞬間だった。ボールをセンターに戻して再開した直後にファイナルホイッスルが吹かれて試合終了。東京が聖地・国立での重要な一戦を制し、今季初のリーグ戦2連勝を飾っている。
impressions
鹿島のサッカーを完全に封じたというわけではなかったが、それでもスコアが示すとおりの会心の勝利だった。今季リーグ戦6試合を戦って一度もクリーンシートが無かったが、ようやくの90分間無失点を達成。攻守共に手応えを得られる勝利だったのではないか。今日は前節の浦和戦に続き国立競技場での開催だったが、改築後の国立での試合は未だに負けなしを継続中。「国立男」と言われたレアンドロやアダイウトンがクラブを去った後もなおチームはこのスタジアムで結果を出し続けている。その積み重ねこそが選手たちに自信を与えているのかもしれないが、ここまでチームの中心的存在たった荒木が出場できないにも関わらず、勝ちきったチームの勝負強さは立派の一言に尽きる。
鹿島は前半は怖かった。サイドに配したチャヴリッチはもちろん、サイドバックのサポートも多く、一発で裏をとってきそうな危険な雰囲気を常に漂わせていた。しかし後半に先制を許してからは幅を使いきれていなかったようにも見える。左の藤井は間違いなく脅威で、白井に1枚警告を出させるところまでは計画どおりといった感じだったが、サイドを完全に崩し切るまではいかず、東京の最終ラインの目線をずらすことができなかった印象。最大の得点源でもある鈴木も後半はそれほど存在感は無かった。
東京は我慢するべき時間で我慢し、自分たちに流れが来たところで先制できたのが大きかった。3トップの頂点に入った仲川は、本職のポジションではないが、豊富な運動量で中盤にもに顔を出し、更にはここぞという場面での責上がりから値千金の決勝点。ベテランの力を見せつけ、荒木の不在を感じさせなかった。また俵積田は左サイドから何度もドリブルを仕掛けてチャンスを作ったし、右サイドの安斎もバランスを上手く取りながら対面の安西をチェック。地味にここを抑えられたのは大きかった。守備では土肥とエンリケが最後まで裏のスペースを明け渡さず。サイドでは後半に白井の所を狙われたが、ここも時間を経るごとにマークの受け渡しが的確に行われていた印象だ。途中出場の選手も、2点目を決めた原川を筆頭に、どの選手も与えられた役割を見事に遂行した。
どの選手もベストに近いパフォーマンスを見せた中で、特に際立つプレーを見せていたのは松木だ。2つの得点をアシストしただけでなく、得点には至らなかったが67分の仲川の決定機と82分のジャジャのシュート場面のいずれにも絡み、チャンスメーカーとして圧巻の働きぶりだった。これまでの松木はボランチの位置で攻守両面でハードワークしてくれる印象だったが、現在のゼロトップシステムに変更してトップ下にポジションを移してからはよりゴールに直結するような仕事をやってくれている。今季からはゲームキャプテンも任されるようになり、ピッチ上で感情をむき出しにする場面も多く見られ、もはや代えのきかない存在だ。
もちろん全く課題が無かったわけではない。特に先制した後に追加点を取れるビッグチャンスが2回あったので、そこは確実に仕留めておきたかった。今日に関しては鹿島の猛攻を抑えることができたので良かったが、複数得点差で試合終盤を迎えることができていればもう少し楽に試合を運ぶことはできたはずだ。次節からはU-23日本代表がパリ五輪の予選を兼ねたU-23アジアカップに出場する関係で、この代表に選出された松木・荒木・野澤の3人が当面の間チームを離れることになる。現在のチームのキープレイヤーを一気に欠く状態でどこまで戦えるかが今後の鍵になるだけに、チャンスを確実に決めきる勝負強さはチームに更に求められそうだ。
試合後、ホーム側スタンドからは挨拶にやってきた選手たちに対して「ヴェルディだけには負けられない」のチャントが歌われた。いよいよ次節はリーグ戦では13年ぶりとなる、東京ヴェルディとのダービーマッチ。ベストメンバーを組めない中での大一番となるが、この2連勝で得た勢いでライバルチームを圧倒してくれることを期待したい。