(サッカー)2022.11.23_地域CL_栃木シティFC×FC刈谷@熊谷陸
introduction
今日は全国地域サッカーチャンピオンズリーグの決勝ラウンドを観戦するために熊谷スポーツ文化公園陸上競技場に来ている。第1日となる本日の第1試合では、Bグループ首位の沖縄SVとCグループ首位のブリオベッカ浦安が対戦して0-0のスコアレスドロー。両チームがリスク管理を徹底した戦いぶりを見せ、改めて決勝ラウンドの重要性と、それに由来する緊張感を覚える試合だった。13:30からの第2試合は、Aグループ首位のFC刈谷と、同じくAグループ2位ながらワイルドカードで決勝ラウンドに進んだ栃木シティFCの対戦である。
栃木と刈谷は群馬で行われた1次ラウンドの第1日で既に一度顔を合わせており、その際には1-1のドロー。刈谷が先制して、栃木が終盤にPKでどうにか追いつくという展開だった。両者はその後、第2日と第3日の試合で共に勝利し、勝点7でフィニッシュ。得失点差も共に+3で並んだが、得点数の差で刈谷が首位通過。栃木も全グループの2位チームの中での最上位となり、ワイルドカードで決勝ラウンド進出を果たした。
個人的には、長らくウォッチし続けているチームでもあるし、やはり刈谷を推したい気持ちが強い。ただ、1次ラウンドの試合内容は3試合全てが際どいものであったし(自分が現地で観た第2日なんかはまさにその極致だった)、決勝ラウンドともなれば、対戦相手のレベルが格段に上がる。JFL昇格が極めて険しい道のりであることは言うまでもないだろう。刈谷にとって勝機を見出す要素があるとするならば、それは「この大会が地域CLである」ということだ。決勝ラウンドが3日間の連戦でなくなったことでイレギュラー要素は少し低減されたものの、何が起こるか分からないのがこの大会の面白さ。そこに期待したい。
両チームのいわゆる「ベストメンバー」はよく分からないが、発表されたスタメンを見る限り、どちらも決勝ラウンド進出の鍵を握ったキーマンが名を連ねている。栃木は1次ラウンドの2,3戦目で立て続けの決勝点を挙げた曺永哲がおそらく3トップの中央。刈谷も2戦目に途中出場から劇的な決勝点を決めた藤原がスタートからの登場だ。なお刈谷は1次ラウンド最終節でGKの兒玉が退場となったため、この試合は出場停止。代わりにセカンドGKの宮﨑がゴールマウスに入る。
1st half
立ち上がりこそ栃木が人数をかけた攻めで圧力をかけたものの、この試合最初のチャンスを作ったのは刈谷。4分、右サイド裏のスペースに出たボールを藤原が強烈な加速で追い付き、マークを振り切ってクロス。ニアで栃木の守備がカットするが、その先には鈴木がしっかり走り込んでいた。1次ラウンドのくりやま戦で劇的なゴールを挙げている藤原の存在は鍵になりそうである。
12分、栃木は右SBの野田が中の陣形が整う前の早いタイミングでクロス。ゴール前の曺永哲が競り勝ち、頭で落とした先に待っていたのは加藤。冷静なトラップからシュートをゴール左隅に流し込み1-0。前回対戦とは変わり、栃木が先にリードを奪う。刈谷は曺永哲にマークが集中してしまい、後から入ってきた選手への対応がルーズになってしまった。
栃木はこの勢いのまま追加点を狙いたいが、23分に刈谷のパスミスを拾って得た表原のシュートチャンスはGKの正面。38分には序盤から再三にわたり鋭いカットインを見せていた吉田がハーフスペースからシュート性の折り返しを送り込むが、これも中に味方がおらずゴール前を横切っていく。一方の刈谷は後方の対応で若干怪しい部分を覗かせるものの、失点のショックを見せずに前からボールを狩りに行く。その影響もあってか、決定機までは生まれないものの、アタッキングゾーンに侵入する場面は作れるようになる。
45分、刈谷はサイドの崩しから獲得したFKを齋藤がゴール前に蹴り込み、混戦となったこぼれ球を秋本が押し込もうとするが、シュートはゴールの僅かに左。前半最大のチャンスを生かしきれずに1-0でハーフタイムに入る。あっさり栃木が先制した一方、その後は刈谷が立て直して互角に近い戦いができている印象だ。強力な栃木の攻撃をかわしながら追いつけるかが後半の見どころになるだろう。
2nd half
後半は立ち上がりから栃木の攻勢。47分に左SBの佐藤がPA内に侵入してパワーシュートを放つものの、GKの宮﨑が弾いてピンチを阻止。53分にもエリア内の混戦のこぼれ球を曺永哲が押し込もうとするが、ここにも刈谷のカバーが入ってゴールを割らせない。
早々に栃木の猛攻を浴びた刈谷だが、ここから攻勢を見せる。56分に自陣でのボール回収からロングカウンターが発動し、最後はゴール正面で前を向いた鈴木がシュート。これは当たり損ないとなりGKがキャッチするが、綺麗な速攻。両者共に中盤にスペースが生まれやすくなり、縦移動の激しい試合展開になりはじめている。
刈谷が徐々に前がかりとなる一方、栃木も追加点を狙う。64分には吉田の右サイドの突破から正面のエリア外でボールを受けた安東がシュートに持ち込むがシュートは枠の右。68分には刈谷が押し込む展開からルーズボールを拾った吉田がドリブルで一気にゴール前まで持ち込むが、刈谷のカバーが間に合ってどうにかクリア。栃木も突き放す1点を奪えない。
73分、栃木は右サイドをドリブルで切り崩した吉田がグラウンダーで折り返し、中央に走りこんだ岡庭がシュート。するとこれがブロックに入った刈谷DFに当たり、こぼれたところに待っていた曺永哲が押し込んで2-0。やや押され気味だった栃木にとっては待望の追加点だ。刈谷はゴール前の人数が足りていただけに運に見放されたような失点だが、吉田の突破に対して前半から効果的な対処ができていなかったので、致し方ないようにも思える。
ただでさえ重かった1点のビハインドを更に広げられた刈谷は、焦りを見せずにオープンスペースを使いながら引き続き攻勢をかけるものの、2点リードとなり余裕を持ちながら撤収モードに入った栃木の守備は堅く、これといった見せ場を作ることができず。結局、残り時間はほぼ「無風」といえる展開が続き、タイムアップのホイッスルを迎えた。重要な決勝ラウンド初戦をクリーンシートで制した栃木が4チーム中唯一の勝点「3」を確保。JFL昇格が内定する2位以内確保に対し、早くも「王手」をかけた。
impressions
栃木にとって重要な意味を持つ1勝となった。1次ラウンドで苦戦を強いられた刈谷との再戦という難しいシチュエーションだったが、ここに来て同じ轍を踏むことはなかった。まだ初日を終えただけにすぎないが、沖縄と浦安がドロー発進だったため、まずは勝点で単独首位に立った。残り2戦は最低でもドローを2つ揃えればほぼ2位以内を確保できる状況となった。まだこの大会で負けが無い栃木にとって、JFL昇格に向けた大きな一歩を踏み出したといえるだろう。
栃木の勝因は、シンプルではあるがやはり先制点を取れたことに尽きる。刈谷の守備ブロックが整う前に野田がクロスを入れ、DFのマークが乱れたところを曺永哲が冷静に見極めてフリーの佐藤に落とし、アシストを記録。この1点で試合運びが圧倒的に楽になった。その後は刈谷の速攻に苦しめられる場面もあったが、基本的には刈谷が前に出てきたことで生まれた後方のスペースを使った攻撃を続け、どこかで追加点が奪えれば文句なしという展開。そして実際にその形から2点目を奪い、勝利を確実なものとした。栃木のしたたかさが出た結末と言えるだろう。
スタメンで出た曺永哲はもちろんのこと、それをフォローする選手たちの活躍が光った。1次ラウンドで観た際にはインサイドの表原が1人で仕掛けてチャンスを作っていたが、今日の表原はどちらかといえば抑え気味で、代わりにもう片方のインサイドを務める佐藤が決勝点。また後半にスペースが出来てからは右ウイングの吉田が再三にわたりドリブルで仕掛け、これが2点目のきっかけにもなった。分厚い攻撃ができる強みが出た。
一方、刈谷は持ち味のカウンターを見せる場面が極めて限られてしまった。前半をスコアレスで耐えきるなど、ある程度試合を膠着状態に持ち込むことができればチャンスはあったかもしれないが、試合の序盤で早々にスコアを動かされてしまい、実にタフな試合となってしまった。1次ラウンドで一度は善戦した栃木と、決勝ラウンドの初戦で再び顔を合わせるという巡り合わせも刈谷にとっては嫌だったかもしれない。いずれにせよ、この敗戦を引きずらずに次の試合に臨めるかどうかが鍵となるはずだ。
第1日の2試合を終え、勝点の並びは「3-1-1-0」で栃木が一歩抜け出した。中1日を空けて明後日に行われる第2日では、栃木が沖縄SVと、刈谷がブリオベッカ浦安とそれぞれ対戦を予定しており、この2試合で昇格をほぼ確定させるチーム、あるいは脱落するチームが出てくる可能性が高い。自分は現地で観られるのはこの第1日だけであるが、残り2日でどのような決着を見るのか楽しみにしたい。