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(サッカー)2024.4.21_J1_FC東京×FC町田ゼルビア@味スタ


introduction

4月13日に行われた東京ヴェルディとのダービーマッチの死闘から、はや1週間が経った。この間、我らがFC東京は水曜日にルヴァンカップの試合を戦ったこともあり、あっという間に次の週末が来てしまったように感じる。そんなスピード感でやってくる今週末のリーグ戦の相手は、今季から初めてのJ1でのシーズンを戦っているFC町田ゼルビア。東京とは同じ都内を本拠地としている「ご近所さん」であり、トレーニングマッチでは幾度となく対戦してきた間柄であるが、公式戦では初めての顔合わせである。

今日の東京は朝からどんよりとした曇りで、夕刻からは降水確率が上がるとの予報。実際、飛田給に着いて味スタへ移動する間、僅かながら小雨がぱらつく時間もある。しかしピッチコンディションや試合観戦の妨げになるようなレベルには程遠く、気温も快適な範囲内だ。バックスタンド住民としては下手に晴れて夕方に西日が眩しくなる方がむしろ苦痛で、このくらいの天気になってくれて良かったなとも思う。入場してビジター席を見やると、町田サポーターは下層スタンドはもちろん、上層スタンドまでほぼ満員といって良い入り。町田サポーターが多く住んでいると思われる小田急線沿線からは飛田給まで比較的簡単にアクセスできるということもあり、これだけ来てくれたのだろう。それにしても、数年前まで野津田のスタンドを埋めることすら稀だったファンが一気にこれだけ膨れ上がったのだから凄い。町田の急成長ぶりを試合前から見せつけられた気分である。

リーグ戦は第8節までを終えており、ホームの東京は現在3勝3分2敗。リーグ戦では直近3試合で敗戦が無い。冒頭で触れた前節の東京ヴェルディとの一戦では、退場者を出して数的不利ながらも、2点差を追いつくカムバックを見せて勝点1をキープ。水曜日に行われたルヴァンカップでは、J3のY.S.C.C.横浜を相手にアウェイで4-0と快勝している。この試合でも小柏とジャジャに加入後初ゴールが生まれるなど収穫は多く、チームの雰囲気は決して悪くない状況だ。今節はU-23日本代表組(松木・荒木・野澤)に加え、安斎が出場停止であるが、スタメンの前線にはトップ下に小柏、3トップには遠藤・仲川・俵積田となっており、調子の良い顔ぶれが並んでいる。

対する町田は、前述のとおり今季から初めてのJ1を舞台に戦っている。しかしその成績は、おおよそ「初のJ1」とは思えないものだ。昨季からチームを率いる黒田監督の徹底して勝利にこだわる戦い方のもと、J2を圧倒的な成績で制してJ1昇格を決めたかと思うと、昨オフも積極的に選手補強を敢行。親会社のサイバーエージェントが集中的に現場に資金投入してチームを強化してきた。その成果はシーズン序盤から表れており、チームは現在5勝1分2敗。前節はホームゲームでヴィッセル神戸に敗れ3位に後退したものの、依然としてトップを狙える位置をキープしている。東京とは勝点で4ポイント差であり、勝利できれば上位へのジャンプアップが見えてくるだけに、ここはなんとしても勝ちたいゲームだ。

1st half

スタートの町田の並びは4-4-2。今季は試合によって3-4-2-1や4-2-3-1を併用しており、4日前のルヴァンカップの試合でも4-2-3-1を採用していた町田だが、この試合では通常どおりのシステムに戻してきた。2トップには呉世勲と羅相浩の韓国出身2トップが並ぶ。呉世勲はエアバトルが得意なポストプレイヤーで、羅相浩は2019年に東京にも所属していたドリブルでの仕掛けが得意なアタッカー。分かりやすいが強力な組み合わせだ。

先にチャンスを作ったのは東京。6分、左サイドでボールを持った俵積田がドリブルでカットインすると、仲川を経由して裏のスペースを狙った小柏がボールを引き取ってシュート。狭い角度でGK・谷が抑えるが、俵積田を起点とした悪くない攻撃の形を見せる。

一方の町田は13分、右SBの望月がアタッキングゾーンまで攻め上がり、右のハーフスペースに走り込んだ呉世勲へパスをつけると、呉世勲はダイレクトで後ろへボールを流し、そこにフリーで走り込んだ羅相浩がパワーシュートを狙う。これはエンリケがカットに入ってどうにか逃げるものの、この流れで得た左CKを大外で待っていた羅相浩がダイレクトで右足を振り抜き、これがゴール左隅に突き刺さって0-1。東京の守備はゴール前の人数こそ揃っていたが、弾丸のような弾道にほとんど反応できなかった。できれば与えたくなかった先制点がアウェイチームに転がり込む。

しかし19分、東京は左サイドから中にボールを入れて狭いエリアをこじ開けようと試みたところ、ボックス内でバングーナガンデが蹴ったボールを町田のドレシェヴィッチがブロックする際に手に当ててしまいPKの判定。ラッキーの産物ではあるが、積極的に仕掛ける姿勢が生んだPKだ。キッカーを務めるのは小柏。ゴール右隅を狙ったコントロールシュートに谷が懸命に手を伸ばして、僅かに触れたものの、ゴールポストに当たって入り1-1。小柏にとっては水曜日のルヴァンカップに続くリーグ戦での今季初得点だ。

だが小柏の同点から僅か4分後の25分、再びスコアが動く。町田は最後列の谷がドレシェヴィッチに繋ぐと、ドレシェヴィッチは右サイド裏のスペースへロングフィードを蹴り込む。これに反応したのは右SBの望月だ。バングーナガンデが追走するが、ボールがやや伸びてゴールラインを割ると見切ったか、最後に少し走力を緩める。しかし望月は諦めていなかった。驚異的なスプリントで追いつき、足を伸ばしてラインぎりぎりで折り返すと、中央のゴール正面で待っていた呉世勲がダイビングヘッド。これがゴールに突き刺さって1-2。ドレシェヴィッチのキックを含め、僅か3タッチでゴールに繋げた町田が再びスコアを1点リードとする。DFラインを高く設定していた背後を突かれてしまった東京だが、それにしても簡単にやられすぎだ。

ここからは再び東京が攻勢。30分に仲川がボックス内でアタックを仕掛けたところに相手のブロックが入り、ハンドをアピールしたところでVARによるPK有無のチェックが入るものの、これはお咎めなし。39分には左の俵積田がドリブルで対面の望月を揺さぶり、抜ききってハーフスペースから折り返すが、小柏のヘディングシュートは相手のブロックが入ってCKに逃げられてしまう。その後もセットプレイや俵積田のドリブルでの仕掛けから複数のゴール前での場面を作り出す東京だが、町田の守備が耐えきり、1-2のまま前半終了。肉弾戦が多くて苦労した一方、サイドからは崩せており、絶対的に手の打ちようが無い相手ではない。粘り強く戦いたい。

2nd half

後半最初のチャンスも東京。48分、右サイドでボールを受けた遠藤が裏のスペースに流れた仲川へスルーパスを通し、ゴールマウスを飛び出した谷とボックスの右隅で交錯するような形で倒れ込むが、PKは無し。スタンドからはブーイングが飛ぶが、形は悪くなく、これを続けるしかない。59分には高が小柏に縦パスを付けてアタッキングゾーンに起点をつくり、人数をかけての繋ぎから攻撃参加した白井が左足でフィニッシュに持ち込むが、シュートはヒットしきれずに力なくGKの谷にキャッチされる。

62分、攻勢を続ける東京は左サイドに開いてパスを受けた俵積田がドリブルでカットイン。マーカーをかわして左45度付近からシュート性のボールを中に送り込むと、これに遠藤が足を伸ばしてシュートコースを変える。しかしこれは惜しくもクロスバーを叩き、ゴールにはならず。ホーム側のスタンドからはこの日最大の歓声と溜め息が漏れる。

直後の63分、東京は小柏が足を痛めた様子でプレーを続行できず、ジャジャと交代を余儀なくされる。ここまでの小柏のパフォーマンスは良かっただけに、ようやくフィットしてきた矢先での負傷離脱となると苦しいが、代わりに入ったジャジャが早速フォアチェックからボールを奪って単独でシュートへ持ち込み、積極的な姿勢を見せてチームを盛り立てる。

67分、東京は左の俵積田がボックス内の遠藤へパスを入れたところに町田の林が後ろから倒すような形となるが、これはノーファウル。その後もポゼッションが目まぐるしく入れ替わり、東京がボールを持つたびに町田が厳しいタックルで潰しに来るが、いずれもノーファウル。フラストレーションの溜まった雰囲気がスタンドに充満するのが手に取るように分かる。強度の高い守備を続ける町田は東京よりも先手の選手交代でフレッシュな選手を次々に入れ、途中から前線にはオーストラリア代表のデュークと荒木が並ぶ形で引き続き「一刺し」を狙っている。

73分、東京は高と俵積田を下げ、原川と佐藤を投入。弱冠17歳ながら水曜日のルヴァンカップではなかなか良い働きを見せていた佐藤はこれがJ1デビュー戦だ。トップ下に入った佐藤は中盤の低い位置まで下りてきてゲームメークをする役割を果たす。78分には原川の縦パスを受けたジャジャの仕掛けからゴール前でスクランブルの状況が生まれ、ゴール前に落ちてきたボールに白井が飛び込むが、僅かにタイミングが合わず押し込めない。

刻一刻と時間が過ぎていく中、東京はボールは持てているものの町田の守備ブロックを崩すことができない。単純に中を固められているだけならばパワープレイやミドルシュートを狙うことも可能だが、前を向きたい場面で必ず町田の選手が最低限の人数をマークにつけてくるため、思うようにボールを蹴らせてもらえない。追加タイムの中でも決定機を作れず、結局試合終盤はゴールを脅かすことのできないままタイムアップ。やや尻すぼみとなった恰好の終わり方に対し、ゴール裏からはブーイングが浴びせられた。1点差を守り切った町田は、同時刻で行われていた他会場で首位のセレッソ大阪が敗れたことにより、再度首位に返り咲き。一方の東京はリーグ戦では4試合ぶりの敗戦となり、首位・町田との勝点差は7ポイントとなった。

impressions

町田が自分たちの長所を前面に押し出し、その勢いで東京を飲み込んだという印象の試合だった。公式戦で初対戦ということもあり、試合序盤はむしろ町田がどのようなサッカーをしてくるのだろうかという興味を持ちながら観ていたが、気がつけば先制を許し、一度追いついたが再びあっさりと勝ち越され、そのまましたたかに撤収を許してしまった。「悔しい」とか「苛々する」といったような負の感情が不思議と湧いてこない、換言すれば「負けた気がしない」試合だった。先週のヴェルディとの試合のテンションとの落差が大きすぎたせいなのか、この敗戦をどう受け止めていいのか、ちょっとよく分からないというのが率直な感想だ。

町田は確かに強かった。強力な2トップにボールを集めるスタイルでリスクをなるべく排除し、ロングスローなども活用して相手の嫌がることを徹底的に貫く。ロングスローについては今日は東京がどうにか対処できていたが、試合を通して町田のシュート数が僅か4本だったのに対し、2失点を喫してしまったのだから、その効率の良さはさすがのひとこと。守備でもまずブロックを固めたうえでボールホルダーにも厳しく寄せていく。シンプルだが最も「負けにくい」サッカーだ。主にSNSの界隈ではその徹底ぶりに批判的な声も少なくないが、今日自分が現地で観た限りではそこまで嫌らしいとは感じなかった。ひとことでまとめれば「超合理的」ということなのだろうが、クラブが目標に掲げる5位以内を狙う上ではこれが最短ルートなのだろう。自分はこういうサッカーはあって良いと思うし、仮に批判をするとしても、それは町田に勝ってからにしたい。

東京は攻撃面においては、やれることをやっていた印象だ。平均身長を比べても町田の方が上で、空中戦では相手に分があるのは明らか。それであれば地上戦で相手を振り切るしかない。このコンセプトは的確だった。俵積田と遠藤の両サイドを起点に縦横に揺さぶりをかけ、僅かに空いた中央のスペースで勝負する。この形で前半は同点のPKに繋がるハンドを誘発することができたし、後半もあわやゴールという場面を作りだした。スタッツを見ても東京のシュート数は13本を数えており、きっちりフィニッシュまで持ち込むことはできていた。課題はその精度の部分だろう。町田が最後に守備を固めて撤収を図ったため、終盤にチャンスを作れず、終わり方が良く見えなかったのは確かだが、課題はそこよりもむしろ、町田が撤収を図る前に同点に追いつけなかったことにある。これは目指す形をひたすら反復して精度を上げていくしかない。ここはぶれずに続けてもらいたい。

攻撃の狙いはそれほど悪くなかったが、失点が勿体なさすぎた。1失点目はCKにおける守備の泣き所ともいえる大外を狙われた形だが、人数は揃っていたのだから、なんとかカバーしたかった(シュート自体は羅相浩を褒めるしかないが・・・)。また2失点目は、これに輪をかけて要らない失点だった。最終ラインを高く設定している以上、裏を狙われるのはある程度織り込んでいたはずだが、ドレシェヴィッチの裏へのボールに対し、望月を見ていたバングーナガンデが先にスプリントを緩めてしまったことで、望月にフリーで折り返しを許した。中で合わせた呉世勲も見事だったが、これは折り返しの時点で勝負あり。大卒ルーキーでJ1初スタメンだった望月は守備では俵積田の後手を踏んでいたが、攻撃面でのポテンシャルを甘く見ていたか。このゴールが決勝点となったことを考えると、悔やんでも悔やみきれない。

絶対に勝てない試合では決してなかったぶん、勿体ない勝点の落とし方をしてしまった東京は、これでリーグ戦の戦績は3勝3分3敗のイーブンペースに逆戻り。まだ9試合しか消化しておらず、順位表を気にするような段階ではないが、首位との勝点差を詰めるチャンスのあった重要な試合で敗れたことを重く受け止める必要があるだろう。とはいえ、今季のリーグ序盤戦は上位集団も連勝に次ぐ連勝といった感じではなく、勝点差はやや詰まっている。首位に立った町田とはまだ7ポイント差であり、残りの試合で埋められない差ではない。チームとしてやれていた部分を確実に伸ばしていき、軽い失点をなるべく減らしていきたい。次のリーグ戦は来週末、アウェイでアルビレックス新潟との対戦が控えている。連敗だけは避けたいところだ。5月はリーグ戦の日程が詰まっており、ちょっとしたブレーキが順位に大きく影響するだけに、この正念場をチームで乗り切ってもらいたい。

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