「有田屋千三郎」第9話(全23話)
シーン9 撮影スタジオ 控え室
撮影所の豪華な控え室で寛ぐ有田屋千三郎。
そこに入ってくる岩田と熊谷。
岩田、乱暴に有田屋に話しかける。
岩田
「おい、有田屋」
有田屋
「あ、監督、お弁当いただいてます。」
岩田
「お前、有田屋のくせに弁当食うな!!!」
有田屋
「なんですか急に!!」
岩田
「口答えすんな!!有田屋の分際で。とっととメイクしろ」
有田屋
「メイク?あ、はい。メイクさんってどこにいます」
岩田
「有田屋が人に化粧してもらうな!!!それでもお前歌舞伎役者か!!」
有田屋
「歌舞伎役者じゃないですよ!!何なんですかさっきから」
熊谷が2人の会話に入ってくる
熊谷
「横からすいません、私、助監督の熊谷です。実はですね...我々は歌舞伎役者の『有田千三郎』さんに声かけたつもりが間違ってあなたに声かけてしまったんです。」
有田屋
「え?そうなんですか?」
熊谷
「まあまあ、人間誰しも間違いはありますんで気にしないでください」
有田屋
「僕間違えてないですよ」
熊谷
「いや、あなたが有田屋千三郎として生まれたことが間違いなんです。」
岩田
「そうだぞ有田屋、反省しろ!!なんでお前、有田屋に生まれた!!」
有田屋
「どんな怒られ方なんですか。理不尽すぎますって。」
熊谷
「とにかく、起きてしまったことは仕方ないです。とりあえず謝ってください」
有田屋
「は?」
熊谷
「謝ってください。」
有田屋
「誰にどう謝るんですか?」
熊谷
「ここにいるスタッフ、そしてクライアントに世の中全ての生きとし生けるものに『有田屋ですみません』って謝ってください」
有田屋
「それはあなたの役目ですよ。」
岩田
「ごちゃごちゃ言わず謝れ!!有田屋のくせに!!」
有田屋
「なんなんですかさっきから!!
(でも、この仕事は最後のチャンス、やるしかないか、、、)」
岩田
「何ぶつぶつ言ってんだお前!いや、ちょっと待て、クライアントには謝るな。クライアント以外のこの世の全てに謝れ!!」
熊谷
「とっとと謝れ!」
有田屋
「・・・有田屋ですみません」
熊谷
「なんですか?」
有田屋
「有田屋ですみません」
熊谷
「聞こえません」
有田屋
「有田屋ですみません!!」
岩田
「有田屋で済んだら警察は入らねーんだよ!」
有田屋
「じゃ、どうしたらいいんですか!!」
第10話に続く